2024年度に、20年ぶりに1万円札、5,000円札、1,000円札の紙幣(日本銀行券)が刷新される。新紙幣のデザインが話題になったが、中には各紙幣の原価について考えた人もいるのではないだろうか。紙幣と硬貨の原価は、いくらぐらいなのだろうか。

日本の紙幣・硬貨の種類

記念貨幣を除くと、日本には4種類の紙幣と6種類の硬貨がある。紙幣は日本銀行が発行しており、1万円札、5,000円札、2,000円札、1,000円札だ。硬貨は政府が発行しており、500円硬貨、100円硬貨、50円硬貨、10円硬貨、5円硬貨、1円硬貨がある。

紙幣や硬貨の原材料費は公開されている?

日本銀行や日本政府は、紙幣や硬貨の原価を公表していない。造幣局の公式ページで、その理由が説明されている。

「貨幣の製造原価(コスト)については、国民の貨幣に対する信任を維持するためや、貨幣の偽造を助長するおそれがあると考えられることから、公表していません」

ただし、原価を推測する方法はある。まずは硬貨から考えていこう。

硬貨はそれぞれいくらで造られている?

製造原価は、「原材料費」と「その他のコスト」を合計金額だ。硬貨については各硬貨の成分と成分比が公開されているため、そのデータを使えば「原材料費」を算出できる。

硬貨の「原材料費」を算出

各硬貨の成分と成分比、各成分の重さは以下のとおりだ。各成分の重さは、各硬貨の1枚の重さと成分比から算出した。

<各硬貨の成分と成分比と成分ごとの重さ>

硬貨 1枚の重さ 成分 成分比 各成分の重さ
1円玉 1.00g アルミニウム 100% 1.00g
5円硬貨 3.75g 65% 2.44g
亜鉛 35% 1.31g
10円硬貨 4.50g 95% 4.27g
亜鉛 3.5% 0.16g
すず 1.5% 0.07g
50円硬貨 4.00g 75% 3.00g
ニッケル 25% 1.00g
100円硬貨 4.80g 75% 3.60g
ニッケル 25% 1.20g
500円硬貨 7.00g 72% 5.04g
亜鉛 20% 1.40g
ニッケル 8% 0.56g
出典:造幣局の公式サイトを参考に算出

各貨幣の成分ごとの重さがわかれば、それぞれの成分の時価をもとに原材料費を算出できる。

6種類の硬貨で使われている原材料は、アルミニウムと銅、亜鉛、すず、ニッケルの5種類。2021年6月の1g当たりの平均価格は、それぞれ以下のとおりだ。

<各原材料の1g当たりの平均価格>

原材料 1g当たりの平均価格
アルミニウム 約0.269円
約1.060円
亜鉛 約0.325円
すず 約3.578円
ニッケル 約1.979円

これらを最初の表に当てはめると、原材料費は以下のようになる。各硬貨の原材料費は、1円硬貨が約0.3円、5円硬貨が約3.0円、10円硬貨が約4.8円、50円硬貨が約5.2円、100円硬貨が約6.2円、500円硬貨が約6.9円だ。

<各成分の原材料費(2021年6月の平均値)>

硬貨 成分 各成分の原材料費 各硬貨の原材料費
1円玉 アルミニウム 約0.269円 約0.3円
5円硬貨 約2.586円 約3.0円
亜鉛 約0.426円
10円硬貨 約4.526円 約4.8円
亜鉛 約0.052円
すず 約0.250円
50円硬貨 約3.180円 約5.2円
ニッケル 約1.979円
100円硬貨 約3.816円 約6.2円
ニッケル 約2.375円
500円硬貨 約5.342円 約6.9円
亜鉛 約0.455円
ニッケル 約1.108円

硬貨の「原価」を推計

各硬貨の原材料費はわかったが、各硬貨を製造する際は他にもコストがかかる。造幣のための施設費・設備費や人件費などだ。ちなみに2020年度の予算では、原材料以外のコストは134億4,400万円である。

このコストがどの硬貨ごとにどれくらいの割合でかかっているかは不明だが、単純に1gごとに等しくコストがかかると考えた場合は、1gあたり約2.8円。これは、134億4,400万円を2020年度に発行された硬貨の全重量で割って算出した値だ。

原材料を含めた原価は、1円硬貨が約3.1円、5円硬貨が約13.5円、10円硬貨が約17.4円、50円硬貨が約16.4円、100円硬貨が約19.6円、500円硬貨が約26.5円と推測できる。

<各硬貨の原価(推計値)>

硬貨 原材料コスト(①) 原材料以外(②) 原材料を含めた原価(①+②)
1円硬貨 約0.3円 約2.8円 約3.1円
5円硬貨 約3.0円 約10.5円 約13.5円
10円硬貨 約4.8円 約12.6円 約17.4円
50円硬貨 約5.2円 約11.2円 約16.4円
100円硬貨 約6.2円 約13.4円 約19.6円
500円硬貨 約6.9円 約19.6円 約26.5円
※②は「各硬貨の重さ(g)×2.8円」と計算

紙幣の原価は?1万円札はいくらで作られる?

では、紙幣の原価はいくらぐらいなのだろうか。

日本銀行によると、2020年度の銀行券の製造費用は539億円で、3種類の紙幣の総発行枚数は30億枚。紙幣ごとの原価はわからないが、539億円を30億枚で割ると紙幣1枚当たり約17.9円と推計できる(2020年度は2,000円札の発行はなかった)。

原価が20円にも満たない紙幣が、1万円の価値を持つのはなぜだろうか。それは、発行者の財務が健全であり、価値に対する信用があるからだ。日本円の紙幣の場合は、発行者である日本銀行の財務が健全であるから、ということになる。

最も原価が高いのは……

硬貨と紙幣の原価を並べてみよう。

<紙幣・硬貨の原価(推計値)>

1円硬貨 約3.1円
5円硬貨 約13.5円
10円硬貨 約17.4円
50円硬貨 約16.4円
100円硬貨 約19.6円
500円硬貨 約26.5円
1,000円札 約17.9円
5,000円札 約17.9円
10,000円札 約17.9円

500円硬貨の26.5円が、最も高い原価であることがわかる。次いで100円硬貨の19.6円、各紙幣の17.9円と続く。

ただし、原価は原材料価格の変動などによって変わるため、2021年度は順位が変わる可能性がある。

紙幣や硬貨は原価とその価値が大きく異なり、価値は発行体の信用によって担保されている。子どもにお金のことを教えるときなどのために、覚えておくとよいだろう。

執筆・
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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