大接戦のレグ2

ラリー2日目のSSは午前3本、午後3本と前日と同じ本数だが、SS9/12が15.23kmと一番の長さが設定されている。スタート順は鎌田-勝田-新井という順番で、奇しくも新井は狙い通りのスタート順になったわけだ。

前日、朝1本目のSSでは自信がないと発言していた勝田だが、見事トップタイムを叩き出し、2位新井を0.1秒差で抑えた。

その新井は、前日のインタークラーのトラブルは解消され、トップ鎌田と6.4秒のタイムを縮めるラリーを目指すことになる矢先、この日1本目のSS7では0秒以下の僅差のラリーとなったのだ。

そして前日トップの鎌田は1番スタートで路面が浮き砂利という状況の中スタートし、やはりタイム的には厳しくトップの勝田から3.1秒遅れ4番手止まりだった。SS7終了時点で総合トップは勝田に入れ替わり、2番手に鎌田でその差は0.7秒。前日の2.4秒差を吐き出すことになった。3位は新井で勝田と4.1秒差だ。

全日本ラリー第7戦 ARKラリー・カムイ2021 GRヤリス勝田優勝 スバルWRX STI新井、鎌田が2位、3位獲得
(画像=最後のSS3本で優勝が決まるという大接戦になった、『AUTO PROVE』より 引用)

続くSS8では新井がトップを奪うものの、勝田が0.8秒差で2位に入り、総合では勝田のリードが続く。その差は3.3秒と僅かに縮んだ。鎌田はスタート順がトップで出ていくためかタイムは伸びず、3番手には入るもののトップ勝田には11秒と離されていく。

そして最長のSS9では新井が底力を発揮し、勝田に3.6秒差をつけ総合でも勝田に0.3秒差で新井がトップに立った。ここでは鎌田が2位に入りWRX STIがワンツーを決めた。やはり高速のグラベルでは経験豊富なWRX STIが実力を発揮した形になった。

緊迫の最終セッション

最終のセッション4は、優勝争いを0.3秒差で新井と勝田が競う。鎌田は11.1秒離されているため、優勝を狙うには厳しい状況だ。また4位以下は数分離れていたため、最後のSS3本は新井と勝田の一騎打ちで勝者が決まるという緊迫した展開となった。

最終セッション1本目のSS10ではなんと勝田、新井は同タイム1位を記録。5.38kmを3分55秒8でタイムが揃った。

残り2本。SS11は10.48km。午前はこのSSを新井が0.8秒差で勝田を抑えているコース。だが、逆にここでは勝田が新井に0.8秒差を付けてトップを奪った。その結果、総合順位は勝田に入れ替わり、新井とは0.5秒差と逆転している。

そして最後のSS12は最長コースで新井が逆転すると誰もがイメージした。それは午前のSS9で新井は勝田に3.6秒もの差を付けてトップを取っているだけに0.5秒は逆転できると思われたのだ。だが、最終ステージでは勝田が新井より0.2秒速く、11分57秒6でゴール。新井は11分57秒8で勝田に0.7秒届かず2位になった。

全日本ラリー第7戦 ARKラリー・カムイ2021 GRヤリス勝田優勝 スバルWRX STI新井、鎌田が2位、3位獲得
(画像=マシンを手中に収めるまではできていないというが、勝田範彦は勝った、『AUTO PROVE』より 引用)

僅かな違い

ラリー終了後新井は、「最後のセッション4のSS3本は完璧に走ったよ。一つのミスもなく走ったのに勝てなかった。GRヤリスはどんどん速くなってくる。毎日速くなっているみたいに、昨日より今日のほうが速いって、そこまでクルマを仕上げてくるガズーレーシングが凄いね。ここまで完璧に走って勝てなかったから、今は逆に清々しいよ。完全にやられたって感じだね」

全日本ラリー第7戦 ARKラリー・カムイ2021 GRヤリス勝田優勝 スバルWRX STI新井、鎌田が2位、3位獲得
(画像=完敗と言う新井敏弘だが、マシントラブルがあっての2位は凄い、『AUTO PROVE』より 引用)

しかし新井は、どんどん早くなるGRヤリスに対し、どうすればWRX STIで勝てるかを分析していた。「まだまだこのクルマは速くできるよ。どこをどうすればいいか、それは言えないけど伸びしろは十分にあってグラベル3連戦の初戦は落としたけど、残りは勝ちに行く」と話す。

全日本ラリー第7戦 ARKラリー・カムイ2021 GRヤリス勝田優勝 スバルWRX STI新井、鎌田が2位、3位獲得
(画像=左から2位:新井敏弘/田中直哉組、優勝:勝田範彦/木村裕介組、3位:鎌田卓麻/松本優一組と各メカニック達、『AUTO PROVE』より 引用)
全日本ラリー第7戦 ARKラリー・カムイ2021 GRヤリス勝田優勝 スバルWRX STI新井、鎌田が2位、3位獲得
(画像=優勝直後、モリゾウさんからビデオメッセージが届いていた、『AUTO PROVE』より 引用)

一方の勝田は「手探りの中、メカニックやエンジニアがいろいろやってくれて、特にデフ制御をいろいろ変更しながらやったので、その結果のひとつだと思います。こうしてチームのみんなが全力で力を合わせてくれるのが、本当に有り難いし勝ちたい気持ちも強くなります。それにモリゾウ(豊田章男社長)さんが、優勝が決まった直後にビデオメッセージを送ってくれて、本当に嬉しいですよね」と、グラベルデータの全くない中で勝利した要因を語っていた。

次戦はグラベル3連戦のうちの2戦目、全日本ラリー第8戦8月20日〜22日にかけて秋田県横手市で開催される「横手ラリー2021」となる。スバルWRX STIには、グラベルでの豊富な経験、2.0LターボのトルクフルなEJエンジン、そしてシンメトリカルレイアウトの4WDという特徴を最大限に発揮して表彰台の頂点を期待したい。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

提供・AUTO PROVE

【関連記事】
BMW M550i xDrive (V型8気筒ツインターボ+8速AT:AWD)試乗記
マツダ3e-スカイアクティブ X試乗記 トップグレードエンジンの進化
トヨタ ヤリスクロス試乗記 売れるクルマ(1.5Lハイブリッド4WD)
ホンダ N-ONE試乗記 走りが楽しいRS(FF 6速MT、CVT、ターボ&NA)
スズキ ソリオバンディット試乗記(1.2LMHEV CVT FF)