大人なのに注射が苦手? それはネアンデルタール人の遺伝子を継承しているからかも
(画像=depositphotos、『ナゾロジー』より引用)
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遺伝子解析の結果、ネアンデルタール人は痛みに対して現代人よりも非常に敏感だった可能性がある
この遺伝子は現代人でも一部の人たちが継承しており、その人達は痛みを感じる可能性があがる
英国遺伝子バンクに登録された50万人の調査では、約0.4%の人に同様の遺伝子変異が確認できる

大人なのに歯医者や注射が極端に苦手、という人がたまにいます。

こういう人たちを見ると「いい年して情けない」と、安易に考えてしまいますが、実は痛みに極端に敏感な人達は、古代ネアンデルタール人の遺伝子を継承しているのかもしれません。

ネアンデルタール人の遺伝子は昨今非常に詳細な解析が可能となっていて、さまざまな研究が進められています。

そうした中で、実はネアンデルタール人は痛みの閾値が非常に低かった可能性があると報告する研究結果が登場しました。

そして、その遺伝子は英国人50万人を対象に調査したところ、およそ全体の0.4%の人が現代でも継承していることが判明したのです。

これは英国に限らず、世界中の人々の中にも痛みに敏感な遺伝子を古代より継承した人がいる可能性を示唆しています。

ネアンデルタール人の遺伝子

大人なのに注射が苦手? それはネアンデルタール人の遺伝子を継承しているからかも
(画像=depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

ネアンデルタール人は約40万年前に出現し、2万年以上前に絶滅したとされる化石人類です。

このネアンデルタール人は、現生人類である我々とはまったく異なる種族であり、混血が生まれることも不可能だと考えられていました。

しかし、最近では発見されたネアンデルタール人の遺体から高品質のDNAサンプルが得られ、現生人類に彼らの遺伝子が数%混入しているということが明らかにされました。

こうした研究が進み、現在ではネアンデルタール人が現代の我々と何が違っていたかという、遺伝子の変異についても自信を持って特定できるようになっています。

この中で、特に際立っていたのが、Nav1.7というタンパク質を合成する遺伝子「SCN9A」です。

すべてのネアンデルタール人が、この遺伝子では合成されるタンパク質の形状を変化させる3つの変異を持っていたのです。

この説明では、専門知識のない人間には何を言っているのかさっぱりですが、重要なのはNav1.7が身体の神経に作用するタンパク質で、痛みの信号を脊髄と脳に伝達するかどうか、またどの程度伝達するかを決める役割を持っているということです。

タンパク質のNav1.7はいわゆる「痛みのボリュームつまみ」のようなものなのです。

そのため遺伝子「SCN9A」が欠損していて、タンパク質Nav1.7が無効にされている人は、先天性無痛症になり痛みをまったく感じなくなることが知られています。

つまり、ネアンデルタール人は現生人類とは、痛みの感じ方が全く異なっていた可能性があるのです。