人気の回転寿司の売上ランキングTOP3はどこか? 多くの消費者を魅了する「スシロー」や「くら寿司」がリードする回転寿司チェーン業界は、現在過渡期を迎えている。人口減少、消費者ニーズの多様化などの変化が巻き起こる中、各社はどのような戦略で生き残りを模索しているのだろうか。

回転寿司業界の歴史 最初の店舗、その後の成長期

今や、街のいたるところにある回転寿司チェーン。まずは、その起源や発展の歴史を見てみよう。

日本の回転寿司の発祥は大阪「元禄寿司」 ビール工場にヒント?

もともと、「握り寿司」は江戸の人々が食す「江戸前寿司」で、関東に限定されたものだった。それが関東大震災をきっかけに、商機を失った寿司職人たちが地方へ進出し、全国に広まることになった。

その後、大阪では握り寿司を扱う立ち寿司が隆盛した。日本で最初の回転寿司店は、そんな大阪の東大阪市に1958年4月にオープンした「廻る元禄寿司 1号店」だ。

「元禄産業株式会社」の創業者である白石義明氏が、立ち食いの握り寿司をさらに効率化できないかと考えたのがきっかけだ。ビール工場で使われているベルトコンベアにヒントを得たと言われている。

1980年の大阪万博により回転寿司が全国へ

「元禄寿司」は回転寿司発祥の店として、その勢力を拡大。一時は「回転寿司と言えば元禄寿司」と言われるくらいの独占市場だった。その後、1980年の大阪万博に「元禄寿司」が出店。回転寿司の存在が一般に知れ渡ることとなり、新規企業が次々と参入することになる。特に大手企業による郊外型ロードサイドの大型店が、ファミリー需要を捉えたことでその人気は加速していった。

1990年~2000年代 他業種との競争が激化

1990年代後半からは、ファミリーレストランやコンビニエンスストアといった他業態との競争が激化。回転寿司市場全体の成長が鈍化する。

2000年以降は、1皿100円という低価格戦略や独創的なメニュー開発で顧客を獲得していった。また回転寿司チェーン店各社は、仕入・流通ルートの効率化によるコスト削減なども行い、生存戦略を模索していくことになる。

その後も

  • 国内経済の長期的な停滞による需要の減少
  • 人口減少に伴う慢性的な顧客数減
  • 持ち帰りや宅配といった中食市場との競争
  • 原材料となる魚介類の価格高騰

    など、回転寿司業界は厳しい経営環境に置かれている。

    その中で、各社はメニュー開発のさらなる強化やサービス品質の向上によって、生き残りを図っている。近年は、寿司以外にラーメンや揚げ物といった幅広いメニューを提供。新鮮な寿司を提供するための回転レーンの撤去、女性客をターゲットとした内装などの工夫が見られる。

回転寿司業界の売上規模は6,000億円超!TOP4社の寡占化が進む

ここで、直近の回転寿司業界の動向を見てみよう。売上高ランキングTOP3は以下のとおりだ。

1位 スシロー 1,990億円(2019年9月期)
2位 くら寿司 1,361億円(2019年10月期)
3位 はま寿司 1,242億円(2019年3月期)

2017年の回転寿司市場の規模は6,250億円と言われており、大手上場3社の「スシローグローバルホールディングス」「くら寿司」「カッパ・クリエイト」、未上場企業の「はま寿司」の4社が市場を寡占している。2017年度の決算数値で見ると、大手上場3社合計が業界売上の約6割を占める。

各社には、どのような特徴があるのだろうか。

スシローグローバルホールディングス 1975年創業の大阪企業

1975年に創業者の清水義雄氏が大阪市阿倍野区に「鯛すし」を開業し、1984年には大阪府豊中市に株式会社すし太郎を設立した。2000年に「あきんどスシロー」に商号変更して以降、世界初となる回転寿司総合管理システムの開発や、セントラルキッチンの全面廃止などの画期的な施策を次々と打ち出した。

2009年にエーエースホールディングス株式会社(ユニゾン・キャピタル・グループが主導)によるTOBを受けて上場廃止となり、2011年には回転寿司売上日本一を達成。現スシローグローバルホールディングスは2015年3月設立、2017年3月に東証一部に再上場を果たした(あきんどスシローは連結子会社化)。

現在は全都道府県への出店のほか、台湾やシンガポールなど海外展開加速し、今後5年で海外店舗の売上高200億円を目指す中期計画を掲げている。2019年9月期の売上高は約1,990億円、国内外合わせて566店舗(2019年9月期末現在)を擁する業界最大手である。

くら寿司 スイーツブランドKURA ROYALもオープン

大阪府堺市の小さな寿司店としてスタート。1984年に「100円で本物」をフレーズに「回転寿司くら」を開業し、大型店としては初めて直線型タイプの回転寿司を導入した。1995年に株式会社くらコーポレーションを設立し、「ビッくらポン」「タッチでポン」などの人気機能を次々と開発、2004年に東証二部上場を果たした。

同社は、寿司にとらわれない幅広いメニュー開発に注力し、KURA ROYALというスイーツブランドをスタートさせるなど、若い女性の顧客獲得にも積極的。東京大学大学院と連携したおいしさの研究など、味にも力を入れている。「スマホdeくら」というITシステム開発にも積極的で、消費者の多様な生活シーンに対応している。

2019年10月期売上高は1,361億円、前年同期比2.7%増と好調。海外展開にも積極的で、米国に23店舗、台湾に20店舗を持つ。2019年8月に米国子会社Kura Sushi USAをNASDAQに上場させたことで、米国出店を加速させる狙い。

