電通グループが、最新決算で800億円を超える巨額赤字を計上した。営業赤字も33億円に上り、営業赤字は2001年11月の上場以来初だ。なぜ、ここまでの赤字を抱えることになったのか。決算資料を紐解きながら、その要因や今後の展望を探る。

営業利益は1,116億の黒字から33億円の赤字に転落

電通グループが2月13日に発表した2019年12月期の連結業績(2019年1月1日~2019年12月31日)では、収益は前期比2.9%増の1兆478億8,100万円を確保したが、営業利益と当期利益はともに黒字から赤字に転落した。

具体的には、

  • 営業利益 33億5,800万円の赤字(2018年12月期 1,116億3,800万円の黒字)
  • 当期利益 808億9,300万円の赤字(同年同期 901億1,600万円の黒字)

    となった。

    これらは、電通グループが昨年発表した業績予想を下回っている。日本国内で大きな影響力を有する電通グループの決算だけに、広告業界に大きな衝撃を与えた。

電通グループを大幅な赤字に転落させた要因は?

「鬼十則」などで知られる電通。なぜ大幅な赤字を計上する結果となったのか。

主な要因は、APAC(日本を含むアジア太平洋)地域だ。中国とオーストラリアでの業績不振を反映し、企業の買収金額と買収先の純資産の差額である「のれん」の減損損失を計上した。2019年12月期第4四半期(10~12月)におけるのれんの減損損失は701億円に上り、これが2019年12月期の決算に与えた影響は大きい。

具体的には、オーストラリアでは主要顧客を失ったことや、中国国内の広告企業との競争激化などが影響している。電通グループはAPAC地域における事業計画を見直し、さらなる収益確保や事業拡大に向けて立て直しを図ろうとしている。

2020年12月期に黒字化の計画の内容

電通グループは2020年12月期(2020年1月1日~2020年12月31日)の連結業績について、収益が2.8%増の1兆771億円となると見込んでいる。営業利益と親会社の所有者に帰属する当期利益がともに黒字転換し、それぞれ1,082億円、467億円になる見通しだ。

2020年は東京五輪が開催されるが、電通グループは五輪の専任広告代理店として業務を行う。いくつもの大型案件が舞い込むことになるだろう。日本国内の事業を中心に成長を見込んでいるとの説明から、東京五輪が業績回復のカギになることはほぼ間違いない。

また国内事業では「インターネット」部門における収益が前期比26.6%増と好調で、この部門での収益をさらに拡大するための施策が注目される。
 

懸念されるのは新型コロナウイルスの影響

一方で、最近新たな懸念が浮かび上がってきた。新型コロナウイルスによる経済活動への打撃だ。

感染者が1人出た電通では、本社勤務の約5,000人が在宅勤務となった。各種大型イベントが続々と開催中止・延期となっている。東京五輪の開催が危ぶまれるようなことになれば、大きな収益機会が失われる可能性もある。

電通グループはインバウンド関連の広告やプロモーション案件も多数手掛けており、日本への訪日観光客が減れば、これらの事業にも影響が出ることは容易に想像される。新型コロナウイルスによる影響は電通グループに限った話ではないが、この厳しい局面をどう乗り切るのか、電通グループの底力が試される。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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