「燃やして」火災をコントロールする
自然発火が大規模火災につながるのは、植物という燃料が均一に広がっているからです。
つまり極論を言うと、植物がなければ大規模火災もなくなるのです。
とはいえ、オーストラリアからすべての植物をなくすような対処法は本末転倒だと言えるでしょう。
ここで、オーストラリア先住民の知恵が役立ちます。
彼らは何千年もの間、オーストラリアの土地を「モザイク状」に燃やしてきました。
すべての植物を燃やしてなくすのではなく、各地で「小規模な火事」を少しずつ発生させていくのです。
当然、燃やされた土地では、新しい植物が最初から育つことになります。
その結果、植物の種類や年齢が土地によって細かく分かれ、オーストラリアの広大な土地の植生が「モザイク状」になりました。
すべての植物がなくなるわけではないので、環境や生態系はある程度保たれます。
またどこかで火災が発生しても、モザイクの薄い部分で火の勢いが弱まるため対処しやすいのです。
実際、1953年の航空写真には、伝統的な土地管理のおかげで火災がモザイク状になって抑えられている様子が写されました。
しかし現代ではこれらの伝統や習慣が衰退しています。
そのため現在の火災規模は、オーストラリア先住民が管理していた時の何倍も大きなものとなっているのです。
フィッシャー氏によると、「広大な乾燥地帯では、以前のような管理が必要」とのこと。
もちろん、植生のモザイクを復活させるには、「正しい技術」や「管理者」を集めたり、「法律の問題」を解決したりしなければいけません。
現在、フィッシャー氏は既にこの課題に取り組んでおり、「燃やして」火災を制御する正しい方法を学んでいます。
参考文献
We are professional fire watchers, and we’re astounded by the scale of fires in remote Australia right now
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功