北海道で開催された全日本ラリー第7戦は、人数制限はあるものの久しぶりの有観客で開催され、今シーズン初のグラベル(未舗装林道)で行なわれた。12本あるスペシャルステージ(SS)の合計は108.84kmと長いSSで競いながら、GRヤリスを駆る勝田範彦/木村裕介組がWRX STI新井敏弘/田中直哉組にわずか0.7秒の差を付けて初優勝を勝ち取った。
第7戦ARKラリー・カムイ2021は北海道の南西部に位置する虻田郡ニセコ町、蘭越町で2年ぶりの開催。ラリーパークはニセコアンヌプリ国際スキー場に設置し、SS12本、リエゾン(移動区間)284.83km、総走行距離393.66km、2日間に渡り競われた。

ラリー前の下馬評では、今季旋風を巻き起こしているシュコダ・ファビアR5とGRヤリスに関し、いずれもグラベルが初めてのラリーであり、経験豊富なWRX STI勢が有利と噂されていた。そのWRX STIを走らせるドライバーの新井も鎌田も「ここで勝たなくてどこで勝つか。ターマックでの速さを得たファビアR5には勝つのは厳しくなってきているし、GRヤリスもラリー毎に速くなっている。だから、この先はもっと苦しくなってくる」とコメントしており、このグラベルでのアドバンテージを勝利に結びつける意気込みを語っていた。

一方の勝田は「GRヤリスの軽量マシンという部分を有利に使いたいですね。でも浮き砂利があるとグリップが薄く、十分なトラクションがかからないので、そのあたりで相殺されてしまいますが、いいタイムは出せると思います。また、これまでダートでは何度もテストをしているので、動きは理解できてますけど、狭い林道を走るのは初めてなので不安はあります」とコメントしている。

スタート前
レッキ(下見)を終えコースの印象を各ドライバーに聞くと、口を揃えてスタート順の有利不利を口にしていた。つまり、トップスタートだと路面に浮き砂利が多くグリップが薄い状態での走行になる。後ろのスタート順になれば、その砂利が蹴散らされグリップの高い状況が作れるという意味だ。
浮き砂利になればクルマを振ってドリフトさせないと曲がれない。ドリフトすればタイムをロスするというグラベルならではの悩ましい部分。それだけにレグ2(Day2)を誰がトップで走ることになるのか、初日のタイム次第で決まるだけに順位の駆け引きがあるのかもしれない。
初日のスタート順トップは、シリーズポイントリーダーであるアサヒ☆カナックOSAMU555ファビアR5の福永修/齊田美早子組、ついでアドバン クスコ ファビアR5柳澤宏至/保井隆宏組、3番スタートでGRヤリスGR4ラリーの勝田範彦/木村裕介組、4番スタートでアドバン KTMS GRヤリス奴田原文雄/東駿吾組となっていた。

SUBARU WRX STI勢の富士スバルAMS WRX STIの新井敏弘/田中直哉組は5番スタート。そして前回のモントレーラリーで3位入賞しているWinmaX DLシムスWRX STI鎌田卓麻/松本優一組が6番スタートなので、スバル勢は路面コンディションという点では、やや有利なスタート順と言える。
レグ1
最初のSS1では好調の鎌田がトップタイムを出し、新井が2番手で続く。下馬評どおりだ。後発有利説。3番手にファビアR5の福永でGRヤリス勝田は4番手。そして続くSS2でも新井、鎌田がワンツーで3番手が勝田という順。SS2本を終えトップ鎌田は3位勝田に3.8秒のリードを築いた。
SS3でも新井、鎌田のWRX STIがワンツーを決め、トップは新井に入れ替わり3番手の勝田に7.1秒まで差を広げることができた。ここで午前のセッション1を終了し、スバル勢は順調な滑り出しとなった。
午後のセッション2では、1本目SS4で新井、鎌田がタイムを落とした。その理由は、鎌田は午前のマシンセットから変更をしたため、少し乗れなかったとコメント。しかし次ぐSS5ではトップ勝田に0.8秒差で3位、SS6ではトップタイムをマークし総合でもトップに立つことができている。鎌田は2位勝田に2.4秒、3位新井に6.4秒差で首位に立った。
一方新井のタイムが4、5番手なのはレグ2のスタート順を踏まえ3番手狙いに切り替えているかのように想像できるタイムを並べていた。
そこでサービスパークに戻った新井に聞くと「全然そんな余裕なんてまったくない。全力でやっているけど、水冷インタークーラーの冷却水が流れないトラブルがあって、SSの後半になるとパワーダウンして走れなかった」ということが分かったのだ。
そのため新井はSS4、5、6では4、5番手止まりという結果だったが、レグ1終了時点の総合で新井はトップの鎌田と6.4秒差で収まり3番手。2位勝田には4秒差であり、十分トップを狙える位置にはいた。そして2番手勝田のGRヤリスは、ジワリと差を縮め、トップ鎌田とは2.4秒差に詰めていた。
一方、シリーズをリードするファビアR5の2台は初グラベルにやや手こずっている様子で、レグ1を終えて福永は4番手、柳澤は5番手というポジション。福永はトップ鎌田に15.3秒遅れ、柳澤は49.3秒遅れているので、トップ争いは厳しい状況になっていた。

初日トップで終えた鎌田は「午前中のセットアップを変更した午後の1本目はうまく乗れなかったんですけど、2本目、3本目はセットの変更がいい方向に出たので、気持ちよく走れて、僕自身は満足の走りができました。だけどタイム差を見ると凄い僅差で、GRヤリスの速さには驚きますね。グラベルデビュー戦とは思えないです」とGRヤリス勝田の速さを警戒するコメントだった。
追う勝田は「だいぶ乗り慣れてきました。午前中はミスも多く全然ダメでしたけど、午後はいい感じで走れてると思います。高速で轍(わだち)があるコーナーでは少し反応が悪く、ものすごくロールもするので、そのあたりは調整しようと思ってます。でも明日の1本目は自信ないなぁ、浮き砂利が難しいし・・・」とコメントしていた。