カッパ・クリエイト 100円均一、超大型店舗などの先駆け

創業者である徳山淳和が、1978年に前身となる有限会社長野フーズを設立し、1979年に「かっぱ寿司 第一号店」を長野市にオープン。1994年に京都府伏見市に「ニュータイプ 一号店」をオープンすると、関東を中心に次々と出店していった。

2007年3月には外食大手ゼンショーグループに第三者割当増資を行い、一旦同社の傘下に入ったが、2008年8月に自社株買いによって提携を解消。2012年に持ち株会社制に移行し、カッパ・クリエイトホールディングス株式会社に商号変更した後、2014年にはコロワイドグループによるTOBで傘下となっている。

同社は100円均一店舗の導入や超大型店舗の開発など、業界に先駆けて店舗開発を行ってきたことでも有名。近年は消費者の嗜好が高品質・高価格の商品へと変わったことで、客離れが顕著に。売上高、営業利益ともに低迷が続いている。2019年3月期の売上高は約761億円(前期比3.2%減)、店舗数は国内に331店舗(2019年3月期末現在)。

この状況を打開すべく、フルオーダー制店舗の開発や海外展開の注力など、コロワイドグループとのシナジーを模索している。

はま寿司 「すき家」を擁するゼンショーグループの一角

外食最大手のゼンショーグループが回転寿司市場に参入すべく、2002年に株式会社「はま寿司」を設立。グループのファストフードカテゴリーに属し、このカテゴリーにはうどんの「久兵衛」や「モリバコーヒー」、ラーメンの「伝丸」などがある。

「はま寿司」単体の2019年3月期の売上高は、1,242億円。積極的な店舗拡大やサービス強化を図り、成長を続けている。

(単位: 百万円)

回転寿司業界を知る3つのキーワード

各社が様々な施策を打ち出しているのは、従来の回転寿司産業に大きな陰りが見えているからだ。3つのキーワードで、現在の業界事情を紐解きたい。

キーワード1,市場フェーズが成熟期後半へ

まずは、回転寿司の需要減少の慢性化や市場の飽和などの外的要因が挙げられる。

ここまで見てきたように、回転寿司市場の成長は、大阪万博で一般市民にその存在が認知されてから、寿司を安く気軽に食べたいという消費者が急速に増えたことが要因だ。市場が認知され、拡大していく中、大手チェーン各社がそこにめがけて出店するかたちで発展。いわば「成長産業の勝ちパターン」で業界が拡大してきた。

ところが回転寿司が全国に普及し、爆発的なニーズの増加が望めなくなった現在では、慢性的な人口減少も相まって需要は停滞。これまでの勝ちパターンが通用しなくなっている。

キーワード2,市場寡占化で競合優位性戦略の限界

2つ目は、業界内競争における打ち手が限られつつあることだ。

これまで大手チェーン各社は、4Pを軸とした戦略で事業を展開してきた。

  • 商品戦略……消費者に満足してもらうための寿司を中心としたメニュー開発
  • 価格戦略……顧客獲得を狙い商品を低価格で提供
  • 出店戦略……店舗を拡大することによる収益増加
  • プロモーション戦略……テレビCMやチラシによる知名度・ブランド価値向上

    これらによって、競合他社との優位性を模索してきた。しかし、寿司という単一商品で勝負する以上、打てる手は限られる。

    そのため「スシロー」や「くら寿司」は、いち早く海外に進出するという「出店戦略」で勝負。一方「カッパ・クリエイト」は新鮮さを追求し、フルオーダー制店舗を2021年度までに158店舗まで急拡大する「商品戦略」に舵を切った。

    回転寿司マーケットのメインプレーヤーたちは、既存の発想に捉われない戦略を打ち出しているものの、成功の見通しは不透明だ。

キーワード3,消費者ニーズの変化による業界変化の兆し

3つ目は、消費者の食に対するニーズの変化だ。業界の成長鈍化の最大の要因は、おそらくこれだろう。

現代のライフスタイルや食生活は、多様化している。従来のような店舗型レストランだけでなく、テイクアウト、コンビニエンスストアやスーパーでの惣菜・弁当の購入、さらにはUber Eatsのような宅配など、いわゆる「中食」の需要が急拡大。回転寿司は、同業他社の競争だけでなく、このような代替市場との顧客獲得競争を強いられているのだ。

最近は、回転寿司の中でも独自のコンセプトや店づくりを打ち出し、人気を集めている店舗も出てきている。北海道発祥の「回転寿司トリトン」や、北陸ネタを自慢とする「金沢まいもん寿司」など、高級回転寿司チェーン店も存在感を増している。

これは、従来の低価格回転寿司では満足できなくなった消費者が、より美味しいこだわりの寿司を求めて高級路線に向かう需要を取り込んだものだ。

回転寿司チェーンの今後の戦略は? 海外やITに活路を見出すか

寿司一本で勝負する回転寿司チェーン各社が、次に打つ手は何か。「スシロー」や「くら寿司」のように、寿司人気が増す海外に市場を見出すのも一つだ。しかし、日本独自の文化である回転寿司が海外でどこまで通用するかは未知数。現地の食文化に沿うような、柔軟な商品開発が求められるだろう。

また、ITの活用による業務改革の動きもある。一般的になりつつある寿司ロボットがその代表だ。

その他にも、ICタグによる寿司の品質管理、リアルタイムで来店状況を把握することで需要を予測し廃棄率を低下させるシステムの開発、注文管理や店舗業務の自動化などがある。テクノロジーを活用することで徹底的なコスト削減を狙うという先行投資も、戦略の一つと言えるだろう。

いずれにしても、このままでは残ったパイを取り合うことになる回転寿司市場の中で、大手チェーン各社は「次の勝ちパターン」を見つけなければならない。

文・森 琢麻(M&Aコンサルタント)
 

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