平日は帰宅が遅く子どもの寝顔しか見られなくても、教育に関心がある見父親なら「自己肯定感」という言葉を聞いたことがあるだろう。最近の子どもの教育に関する問題で、よく取り上げられるトピックの一つだ。この自己肯定感を高める「ほめ写」という新しい習慣が最近注目されている。
ほめ写とは何か?
「ほめ写」は、教育評論家の親野智可等(おやの・ちから)氏が提唱している、子どもの写真プリントを家の中に飾り、それを見ながらほめてあげる新しい子育て習慣のことだ。親野氏が23年間の教員生活で、写真を飾っている家庭の子どもは飾っていない家庭の子どもに比べて、自己肯定感が高いことに気づいたというのだ。
実際に3週間「ほめ写」を行った子どもは、「自分自身に満足している」と答える割合が「ほめ写」前の65%から90%と大きく増えた。親も自分の子どもの自己肯定感が高まったと感じ、約45%の子どもが手伝いをよくするようになったと答えている。
脳活動測定実験では、自分の写真を見た時に腹内側前頭前野が活性化することが自己肯定感に関連することが分かり、ほめ写を経験した人は経験していない人よりも、自分の写真を真剣に見ることが明らかになっている。これは自分の写真を肯定的に受け取る体験を積み重ねることで、自己肯定感が高まる可能性があることを意味している。
自己肯定感を高めるためには「ほめること」が効果的
自らの存在価値を肯定する「自己肯定感」は、子どもの成長過程で重要だと言われている。自己肯定感が高い子どもほど、自分に自信が持てるようになり、物事に取り組む姿勢が積極的になるからだ。
自己肯定感を高めるために効果的なことは、「ほめること」だ。人はほめられるたびに、「ほめられている自分」や「成功した自分」を知ることができる。その経験から自信がつき、何においても自分で判断して行動できるようになるのだ。
日本の親はほめるのが下手?
実際に子育てをしている親600人に対してアンケートを取ったところ、子どもの教育で関心があることの第2位は「自己肯定感」で、親の95%が「子どもに自己肯定感は重要だ」と認識している。だが6割の親は、子どもの自己肯定感を高めるために意識して行っていることはない。
また、日本の親の6割はほめることは叱ることよりも難しいと考えている(以上すべて、ほめ写プロジェクト「自己肯定感に関する意識調査」より)。 先進諸国の子どもと比較すると、日本の子どもは自己肯定感が低いと言われている(内閣府による「平成25年度我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」)のは、こうした「日本の親のほめ下手」なところが原因の一つなのかもしれない。
こどもをほめる「ほめ写」という新しい教育法
話題の「ほめ写」のやり方はいたって簡単で、次の3つのステップで行う。
(1) 子どもが運動会で頑張っているところや、家族で出掛けた先などで写真を撮影する。
(2) 撮った写真を子どもの目線に合わせて飾る。
(3) 飾った写真を見ながら、「頑張ったね」「よくやったね」などと声をかける。
重要なのは、子どもが努力して出した結果だけをほめるのではなく「この写真を見ているだけで幸せな気分になれるよ」など、親からの愛情が感じられる言葉をかけ、子どもの存在そのものを無条件にほめることなのだ。
「ほめ写」は、ほめ下手な日本の親の救世主になるか?
実験結果を見て分かるように、ほめ写をすることで得られるメリットは大きい。やり方も難しくはないので、忙しい中でもほんのひと手間で取り組むことは可能だ。今の時期は運動会や学芸会など行事も多く行われるので、ほめ写を始めるタイミングとして最適だろう。「子どもをどうほめていいのか分からない」「忙しくても子どもの教育に関わっていたい」と考えている父親にとって、試す価値がある習慣と言えるのではないだろうか。
文・吉永麻桔(フリーライター)
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