欧米では子どもに投資を教える親も珍しくはない。自分が投資で成功している親ほど、その傾向は強いようだ。米国の専門家が教える「子どもに投資を教えるコツ」を参考に「資産運用」という観点から、親にとっても子どもにとっても無理のない範囲で、少しずつお金の価値を学ばせていくのもよいかも知れない。
ミレニアル世代の3分の2が投資せず、理由は「知識とお金がない」
金融情報サイト「Bankrate.com」が2016年に 実施した調査では、年齢層が若くなるほど投資に消極的な結果がでている。ミレニアル世代(18~35歳)の3分の2が「なんの投資もしていない」と回答。最も若い層(18~25歳)で投資をしているのはわずか18%だ。
46%が「投資するお金がない」ことを投資をしてない理由として挙げているが、少ない所得からコツコツと貯蓄や投資をしている若者もいる。必要な知識に長けていれば、所得や年齢に関係なく、節約や貯蓄、投資に挑戦できるということだ。
また第2の理由は「投資についての知識がない」だが、これも子どもが小さい頃から自然に学びとれる環境を提供することで防止できるだろう。
「3歳に教え始めれば、経済的知識のある大人に育つ」? 米国証券業金融市場協会の会長
それでは子どもに投資の知識をつけさせる「適齢期」はあるのだろうか。「何歳でも早すぎることはない」と断言するのは、米国証券業金融市場協会(SIFMA)のメラニー・モータイマー会長だ。「3歳に教え始めれば、それだけ経済的知識のある大人に育つ」という。
読み書きや数字を教えるのと同じ感覚で普段の生活に自然に取り入れ、幼いうちから金融リテラシーや投資についての知識・経験に触れさせる。こうした積み重ねが「資産運用に自信のある大人」に育てるコツだ。
「昔ながらの貯金箱や金融リテラシーでお金の基礎の学習」 金融リテラシーサイトのビーチャム氏
具体的にどのようにして、子どもに投資の知識をつけさせるのか。子どもが興味をもって楽しみながら、しっかりと基礎を理解できる手法が必要だ。
子どもを対象とした金融リテラシーサイト「マネー・サヴィ・ジェネレーション」を立ち上げたスーザン・ビーチャム氏は、最も手軽な方法としては昔ながらの貯金箱の利用を提案している。自分の貯金箱にお金をだしいれすることで、「使う・貯める・寄付する・投資する」というお金の4大学習ができるという。
残念ながら日本での普及はあまり進んでいないようだが、欧米では子ども向けの金融リテラシーを学校教育カリキュラムに組みこんでいる国・地域も多く、インターネットやスマホから気軽に利用できる「マネー・サヴィ・ジェネレーション」のようなサービスも増えている。
簡潔な説明で、「投資と貯蓄の違いを理解させる」 デラウェア大のメシャロス助教授ら
お金の原則を学ばせた後は、いよいよ投資の勉強に移る。
デラウェア大学の経済教育・企業化精神センターのボニー・メシャロス助教授とカルロス・アサータ准教授は、「投資と貯蓄の違い」を子どもに理解させ、投資の利点とリスクを教えると同時に「全財産をひとつの投資対象につぎこまない」よう警告すべきだと述べている。
自らの体験談を聞かせる サマーセット・ウェルス・ストラテジーズ社長
ファイナンシャル・プラニング企業サマーセット・ウェルス・ストラテジーズのアンドリュー・マードック社長は、例えば「ETF やミューチュアルファンド、ショートポジションのとり方といった複雑なトピックは避けるべき」と、投資の説明を極力簡潔化することを勧めている。自らの投資経験談を話して聞かせるのも、よい勉強になるだろう。
子どもの性質に合った投資スタイルを見極める 資産運用アドバイス会社のスナイダー氏
また大人でもそれぞれ好みの投資スタイルが異なるように、子どもにも性質に基づいた投資スタイルがあるはずだ。エクセンシャル・ウェルス・アドバイザーズのシニア・ウェルス・アドバイザー、ジャレッド・スナイダー氏は、それを早期に見極め、スタイルに合ったアドバイスを行うのも親の役目だと指摘している。
子どもと一緒に有名企業株に投資してみる アメリカン・カレッジ・オブ・ファイナンシャル・サービシズCEO
アメリカン・カレッジ・オブ・ファイナンシャル・サービシズのロバート・ジョンソンCEOは、「子どもと一緒に各5銘柄選び、ポートフォリオを構成してみる」実践法を提案している。コカコーラやNIKEといった子どもがよく知っている大手企業株を選べば、子どもは投資でお金が増えたり減ったりする感覚を体験すると同時に、「有名企業への投資が常に最善の選択ではない」ということも学ぶだろう。
子どもが楽しみながら投資を学べるアプリやゲームを活用
しかし、ただ淡々と投資について教えこむだけでは、子どもの方が飽きてしまうかもしれない。子ども(対象年齢4~12歳)がバーチャル投資体験を楽しめる「ストックマーケットゲーム」のようなツールを利用するのも一案だ。
さらに進んだ例では、「ビジーキッド」も話題を呼んでいる。子どもが雑用(食器洗い、洗車、犬の散歩など)で稼いだお金の出入金を管理しながら、投資もできるアプリだ。
「食器棚の拭き掃除、1回1ドル」など両親が雑用ごとに価格を設定し、子どもの仕事ぶりに応じて支払う仕組みだ。子どもはビジーキッドの専用口座を通して、現金、ギフトカード、株式、プリペイカードのいずれかで報酬を受けとる。
株式投資を選んだ場合、親権者が未成年者のために作った委託会社の口座を開設し、ここからウォルトディズニー・カンパニーやApple、マクドナルド、Facebookといった大手企業の株に投資できる。すべての管理権限はあくまで親権者にあたえられている点も安心だ。利用料も一世帯年間14.95ドルとお手頃である。
しかし「投資をギャンブル感覚で楽しませないことが重要」との意見も根強い。子どもへの投資教育は「慎重に時間をかけて丁寧に」が原則のようだ。
文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)
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