「ふらんす亭」や「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」の元運営会社であった株式会社MFSが、破産手続き開始の決定を受けた。一時は売上高225億円を上げるなど事業拡大に成功したが、約4億5,000万円の負債を抱えて破産した。業績の悪化はなぜ起きたのか。
全盛期は200店舗以上も 株式会社MFSが破産
民間調査会社の東京商工リサーチによると、3月16日に株式会社MFSが東京地方裁判所から破産開始の決定を受けたという。
MFSは、ファミリーレストラン「ふらんす亭」やステーキ店「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」のほか、男女とマッチングする居酒屋チェーン「相席屋」やイタリア料理店「ヴォーノ・イタリア」を展開していた会社だ。
同社の元社長である井戸実氏は、「ロードサイドのハイエナ」と呼ばれていたことで知られる。その理由は、ファミリーレストランが撤退した国道や幹線道路沿の居抜き物件に出店を繰り返したからだ。
フランチャイズ店舗を増やしていき、一時は200店舗以上を展開。注目されるようになり、井戸氏もメディアに出演するなど、有名になった。しかし、その後は加盟企業の破産や離脱などによって店舗数が減り、経営が悪化していった。
業績悪化の理由は大手の参入 ピーク時から88%減!
なぜMFSの業績は悪化していったのだろうか。主な理由は、競合が増えたことだ。東京商工リサーチによると、大手飲食企業などが相次いでステーキ店の業態で店舗展開をしたことで競争が激化し、「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」の売上は落ち込んでいった。
その結果、同社の2016年3月期の売上高は26億円まで下落。2012年3月期の売上高が約225億円だったので、ピーク時から199億円も売上が落ちていることになる。減少率は実に88%だ。
その後、経営不振によって「ふらんす亭」や「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」の事業を譲渡してダウンサイジングを図ったが、その後もフランチャイズ店の破産などが続いたため、破産に至った。
同社の破産から学ぶこと――他店との差別化が継続のカギ
同社の破産から学ぶべきことは、何だろうか。飲食店に限らないが、「競争力がなければ事業を継続していくことは難しい」ということではないだろうか。
直営店だけでなく、フランチャイズ店舗を展開しているならなおさらだ。味が美味しいということはもちろん、他の要素でも差別化できていなければ、フランチャイズ店は持ちこたえられない。特に大手企業が参入してくるとビジネスモデルが真似され、豊富な資金力に押されて事業が圧迫されてしまう。
新型コロナウイルスの感染拡大で、飲食業界の中には窮地に陥っている企業も少なくないだろう。その中でMFS社の破産は、業界にとってはインパクトがあるニュースだった。このような時期にどのようにビジネスを守り、展開していくべきか。このことを改めて考えるきっかけにしたいところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
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