インバウンド消費が成長を下支えしてきた中古品ブランド流通大手のコメ兵が、厳しい局面を迎えている。新型コロナウイルス問題によって訪日客が激減、業績が悪化しており、同社は2020年3月期の純利益が前期比96%減(約7億円減)になるという見通しを発表した。
2020年3月期の純利益予想を約7億円も下方修正
コメ兵は、リサイクルショップを全国展開する企業としては日本最大級だ。日本を訪れる外国人旅行者の増加とともに業績を伸ばし、海外にも店舗を展開するまでに成長した。
今年2月、2020年3月期(2019年4月~2020年3月期)の業績予測を下方修正。前回予想では7億2,700万円の純利益を見込んでいたが、それを6億8,700万円も下方修正し、4,000万円としたのだ。前回予想からの減少率は94.5%。この予想通りにいけば、前期実績(10億9,000万円)から純利益が96.0%も減ることになる。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、訪日客数が一気に減ったことが主な要因だ。同社は、新型コロナウイルスなどの影響で2月と3月は買取・販売ともに予算未達を見込んでいる。
コロナだけでなく、ブランド・ファッション事業の業績悪化も一因
コメ兵の業績悪化は、新型コロナウイルスの影響だけで起こったわけではない。2020年3月期第3四半期(2019年4~12月)の連結業績でも、すでに業績の悪化が見られた。昨年4~12月は、まだ新型コロナウイルスが世界的な問題となっていなかった。
この第3四半期決算では、
- 売上高は前年同期比14.1%増の427億2,800万円
- 営業利益は同66.1%減の4億7,700万円
- 経常利益は同76.0%減の3億3,500万円
純利益は同82.1%減の1億6,300万円
と営業利益、経常利益ともに大幅に減少している。純利益は赤字寸前だ。
新型コロナウイルス問題の前にも関わらず、なぜここまで業績が落ち込んでしまったのだろうか。
決算資料では、主力のブランド・ファッション事業の営業利益が大幅に減少したことが説明された。その要因として、新宿店の移転に伴う地代家賃や、業容拡大による人件費の増加などが挙げられた。
この苦境乗り切るカギは「法人買取」
コメ兵の業績を俯瞰してみると、昨年までの業績悪化は自社事業の強化によるもので、その後の業績悪化は主に新型コロナウイルスの影響によるものであることがわかる。訪日客数は、3月以降もすぐには回復しないだろう。コメ兵にとっては、悪夢のような状況がまだ続くことになりそうだ。
では、コメ兵はどのようにこの苦境を乗り切ればいいのか。そのカギの1つが、「法人買取」の強化だ。同社はこれまで個人からの買取に注力してきたが、新型コロナウイルスの影響もあって、最近は不良在庫を抱えた法人などからの問い合わせが増えているという。
この時期に法人買取を強化することで商品ラインナップの拡充に努めれば、新型コロナウイルスの終息後の需要回復時に、大きな武器になる。もちろん買取の強化にはキャッシュが必要だが、「今さえ乗り切れば……」という気持ちがコメ兵の経営陣にはあるのではないだろうか。
日本人に対する販売施策をより強化する必要も
2019年はタイの首都バンコクにも出店を果たし、アジア圏でのコメ兵の知名度は着実に高まっている。ただしインバウンドに頼りすぎると、今回のように、その反動が怖い。今後は日本人に対する販売施策をより強化する必要もあるだろう。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
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