iDeCoとNISAはどちらも節税しながら資産形成ができる非課税制度だ。公務員は給与や待遇面が比較的恵まれていると言われているが、近年は退職金が段階的に引き下げられるなど風当たりは厳しい。公務員が非課税制度を使って老後に備えるにはiDeCoとNISAのどっちが良いか。

公務員にとってのiDeCo(イデコ)

iDeCoは公務員にとって使いやすい制度なのだろうか。iDeCoのメリットについて考察する。

iDeCo(イデコ)は非課税で資産形成ができる私的年金制度

iDeCoとは個人型確定拠出年金の名称で、2016年から施行されている。iDeCoの前身は「401k」と呼ばれる私的年金制度だ。iDeCoの掛金は所得税・住民税から全額控除され、運用益は非課税になる。iDeCoを利用して自分自身で老後資金の形成をすれば、税金を安くしてもらえるというわけだ。

iDeCoと公的年金との大きな違いは自分で掛金を拠出したり、金融商品を選んだりして運用する点にある。iDeCoの運用がうまくいけば、掛金に運用益を上乗せした老齢給付金が60歳から受け取れる。iDeCoの老齢給付金は公的年金や退職金と同じような税制上の優遇が適用される。ただしiDeCoは元本保証される制度ではない。

公務員はiDeCo(イデコ)の加入率が高い

iDeCoはもともと自営業や個人事業主、年金制度が充実していない企業に勤める会社員のための制度だったが、2017年の制度改正により専業主婦や公務員も対象に加えられた。2020年1月時点では、32万4,254人の公務員がiDeCoに加入している。前年同期に比べ36%増加しており、加入対象者16人のうち1人は加入者だ。

公務員のiDeCoの加入数は、ほかのどの被保険者種別よりも増え方が顕著だ。2016年12月時点では0%だったiDeCoの加入率は2019年6月時点で6.0%に達している。一方で自営業が1.0%、企業年金のない会社員が3.0%、企業年金のある会社員が0.8%、専業主婦などが0.5%程度だ。※大和総研による「個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況」(2019年6月時点)

iDeCoの加入率が高い理由として、公務員は制度に対する周知や入りやすさが整備されているためと考えられる。

公務員のiDeCo(イデコ)の拠出限度額は月額1万2,000円

公務員にとってiDeCoは節税になるのだから、できるだけたくさんの掛金を拠出したいところだろう。しかしiDeCoの拠出可能額は公的年金の被保険者の種類ごとに上限が設けられている。公務員や企業年金が充実している会社員は相対的に低めだ。

<職業別の拠出限度額>
・第1号被保険者(自営業・学生など)
→月額6万8,000円(年額81万6,000円)

・第2号被保険者(企業型DCのない会社員など)
・第3号被保険者(専業主婦など)
→月額2万3,000円(年額27万6,000円)

・第2号被保険者(企業型確定拠出年金のある会社員など)
→月額2万円(年額24万円)

・第2号被保険者(企業型確定拠出と確定給付年金のある会社員など)
・第2号被保険者(企業型確定給付年金のある会社員など)
・第2号被保険者(公務員など)
→月額1万2,000円(年額14万4,000円)

公務員がiDeCo(イデコ)に加入するメリットとデメリット

公務員がiDeCoを利用するにあたり、税制上のメリットとコストにおけるデメリットも把握しておきたい。

公務員がiDeCo(イデコ)に加入するメリットは節税しながら資産形成できること

公務員も自助努力の時代なので、iDeCoは節税しながら資産形成できるため加入するメリットは高い。iDeCoの3大特典である掛金の全額所得税控除、運用益非課税、退職所得控除・公的年金など控除は、公務員でも変わらず受けられる。

iDeCoの掛金が月額1万2000円まででは効果は薄いかといえば、そうとも言えない。年収500万円の30歳の公務員が、月額1万2000円の掛金で60歳までの30年間拠出した場合を想定してシミュレーションしてみる。(※2020年4月現在)

  • 拠出時のメリット:年間2万9,100円、30年間で86万9,400円の節税
  • 運用時のメリット:運用利回り1%なら30年間で14万3,075円の節税

ほかにも一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金など控除」が適用される。そのため通常の積立貯蓄を受け取る場合よりも少ない所得税で済む。iDeCoには拠出限度額の低い公務員でも、十分なメリットはありそうだ。

公務員がiDeCo(イデコ)に加入するデメリットは拠出限度額が低いこと

iDeCoのデメリットは、公務員の場合は拠出限度額が低いことだろう。月額1万2,000円でも十分な節税効果があることは述べたが、掛金が少ないのに手数料は同じである。

iDeCoの手数料は初回手続きに国民年金基金連合会へ支払う手数料として2,829円がかかるほか、運用期間中には毎月171円~629円(口座を開設した金融機関による)の費用が発生する。

