ヘッジファンドの資産規模およびファンド数が拡大するにつれ、近年は分野も多様化している。

買いつけや報酬の分配をリップル・XRPで行う世界初の仮想通貨建てヘッジファンド、鉱物電池など電気自動車(EV)関連銘柄に投資する「エレクトリック・メタルズ・ファンド」、市場のパニックを狙って短期金融市場資産から利益を生みだす「バリー・アクティブ・バリュー」など、万人向けとはいいがたいものの、興味深い投資分野ではある。

電気自動車の鉱物電池資源などに投資――エレクトリック・メタルズ・ファンド

原油関連銘柄への投資を得意とするロンドンのウェストベック・キャピタル・マネージメントが、電気自動車(EV)関連の投資に重点を置いた「エレクトリック・メタルズ・ファンド」を立ちあげる。

投資家プレゼンテーションの草案を入手したロイターの報道(2018年1月18日付)によると、カナダやオーストラリアなど金属資源に恵まれた地域の銘柄30~50種類で構成される予定だ。次世代自動車そのものに投資するのではなく、鉱物電池などの関連銘柄が対象だ。年内に1億ドルの調達を目標にしており、信託報酬15%、運用報酬15%を予定している。

バンク・オブ・アメリカの予想では、「2025年までにEVが世界の自動車の12%を占める」。世界規模のEVあるいは自動運転車(AV)への移行にともない、この分野への投資家の関心は増している。

例えば電池の原料となるコバルトの需要が急激に増し、価格はすでに高騰している。2030年までに需要がさらに30倍以上に膨れあがると予想されていることから(ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス・データ )、供給をめぐり競走が激化しそうだ。

しかし安定した、あるいは高リターンが狙える分野になるかというと若干の疑問は残るようだ。例えばバッテリ―の原料であるリチウムは、少なくとも現段階では貴重なものではない。次世代自動車が市場に出回れば採掘が盛んになり、最終的に過剰供給を引き起こす可能性も考えられる。

またテクノロジーが進化し続ける今、製造メーカーがこれらの原料を必要としないソリューションを見つける可能性もある。

コバルトの最大の供給先グレンコアの株価は昨年大幅に値上がりしたが、世界最大の鉱業企業BHPビリトンは原油や銅の採掘量を増やし、リチウムやコバルトといったバッテリー用の需要しかない鉱物質の採掘には手をださない意向を示している。 2016年1月には77ドルまで落ち込んでいたグレンコアの株価は、2018年1月17日現在407ドルまで値を上げている(ブルームバーグデータ )。

著名実業家による新プロジェクト――リップル(XRP)建てヘッジファンド

世界初の仮想通貨建てヘッジファンドを立ちげるのは、テッククランチの設立者としても知られる著名実業家マイケル・アリントン氏だ。昨年11月、ニューヨークでに開催されたコインデスク主催のカンファレンスで発表された。

アリントン氏がフォーチュン誌に明かしたところでは 、このファンドは仮想通貨関連スタートアップの株式に直接投資するのではなく、主に仮想通貨やデジタルトークンの販売を行うICOなどでポートフォリオを組み、買いつけや報酬の分配をリップルのXRPで行う(フォーチュン2017年11月28日付記事)。リップルを選んだ理由は、同社の構築した金融インフラに好感を抱いたからといい、すでに投資目標金額の5割以上を調達しているそうだ。

アリントン氏いわく、多数の投資家が仮想通貨の高騰から巨額の利益を得、さらにその手を広げようとしている。自身も純財産の1割以上を仮想通貨に投資しており、現在の市場の熱狂が、“仮想通貨の幕開け”と信じているひとりだと述べた。

そうはいうものの、アリントン氏も指摘しているように「仮想通貨バブルが弾ける」と主張する一部の投資家の目には、このプロジェクトは信じられないものと映るだろう。好き嫌いがはっきり分かれるファンドであることは疑う余地がない。

ちなみにリップル自体は、このファンドのスポンサーでもパートナーでもない。しかしファンドによってXRPの価格が高騰したり、リップルの知名度があがったりする可能性も十分に期待できるため、リップルにポジティブな恩恵をもたらすのではないだろうか。

市場のパニックから利益を狙う――バリー・アクティブ・バリュー 

ロンドンを拠点とするH2Oアセットマネージメントの新たなファンド「バリー・アクティブ・バリュー(Barry Active Value)」は、フラッシュクラッシュ(瞬時の急落)や売りの殺到から市場がパニックにおちいった際、短期金融市場資産に投資することで利益を生むことを目的としている。

規制によって銀行のバランスシートが大幅に縮小されている今、システミック・リスク(特定の金融機関が破産などで決済不可能におちいった場合、ほかの金融機関にもその影響がおよぶこと)は軽減され、前金融危機のような世界的な混乱が市場を再び揺るがす可能性が極めて低いように思える。

しかしファンドマネージャーいわく、流動性の低下、特に市場活動の貸借対照表の急激な減少にともなう銀行の市場流動性の低下は、市場ショックの頻度が高く、振幅が高いことを示している。

具体的には年間10~20の固定利付証券、通貨、エクイティ、短期オプション取引などを行う予定だ。

文・アレン・琴子 (英国在住フリーランスライター)
 

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