ソフトバンクグループが2月に発表した2020年3月期の第3四半期決算では、累計の連結業績における純利益が前年同期比で7割近くも落ち込んだ。「真っ赤っかの赤字決算」となった前四半期に続く、厳しい結果だ。ところが前四半期の決算発表とは違い、孫正義社長の表情からは自信が伺えた。
当期純利益は前年同期比69%減!それでも孫正義社長は強気
ソフトバンクグループの第3四半期までの累計業績(2019年4月1日~12月31日)は、
- 売上高 7兆898億円(前年同期比1.1%減)
- 営業利益 130億円の赤字(前年同期は1兆8,590億円の黒字)
当期純利益 4,766億円(同69.0%減)
となった。
孫社長は四半期ごとの決算発表で、毎回報道陣や投資家の前でスピーチをしている。WeWork問題などでソフトバンクグループの決算発表が厳しいものになることが予想されていただけに、投資家たちはどのような反省の弁が述べられるのかと注目していた。
しかし、孫社長は最初に「前回のちょうど3ヵ月前の決算発表では、『反省しております』という言葉を20回以上述べたのはないかと思います」と苦笑いしながら語った上で、大方の予想を裏切るワードをスクリーンに投影した。そのワードとは「潮目が変わった」だ。
一体どのように「潮目が変わった」のか
孫社長は、ニューヨークの連邦地裁がソフトバンクグループ子会社の「スプリント」(携帯通信4位)と「TモバイルUS」(携帯通信3位)の合併を認めたことを挙げた。合併することで、事業の効率化やコスト削減によって収益力が大幅に向上することが期待できる。株式市場では合併が認められたことが好感され、スプリントの株価は跳ね上がった。
さらに孫社長は、前四半期の決算で大きく赤字を出した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)事業の営業利益が回復してきたことを説明。SVFの投資対象となっている上場銘柄の累計利益が増え、決算発表直前の段階では、すでにソフトバンクグループの営業利益は黒字に転換していると主張した。
経営難に陥っている米シェアオフィス大手「WeWork」の問題については、WeWorkが180兆円規模の急成長市場で事業を展開していることや、新たな経営陣の下で5ヵ年成長計画を策定したことなどを強調。5ヵ年成長計画では、来年2022年にフリーキャッシュフローを黒字化、2023年には会員数100万人を目指すという。
最大のポイントは「株主価値」が向上したこと
「潮目が変わった」と認識している最大の理由は、上記に加え「株主価値」が向上したことと述べている。ソフトバンクグループは、「事業会社」ではなく「投資会社」である。孫社長は2019年9月末から2020年2月12日までで株主価値が20兆円から25兆円まで増えたことを説明し、「これが4ヵ月の我々の最も重要な成績の結果だと思うんですね」と語った。
さらに「ソフトバンクの実態としての経営の成績は、会計上の営業利益ではなくて、株主の価値がどのくらい増えたのか減ったのか」と説明した上で、「投資会社になったのだから、投資した後の結果の成績を問う。それ以外は売上とかは関係ない」と力強く語った。
孫社長が重視する「株主価値」の重要度は?
「株主価値」は、これまでのソフトバンクグループの決算発表で何度も触れられてきた。今後も孫社長は経営状況を対外的に示す指標として重視するだろう。売上や純利益とともに、株主価値が今後どう推移していくのか注目していきたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
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