コストを上回るリターンが得られないと元本割れになるが、元手が少ない公務員は利益を出すのもやや不利な条件下にある。結果、相対的にほかの被保険者よりもコストが高くなることもあるのだ。

公務員にとってのNISA(ニーサ)

公務員がNISAを利用する場合について解説しよう。

NISA(ニーサ)とは運用益が非課税になる税制優遇制度

NISAとは、個人投資家が投資をおこなった際に受けられる税制優遇制度だ。NISAは大きく分けて2種類ある。毎年120万円まで株式や投資信託の運用ができる「一般NISA」と、毎年40万円まで積立方式で投資信託を買付できる「つみたてNISA(積立NISA)」だ。

一般NISAもつみたてNISAも運用益は非課税になる。つみたてNISAは毎月拠出して長期に運用する形態がiDeCoと似ているため、つみたてNISAを例に公務員の利用方法やメリット・デメリットをみていきたい。

つみたてNISA(積立NISA)は年間40万円まで、最長20年間、非課税で投資ができる

つみたてNISAは、先行して始まった一般NISAとは毛色が異なる。つみたてNISAは一般NISAよりも商品の幅が狭いが、安定性の高い商品がそろっている。対象商品は個人投資家の長期・積立・分散投資を支援するという明確な目的に沿った156本だ。

つみたてNISAの種類は投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限られる。多くはインデックス型の投資信託だ。インデックス型の投資信託はいずれも手数料が一定以下、分配頻度が低い、信託契約期間が長いなどの条件を満たす。

つみたてNISAの年間非課税投資枠は40万円までなので一般NISAに比べて少ないが、非課税期間が最長20年間もあるためトータルの非課税投資枠は、つみたてNISAの方が大きい。2024年からはつみたてNISAと一般NISAの合体版である新NISAがスタートする予定もある。

公務員がNISA(ニーサ)を使うメリット・デメリット

つみたてNISAには公務員ならではのメリットがある。デメリットは公務員に限らず共通だ。

公務員がつみたてNISA(積立NISA)を使うメリットは職場が情報提供してくれるところ

つみたてNISAは日本に住む20歳以上が対象なので、iDeCoのように加入資格や投資枠が職業によって変わることはない。つみたてNISAの運用益が非課税になるというメリットは、公務員か自営業かなどではなく、運用による利益が大きいほど最大化される。

公務員が利用するメリットは、つみたてNISAという制度にアクセスしやすい環境が整っている点だ。政府はiDeCoやつみたてNISAのような非課税制度の普及を推進しており、厚生労働省が公務員向けに「職場iDeCo・つみたてNISA」を導入しているからだ。その概要は以下の通りである。

(1)職場を通じた、iDeCo・つみたてNISAの制度概要や加入手続きなどに関する情報提供
(2)セミナーなどの企画・立案や開催案内を周知など、投資教育の機会の提供

つみたてNISAのような複雑な制度について職場で情報をプッシュしてくれるのは大きい。公務員はその点で恵まれている環境だと言えるだろう。

公務員がつみたてNISA(積立NISA)を使うデメリット

公務員ならではのつみたてNISAのデメリットは見当たらない。つみたてNISAのデメリットである「元本割れの可能性がある」、「損益通算できない」、「投資枠が再利用できない」などの特徴は、公務員であるかどうかは無関係である。もちろんつみたてNISAを利用するにあたっては、これらのデメリットに注意しなくてはならない。

公務員はiDeCo(イデコ)とNISA(ニーサ)どっちを利用すべきか

iDeCoとNISAは全く別の制度(前者は厚生労働省、後者は金融庁)なので、併用が可能だ。したがって資金に余裕があるのであればiDeCoもNISAも利用するのが良いだろう。最大限に活用しても掛金の上限は、iDeCoは月1万2,000円、つみたてNISAは月3万円程度になっている。

財布の事情でiDeCoかNISAのどちらかに絞りたい場合は、iDeCoを優先するほうが良いだろう。iDeCoでは掛金が所得税から控除されるのは確実な節税になるからだ。つみたてNISAの運用益非課税は魅力的だが、運用がうまくいった場合にしか恩恵がない。

ただしiDeCoは60歳まで引き出すことができない点に注意が必要だ。資金の流動性という点においてはつみたてNISAのほうが自由度は高い。またiDeCoの対象商品は1つの金融機関内では35本以内に絞られているが、つみたてNISAのように安全性の高い商品とは限らない。これらの点を踏まえて、自身にあった制度を選択するようにしたい。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)
 

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