GUCCIの親会社であるフランスのケリング社も、新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージが深刻な企業の1つだ。ケリング社はすでに感染拡大が自社に与えるダメージを試算しており、1~3月の売上高の減少は免れない状況になっているという。

ケリングの1~3月売上高、13~15%減に

ケリング社は、3月20日に「Initial Estimate of COVID-19 Epidemic Impact」というプレスリリースを報道機関向けに発表している。新型コロナウイルスが自社の業績に与える影響について、最初の試算を共有したものだ。

これによると、今年1~3月の売上高は新型コロナウイルスの影響で、前年同期比13~15%程度の減少となる見込みだ。同社は1~3月の業績を4月21日に発表する予定で、実際の減収額がどのくらいになったのか、この日は多くの株主や業界関係者が注目することになるだろう。

4~6月の売上高にも甚大な影響を与えることになるだろう。ケリング社はGUCCIのほか、アパレルではボッテガ・ヴェネタやバレンシアガ、サンローラン、高級宝飾品・時計類ではブシュロンやジラール・ペルゴなどを抱えている。世界各国における外出禁止令や自粛の拡大によって、これらの店舗への客足が減ることは確実だ。

ケリング社の保有ブランドに限ったことではないが、高級アパレル業界や高級宝飾品業界はEC(電子商取引)対応があまり進んでいない。店舗を訪れること自体が価値であることがその理由の1つだが、店舗への客足が減ることは売上へのダメージに直結する。

欧米での感染拡大が大きなダメージ――イタリアではGUCCIの工場が閉鎖

ケリング社の売上高が落ち込む要因を、もう少し深掘りしてみよう。

同社が抱える高級アパレル・ブランド品の店舗拡大は東南アジアの新興国で顕著なイメージがあるが、欧米が主戦場であることに変わりはない。2019年12月通期の決算は、欧米が約9,900億円、日本を除くアジア太平洋地域は約6,500億円。その欧米で新型コロナウイルスの感染が広がっていることが、同社の売上高の大きな落ち込みを招いていると言える。

報道によると、このところ北米や西欧での店舗の売上高が急速に落ち込んでいるという。巨大市場・中国における売上が少しずつ回復していることが救いだが、欧米での感染縮小が依然として見えない中、予断を許さない状況は続く。

2020年4月8日時点で新型コロナウイルスによる死者数が最多のイタリアでは、これまでにGUCCIが製造工場の一時閉鎖を発表するなどしており、商品供給にも影響が出始めている。

サンローラン、バレンシアガがマスクを製造? 感染拡大防止に向けた取り組みも

新型コロナウイルスの感染が拡大する中で注目されているのが、高級ブランドによる感染症拡大防止に向けた取り組みだ。

GUCCIは医療用オーバーオール供給の要請を受けるほか、寄付の計画を明らかにし、サンローランとバレンシアガもマスク製造の準備を開始した。感染拡大を防止するために最大限努めることを発表している。

新型コロナウイルス終息の見通しが立たず、ケリング社だけでなく他の企業にとっても厳しい状況が続く。しかし、認知度が高い高級ブランドによる動きはマーケット全体を牽引し、民間企業が政府や医療機関に協力するムードを高めていることは、特筆すべきだろう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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