大手総合商社の丸紅が今期の最終損益を下方修正し、2,000億円の黒字から1,900億円の赤字に転落する見通しと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大が原油などの資源価格の下落を招き、石油開発事業などの資産価値を見直さざるを得なくなったことなどが理由だ。

最終損益を3,900億円も下方修正

3月25日、丸紅の柿木真澄社長は記者団の前で、最終損益予想の下方修正について次のように語った。

「現在のこういう状況は、これまでの金融危機とかですね、地政学的危機と異なるもので、まさに人類の動きを全世界的に止めるものであって、その影響はですね、多方面、多岐にわたっているというふうに理解しています」

丸紅に限ったことではないが、新型コロナウイルスの感染拡大という大問題が業績に深刻な影響を及ぼすとは、数ヵ月前は経営陣の誰しも予想していなかったはずだ。丸紅の利益は過去4期、右肩上がりに伸びているが、今期はそれを阻まれることになりそうだ。

気になるのが、なぜここまで最終損益が大幅に減少するのかだ。2,000億円の黒字から、1,900億円の赤字への転落。減少幅は3,900億円と、とてつもなく大きな金額だ。丸紅はその理由を発表しているので、詳しく見てみよう。

石油・ガス開発事業、米国穀物事業が2,000億円以上の損失

丸紅は最終損益の下方修正の理由として、原油価格の急激な下落などによる事業環境の悪化を踏まえ、減損損失などが発生することになったことなどを挙げている。

具体的には、一過性要因による修正金額としてマイナス3,700億円、実態純利益として200億円のマイナスを計上している。それぞれの内訳は、以下のとおりだ。
 

一過性要因による修正金額
石油・
ガス開発事業
米国メキシコ湾に
おける減損損失
△800億円
英領北海における
減損損失および
繰延税金資産取り崩し
△650億円
米国穀物事業 Gavilon穀物事業に
おける減損損失
△800億円
米国西海岸の穀物輸出事業に
おける減損損失
△200億円
チリ銅事業における減損損失 △600億円
海外電力およびインフラ関連
事業における減損損失
△400億円
その他 △250億円
実態純利益の修正金額
エネルギー、化学品、
アグリ事業等
△200億円
合計 △3,900億円

マイナス幅が特に大きいのが「石油・ガス開発事業」で、合計1,450億円のマイナスを計上している。

丸紅の連結子会社Marubeni Oil & Gas(USA)はアメリカのメキシコ湾で石油・ガスの開発事業に取り組んでいるが、今回の原油価格の下落によって原油価格予想を見直すに至った。その結果、このメキシコ湾での開発事業だけで800億円の減損損失が発生する見込みだという。

「米国穀物事業」も合計で1,000億円のマイナスを計上しており、厳しい状況である。中でもGavilon穀物事業における減損損失は、800億円規模となる見通しだ。

丸紅にとって穀物は主力事業の1つで、子会社Gavilon Agriculture Investmentを通じてアメリカで事業を展開している。新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の不透明感などから事業計画を見直した結果、約800億円の減損損失が発生する見込みとなった。

最終赤字となれば18年ぶり

丸紅が最終赤字となるとすれば、18年ぶりだ。また1,900億円という赤字がそのまま最終損失となれば、赤字額としては過去最大となる。新型コロナウイルスの終息が見えるまでは、丸紅にとっては特に厳しい状況が続くだろう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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