この連載企画では、デイリーユースできる価格帯から、語りどころのある“名作モデル”を編集部が選出して、そのストーリーや魅力を紹介していく。第一回は“国産ダイバーズウオッチファーストモデルの系譜”をテーマにお届け。
歴史の重みを感じさせる意匠と実用性を両立
精密機器である時計にとって最大の脅威となるのが湿気と水。1956年にロレックスがオイスターケースを発表したことが知られているように、時計界では20年代からすでに防水時計の開発は進められていたのだが、本格的な潜水用のダイバーズウオッチが誕生したのは50年代であった。
当時、スイスの有力ブランドを中心にダイバーズウオッチの開発競争が激化していたが、そんななかで国産ブランドとして本格ダイバーズウオッチの開発に先鞭を付けたのがセイコーだ。諏訪精工舎は150m防水を実現した国産初のダイバーズウオッチ、Ref.6217-8000を開発。65年の4月から製造を開始している。
この国産初のダイバーズウオッチは、同年に日本を出発する南極地域観測隊越冬隊員の装備品としても寄贈され、過酷な環境下で隊員たちをサポートしたことでも知られている。
その後、“150mダイバーズ”は1968年にセカンドモデル、76年にサードモデルを発売。 “プロフェッショナル300mダイバーズ”で培った技術をベースにしつつ、75年にチタンを世界で初めてケースに採用した飽和潜水600mダイバーズウオッチ、Ref.6159-7010。現在も継承されている外胴プロテクター採用モデルの原点的モデルの開発に至る。
ここでクローズアップしたのは、そんな国産ダイバーズウオッチ黎明期に製造された歴史的モデルを原点にもつリバイバルモデルだ。
1965年に発売されたファーストダイバーズと、68年のセカンドダイバーズをモチーフに製作されており、いずれも、名作の設計思想と基本デザインを継承しつつ、外装、ムーヴメントに関しては現代の技術を反映することでクオリティを高められている良作である。歴史の重みを感じさせつつ、色使いで現代的なエッセンスを加えているのも魅力的だ。
語れる名作ウオッチ-其の1
SEIKO PROSPEX(セイコー プロスペックス)
1965 メカニカルダイバーズ 現代デザイン
1965年に発売された国産初のダイバーズウオッチの現代解釈モデル。オリジナルの意匠を継承しつつ、随所に現代的アレンジが加えられている。製紐(せいちゅう)と呼ばれる、日本伝統の技法で編み込まれたファブリックストラップとのコンビネーションも良好だ。別色のファブリックストラップが付属する。
■Ref. SBDC141。SS(40.5 mm径)。200m空気潜水用防水。自動巻き(Cal. 6R35)。13万7500円
独自の表面加工技術ダイヤシールドを施すことで強度が高められている。エッジに鏡面加工を施して高級感を高めているのもポイントだ。
オリジナルモデルを彷彿とさせるスクエア型のインデックス。ベージュのルミブライト夜光がアンティークテイストをプラスしている。
ベースになった60年代の初代モデル
1965年に発売された国産初の潜水用150m防水ダイバーズウオッチ。66年から4回にわたって南極観測隊越冬隊員の装備品として寄贈され、その後も多くの冒険家、探検家によって、北極、南極、エベレストなど地球のあらゆる過酷な環境下で使用された。