外食大手のすかいらーくホールディングスが、新型コロナウイルスの影響に相当苦しんでいるようだ。同社は、2021年12月期の連結業績の売上予想を下方修正した。外食産業の大手でさえも、コロナ禍を乗り切れないのだろうか。

すかいらーくHDが業績を下方修正

すかいらーくホールディングス(すかいらーくHD)が2021年12月期(2021年1〜12月)の連結業績予想を下方修正したのは、2021年5月のことだ。その理由として、新型コロナウイルスの長期化とワクチン接種の遅延などを挙げている。

具体的には、通期の売上高を3,100億円から2,850億円に下方修正した。上場企業の業績予想の下方修正は、投資家に悪い印象を与える。業績の見通しが甘かったと判断されるからだ。

そのため、すかいらーくHDはかなり厳しいシナリオを想定して当初3,100億円という予想を発表したわけだが、それをさらに下回る可能性が高くなってしまった。コロナ禍が完全に収束するまでは、業績予想は難しいということだろう。

営業利益と当期純利益は下方修正せず

売上高は3,100億円から2,850億円に下方修正したが、営業利益と当期純利益の予測は下方修正しなかった。「自助努力による継続的なコスト削減」と「時短協力金などの計上」によって、予測どおりの数字を残せる可能性が高いという。

確かに売上高の下方修正はインパクトがあるが、当期純利益の予想を維持したことを考えると、すかいらーくHDは窮地に立たされてはいるが、施策の最低限の効果は出ているのだろう。

外食業界のライバル企業と比べてみると・・・

ここまですかいらーくHD単体の業績を見てきたが、他の外食大手と比べるとどうだろうか。業界で売上ランキング上位のゼンショーホールディングス(ゼンショーHD)と日本マクドナルドホールディングス(日本マクドナルドHD)の業績予想と比べてみよう。

外食大手3社の今期の売上予想・増減見込み

企業 前期の売上高 今期の売上予想 増減見込み
すかいらーくHD 2,884億円 2,850億円 1.1%減
ゼンショーHD 5,950億円 6,880億円 15.6%増
日本マクドナルドHD 2,883億円 2,995億円 3.9%増
※出典:各社の決算資料

すかいらーくHDの2020年12月期の売上高は2,884億円で、前述のとおり2021年12月期は2,850億円に着地する見通しだ。その場合、売上高は前期比で約1.1%減になる。ゼンショーHDと日本マクドナルドHDはどうだろうか。

ゼンショーは売上15.6%増の見込み

ゼンショーHDの2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の売上高は5,950億円で、2022年3月期(2021年4月〜2022年3月)の売上高は6,880億円になると予想している。予想どおりになれば、前期比15.6%増となる。

日本マクドナルドHDは売上3.9%増の見込み

日本マクドナルドHDはどうだろうか。2020年12月期の売上高は2,883億円で、2021年12月期の売上高は2,995億円に着地し、前期比3.9%増になるという。

ゼンショーのみ決算期が異なることは考慮すべきだが、すかいらーくHDを他の外食大手と比べると、売上高に関しては決して良い状況とはいえないことがわかる。

外食大手が今期以降に取り組むことは?

今期の売上高の増減見通しでは、ゼンショーHDと日本マクドナルドHDに劣るすかいらーくHD。では3社は具体的に、今期以降どのような取り組みを行おうとしているのか。

ゼンショーHDは今期、持ち帰り需要への対応強化や新規出店などにより、売上増を狙っている。日本マクドナルドは「巣ごもり需要」をさらに取り込むため、ドライブスルーの受け入れ能力の引き上げやデリバリーの強化によって、売上増を見込む。

では、すかいらーくHDはどうだろうか。同社は中長期的な視点で3段階のフェーズを設け、「食の総合型企業」への変革を目指すとしている。同社がいう食の総合型企業とは、「外食・中食・内食まで視野に入れた暮らしの隅々にわたるサービスを提供する企業」のことだ。

第1フェーズ(2021~2022年)では高収益体制の確立を実現し、第2フェーズ(2022~2025年)では新たな事業の研究開発や実験の推進、第3フェーズ(2025年~)では事業の収益拡大やM&A(買収・合併)による会社規模の拡大を計画しているという。

打ち立てた成長戦略を着実に実行することの重要性

すかいらーくHDがコロナ禍を乗り切るには、増収を見込む他社の戦略を真似するのではなく、すでに打ち立てた成長戦略を着実に実行していくことが重要だと考えられる。「食の総合型企業」へと変革を果たし、コロナ禍の厳しい状況から抜け出せるか、今後も注目したい。

執筆・
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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