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ロリータというと、華やかなドレスを着てコスプレする人のことが頭に浮かぶかもしれない。しかし、中国ではコスプレという感覚はなく、着ている自分のことが好きだからという理由で着用し、街を平然と歩く若い女性が増えている。
近年は、ロリータファッションだけでなく、JK制服(日本の女子高校生の制服を模した服)や、中国の伝統民族衣装「漢服」といった、普段着と思えない服装が若者の間で流行し始めている。
これらの服は「三坑」と呼ばれ、直訳すると「三つの落とし穴」で、いざ好きになると、お金や時間も惜しまずになるという意味だ。強い個性を持つZ世代の若者にとって、これはコスプレではなく、自分らしさを表現し、自分を喜ばすためのファッションなのである。

(チャイトピ!より撮影)、『チャイトピ!』より引用)
サブカルチャーから大衆に知られるようになった経緯
「三坑」は以前、二次元愛好者など特定のサークル内で流行していだが、近年はサブカルチャーから幅広い人々にまで注目されるようになった。
「三坑」が流行した理由として、チャイトピは以下の3点だと考えている。
- 二次元文化と中国の国潮ブームの影響
- メイン顧客層であるZ世代は自分を喜ばし、他人の言うことあまり気にしない性質
- SNSの発達による、「三坑」のさらなる拡散
1990年代後半:
・日本アニメの「カードキャプターさくら」や「名探偵コナン」、映画の「下妻物語」などが中国に上陸し、ロリータファッションとJK制服が中国で登場
2010年以降:
・経済成長に伴い、中国において伝統カルチャーへの注目度が上がり、「国潮」ブームの影響を受けたことで、漢服も流行
・インターネットの急速な発展が「三坑」の流行を助長。weibo(中国版Twitter)やビリビリ、RED(小紅書)、さらに近年流行しているショート動画のdouyin(中国版Tik Tok)、kuaishouにより、「三坑」カルチャーがさらに拡散
・上海や広州のような包括的な大都市のみならず、江西や河南など、省の地方都市にもロリータのドレスやJKのミニスカートを着用して街を歩く女性を見かけるようにまで成長

2020年4月:
・JKミニスカート「温柔一刀(優しい斬撃)」がアリババのECモールタオバオ(淘宝)で販売からスタート30分で30万着を販売
・JK制服の売上記録を塗り変え、当時weiboで話題に急上昇
このような「三坑」ビジネスの成長を目の当たりにたことで、今や専門ブランドだけではなく、一般の国産ファッションブランドもJK制服のジャンルを販売するようになったのである。
2020年の市場規模は210億元
「三坑」は他のファッションジャンルより服の製造期間が長く(特に漢服、ロリータ衣装)、消費者規模も普通のファッションより少ないことから、業界全体でECでの展開がほとんどである。
調査会社の「头豹」によると、2020年中国の「三坑」アパレルの市場規模は210億元(約3,700億円)で、2025年には1,035億元(約1兆8,500億円)に拡大する見込みだ。
さらにアリババによると、タオバオでは過去1年間の「三坑」アパレルの売上は100億元(約1,780億円)を超え、「三坑」店舗数は2014年の193店から2020年には1,514店にまで増加している。
統計方法はさておき、この2社のデータから2020年における中国の「三坑」アパレル取引の半分をタオバオで達成したということになる。

EC店舗の多くはweiboなどSNSアカウントと連動させ、衣装のデザインをリリースし、消費者の意見を募集した後に最終版を製造する。また、コストと在庫過剰のリスクを引き下げるため、消費者に前金を支払ってもらうことが前提となっている。必要な分だけを生産し、基本的に返品サービスの提供は行っていない。