痛みのトリガー遺伝子

研究者たちは、このネアンデルタール人の遺伝子変異が、どのように神経に作用していたかを、カエルの卵と、人間の腎細胞を使って調査しました。

すると変異したNav1.7が生み出す神経インパルスは、変化のないタンパク質と比べてより活性化していることがわかったのです。

これはネアンデルタール人が、遺伝子「SCN9A」の変異によって「痛みのボリュームつまみ」が最大方向へ回されていたのに近い状態だったことを意味しています。

大人なのに注射が苦手? それはネアンデルタール人の遺伝子を継承しているからかも
(画像=pixabay、『ナゾロジー』より引用)

つまりネアンデルタール人は、ちょっとの刺激でも現生人類と比べて非常に痛いと感じる、痛みに非常に敏感な人たちだった可能性があるのです。

次に研究者は、このネアンデルタール人の変異遺伝子を継承している人が現代にも存在するか調査しました。

これには英国人50万人のゲノムデータベースUK Biobankが利用されました。

この調査によると、データベースに登録されたうちの約0.4%の人が、ネアンデルタール人と同じ変異した遺伝子のコピーを持っていました。

ただ、ネアンデルタール人はこうした変異遺伝子を2つ持っていましたが、現代人は1つしか持ちません。

それでも研究では、こうした変異遺伝子を持つ人達は、持たない人に比べて痛みを感じる可能性が人生を通して7%近く上昇すると報告されています。