前期決算で193億円の赤字を計上したライザップグループ。事業拡大のためのM&Aから、既存事業のテコ入れへ戦略を転換した。その甲斐あって復活の兆しも見え始めているが、新型コロナウイルスは同社にどのような影響を与えているのだろうか。
M&Aを繰り返した結果、前期は193億円の赤字計上
ライザップグループの本業は、パーソナルトレーニングジム事業だ。あの特徴的な音楽に乗せて紹介されるビフォーアフターのCMもサービスの認知度拡大に一躍買い、収益を拡大。フィットネスブームに乗って、会員数はどんどん増えた。
しかし、ライザップグループは規模拡大のために、アパレルや出版社など他業種企業のM&Aを繰り返した結果、2019年3月期(2018年4月~2019年3月)の決算では、193億9,300万円の赤字を最終損益として計上。前期(2018年3月期)には90億7,500万円の利益を計上していただけに、株主のショックは大きかった。
その赤字を受け、ライザップグループは行き過ぎたM&A戦略を転換。新規のM&Aを控えるようになり、現在は本業のパーソナルトレーニングジム事業やゴルフ事業のほか、すでに展開している各部門の収益向上に取り組んでいる。
ライザップグループの本業である美容・ヘルスケア部門は45億円の減収
戦略を転換させたライザップグループの業績は、回復しているのだろうか。同社の2019年4~12月の業績を見ていこう。
本業では売上高が45億円減収
まず売上高から。この期間の売上高は、前年同期比2.0%減の1,567億9,500万円だった。この売上高は「美容・ヘルスケア」「ライフスタイル」「プラットフォーム」の各部門で構成されるが、本業のパーソナルトレーニングジム事業を含む美容・ヘルスケア部門は45億円の減収となった。
45億円の減収のうち、パーソナルトレーニングジム事業「RIZAP」とゴルフ事業「RIZAP GOLF」などを合わせた「RIZAP関連事業」の減収は10億円。報道などによれば、特にRIZAP GOLFが足を引っ張っているという。
回復傾向にあるものの5億円の純利益減
では、純利益はどうだろうか。前年同期は81億4,800万円の赤字だったが、今期はこれまで4億8,600万円の赤字に留めており、通期見通しでは5億円の黒字に着地させる計画だ。RIZAP関連事業は厳しい状況が続くが、第4四半期は他の事業で大幅な増収を見込む。
新型コロナウイルスの影響は大きい
最新決算の数字を見ると、ライザップグループは確実に立ち直りつつあることがわかる。しかし、そのタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大問題が起きた。新型コロナウイルスは、ライザップグループの業績にどのようなダメージ与えているのだろうか。
具体的な影響はまだ明らかになっていないが、パーソナルトレーニングジム事業は「完全個室」を特徴にしていることもあり、不特定多数との濃厚接触に対する懸念は、一般的なスポーツジムよりは低いと考えられる。既存客への影響は、他のスポーツジムよりは小さいかもしれない。
しかし外出自粛が要請される中、他のスポーツジムと同様に、新規顧客数が減少する懸念は大きい。緊急事態宣言が発令されたことを受けて、2020年4月9日(木)から2020年5月6日(水)まで、7都府県で全店舗休業を発表した。この休業が、業績に大きな打撃を与えることは間違いない。
各セグメントにおいて結果を出す必要がある
事業を多角化させてきたRIZAPグループ。今は、各事業のセグメントをブラッシュアップしている状況だ。
ライザップの本業であり、トレーニングジム事業を擁する「美容・ヘルスケア」部門では、これまでのメインターゲットであった20~40代から顧客層を拡大し、ミドル・シニア世代を対象とした、ダイエットだけでない健康やヘルスケアに重きを置いたサービスを展開する予定だ。
インテリアやアパレルを企画・販売をしている「ライフスタイル」部門では、アパレルブランドの「アンティローザ」を中心にEC化を進めることで、約67億円の増収となった。今後もEC化や新商品の投入を進めていく。
グループ全体の開発・マーケティングなどの裏側を担う「プラットフォーム」部門では、不採算店の閉鎖や、LIVE型の高収益が見込める店舗の出店を加速させ、大幅な増益を達成した。
新型コロナウイルスの危機を乗り越え、各セグメントにおいて上記のように結果にコミットできれば、グループ全体のV字回復も見えてくるだろう。同社の今後の事業展開に、引き続き注目していきたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
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