在籍する会社以外の場所——自宅やコワーキングスペース、カフェなど——からインターネットや電話を利用して仕事を行う「リモートワーク」が、勤務形態の多様化とともに“新しい働き方”として注目を集めている。

リモートワーク環境が拡大している米国では2016年の時点で労働者1.5万人のうち、43%が「リモートワークの経験がある」と回答(ギャラップ2017年2月15日公表データ)。AmazonやDellといった大手もリモートワークを導入している。

まずは求職サイト「フレックスジョブス(Flex Jobs)」が自社データに基づいて選んだ、「リモートワークに前向きな米国企業ランキング」から、トップ10を見てみよう。4.9万社を超える企業の求人広告から、リモートワークの募集が多い企業を順位付けたもの。

リモートワークに前向きな企業トップ10

10位(昨年7位) ワーキング・ソリューションズ(在宅カスタマーサービス)
9位(16位) Dell(IT)
8位(75位) サイクス・エンタープライズジズ(顧客コンタクト管理ソリューション)
7位(3位) Amazon(IT)
6位(4位) TTEC(人材派遣)
5位(2位) Liveops(カスタマーサービス・ソリューション)
4位(初登場) Rev(リモートワーク・プラットフォーム)
3位(初登場) コンデュエント(IT)
2位(1位) Appen(IT)
1位(5位) VIPKID(英語学習サービス)

ワシントン州、フロリダ州など地方自治体もリモートワーク歓迎

トップ100にはITや教育、カスタマーサービスのほか、医療、旅行、金融セクターも数多くランクインしている。

ヒルトン(21位)、セールスフォース(27位)、ゼロックス(31位)、ウェルズ・ファーゴ(42位)、トヨタ(47位)、VMware(49位)、アメリカン・エクスプレス(76位)、JPモルガン・チェース(82位)などだ。

また州政府も入っており、ワシントン州(87位)やフロリダ州(99位)などといった地方自治体でもが、リモートワークを歓迎しているようで、このの動きが広がっている点はに驚きかもしれないかされる。

トップ10の順位は変動が見られ、昨年5位だったVIPKIDが首位に、3位だったAmazonは7位まで転落している。またサイクス・エンタープライジズが75位から8位に一気に跳躍した。

リモートワーク5つの利点——生産性向上、コスト削減、ストレス軽減

リモートワークとひとことにいっても、定義は様々だ。一般的には雇用形態に関係なく、「100%在宅勤務ができるものもあれば、一定の時間オフィスに出勤するものもある」と定義づけられているようだ(2018年1月9日付記事)。

「リモートワーク=時間の融通がききやすい」という働く側のメリットが取り上げられることが多いが、雇う側にも大きな恩恵をもたらすと報告されている。

ひとつ目は「生産性の向上」だ。ビジネス情報サイト「オール・ビジネス」によると、グローバル・ワークプレース・アナリティクス・サーベイでは、リモートワーカーの53%が「よく残業をする」と答えているのに対し、同じ回答をしたオフィス勤務者は28%という結果が報告されている。

次に「コスト削減」。オンライン・コラボレーションサービス企業PGIの調査(2013年3月20日公表)では、勤務形態を100%在宅に切り替えるだけで、従業員ひとりにつき年間1万ドルの経費削減が期待できるという。また従業員も年間4600ドルを節約することができることが、コネクトソリューションズの調査で分かっている。

通勤の壁がなくなるため、「世界中から優秀な人材を確保できる」という利点も重要だ。
職場という環境に身を置かないと連帯感が薄れるとの懸念もあるようだが、リモートワーク支援用の様々なソフトウェアやツールを利用し、従業員をひとつの統一されたシステム内でグループ化することにより、80%の回答者が「ITによる連帯感が強化されたと感じる」と回答している。

従業員にとっては時間やスケジュールに余裕ができ、通勤や職場でのストレスが軽減されるため、結婚生活を含めた人間関係の円滑化にも一役買っているようだ。

3つの欠点—セキュリティー対策、コミュニケーション、ライフワークバランス

リモートワークの最大の欠点は、「リアルなコミュニケーションがとりにくい」点だろうか。いくらチャットや動画が発達しても、面と向かって話をするのとでは、距離感や安心感に大きな差がでると感じる人も少なくない。

雇用者にとっては従業員の勤務姿勢や素行が管理しにくく、仕事のプロセスや結果を評価しずらいといった声も聞く。組織内でリモートワーカーの評価基準を設けることが必須となるだろう。

セキュリティー面も心配だ。オフィスではセキュリティー対策が万全でも、遠隔作業となると個人にセキュリティー対策の責任が課せられる。

従業員にとっては「仕事とプライベートの区別がつけにくい」ため、朝から晩まで延々と仕事を続けてしまう、逆に気合が入らずだらだらと過ごし生産性が落ちるといったケースも珍しくない。自己管理のできないタイプは、リモートワークには向かないだろう。

いずれにせよリモートワークは今後、高齢化社会対策のひとつとして、多くの国・地域で広がっていくのではないかと思われる。特に日本や米国、ドイツといった労働人口が減少傾向にある国では、業務自体の効率化・コスト削減・優秀な人材を確保するうえで、重要なカギとなりそうだ。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)
 

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