現在、原油価格が急落する「逆オイルショック」が起きており、一部の企業の業績に深刻なダメージを与えている。たとえば、総合商社の三井物産は原油価格の下落などによる影響で、500億円以上の損失が出る可能性があるとしている。

なぜ今「逆オイルショック」が起きているのか――コロナとOPECプラス

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界的に石油の需要が落ち込んでいる。人の動きも工場での製造なども鈍化しているためだ。

この状況の中、石油輸出国機構(OPEC)プラスで減産合意に進展が見られなかったことなどもあり、現在石油価格は大幅に下落している。ガソリンスタンドでガソリンの価格を見て、それを実感している人も少なくないだろう。

自動車を運転する人や原油から製品を製造している企業は、石油価格の下落を歓迎したくなるかもしれない。しかし、「逆オイルショック」は一部の企業に大きなダメージを与え、経済を混乱させている。石油業界や各国政府はこの状況に歯止めをかけるため、何らかの対策を講じる必要がある。

「逆オイルショック」でダメージを受けている企業は?

石油価格の下落によって、ダメージを受けた企業を見てみよう。
 

企業 損失を受けた主な事業 金額
三井物産 ガスオイル事業・油田事業 500億~700億円の損失
丸紅 石油ガス開発事業など 1,900億円の赤字
JXTGホールディングス エネルギー事業 3,000億円の赤字

三井物産――500億~700億円程度の損失発生

前述のとおり、三井物産は大きなダメージを受けている。同社は3月27日、2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の業績予想の下方修正を発表した。

原油価格の急落で、石油・ガス開発事業の固定資産において減損損失を計上する見通しで、500億~700億円程度の損失が発生する可能性があるという。同社はアメリカでEagle Fordシェールガス・オイル事業、イタリアでTempa Rossa油田事業を展開しており、石油価格の変動が業績を大きく左右する。

丸紅――巨額の減損損失で1,900億円の赤字に転落

三井物産だけでなく、丸紅も業績予想の下方修正を発表。原油価格の下落によって事業環境が悪化し、保有資産の見直しによって巨額の減損損失を計上する見通しとなった。

前回発表した2020年3月期の最終損益2,000億円の黒字から、1,900億円の赤字へと大幅に下方修正している。

JXTGホールディングス――黒字から一転、3,000億円の赤字に

石油元売り大手のJXTGホールディングスも3月26日、2020年3月期の業績予想の修正を発表している。

同社が2019年11月に発表した業績予想では、2020年3月期は1,550億円の黒字を見込んでいた。しかし、その予想は一転し、最終損益は3,000億円の赤字になる見通しだという。前期(2019年3月期)の黒字額約3,000億円が、ほとんどなくなることになる。

同社は下方修正の理由として、ドバイの原油価格が今年1月から3月にかけて1バレル64ドルから30ドル台まで下落したことに触れた上で、エネルギー事業における在庫評価で2,500億円の損失が発生する見込みであるとしている。
 

コロナだけでなく、サウジアラビアとロシアの関係悪化で状況が複雑に

石油価格が、今後どのように推移していくかは不透明だ。OPECプラスで主導的な役割を果たすサウジアラビアとロシアの関係が悪化していることも、状況をさらに複雑にしている。

3月決算の日本の大手企業の決算発表シーズンは4~5月半ばだ。すでに業績の下方修正を発表している企業以外でも、原油価格の下落によって業績が悪化した企業が出てくるだろう。

このまま原油価格の下落が続けば、倒産の危機に瀕する上場企業が出てくるかもしれない。引き続きOPECプラスの動向などが注目されることになるだろう。
 

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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