新型コロナウイルスの感染拡大が問題となっている中、百貨店の売上の落ち込みが深刻だ。2020年2月、大手百貨店5社はすべて減収となり、このまま状況が悪化すれば経営危機に陥りかねない。特に三越伊勢丹ホールディングスの業績悪化は深刻だ。各社の最新状況を見ていこう。

訪日客が前年比100万人以上減!百貨店業界に与えたインパクトとは

新型コロナウイルスが百貨店の売上高に深刻な影響を与えている理由は、主に2つある。訪日外国人旅行者の減少と、日本人客の消費マインドの低下だ。

観光庁が発表した2月の推計訪日客数は108万5,000人で、前年同月比58.3%減となった。特に中国からの旅行者は87.9%減となり、外国人観光客の購買力に頼っていた店舗は大きなダメージを受けた。欧米からの旅行者も減少しており、アメリカからの旅行者は20.8%減だった。

日本人客の消費マインドも外出自粛などによって冷え込み、2月の売上高の低下に拍車をかけた。日本百貨店協会が発表した2月の「全国百貨店売上高概況」によれば、2月の売上高は前年同月比12.2%減。入店客数も1割減で、日本人客が7.8%減、外国人客は68.3%減だった。

日本百貨店協会の分析では、暖冬の影響で冬物商材の売れ行きが悪かったことも売上低下の一因だという。春節の時期が、去年の2月から1月にずれたことも影響したようだ。そのため、新型コロナウイルスの影響がなかったとしても、前年同月比での売上減は免れなかったとの見方もある。

主要5社の2月の売上は軒並み減少 三越伊勢丹ホールディングスは34.8%もの減少

三越伊勢丹ホールディングスや高島屋など、百貨店主要5社の2月の売上高は軒並み落ち込んだ。

三越伊勢丹ホールディングスの各店の店頭売上は、伊勢丹新宿本店が10.4%減、三越日本橋本店が15.9%減で、三越銀座店に至っては36.2%減まで落ち込んでいる。3月の15日までの国内百貨店(既存店計)の累計売上高は、34.8%減と悲惨な状況だ。

高島屋も、大阪店の売上高が前年同月比25.6%減、新宿店が16.6%減となっており、外国人観光客が多いエリアの店舗の落ち込みが激しいことがわかる。ちなみに入店客数は、大阪店が16.0%減、新宿店が9.6%減。2月の免税売上は前年同月比69.9%減で、3月も15日までの累計で91.2%減となっている。

そのほか、大丸松坂屋百貨店や阪急阪神百貨店、松屋の各店舗でも売上高の減少が深刻だという。

営業時間の短縮や休業によるダメージも

3月、4月の売上高へのダメージも大きいだろう。感染拡大を防止するための時短営業のほか、都や県から出された外出自粛要請を受けて休業する店舗も多い。3月も、ほぼすべての店舗で売上高の前年割れは必至だ。

百貨店は、この苦境にどのように対処していくべきだろうか。結論から言えば、正解はまだ見えてこない。新型コロナウイルスでも売上を維持した食料品販売などに力を入れていくなどの方策は考えられるが、店舗全体の売上の落ち込みを考えれば焼け石に水だ。

ただし、新型コロナウイルスの終息を踏まえた取り組みに力を入れておく、という打ち手はある。消費者のデリバリー需要は、今回の問題を機に拡大することが予想される。それを見越して、この時期にグループ全体でEC事業の強化に取り組んでおくという手はある。

日本経済、そして世界経済に試練が訪れているのと同様に、百貨店業界でも厳しい状況が続く。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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