中国、米国に次ぐ「世界で3番目にビリオネア(資産10億USドル以上)が多い国」となったインド。現地で人気の安全資産が、ゴールドや不動産から、株や投資信託、短期証券、現金へと移行しつつあることが分かった。
同国は、国民の総資産を評価基準とする「経済的に豊かな国」ランキングでも世界6位に選ばれているが、近年の資産の増加は富裕層に集中しており、貧富の格差問題が深刻化している。
一方、家族や一族の資産を安全かつ確実に運用する「ファミリーオフィス」の設立がインドでも目立ち、2017年の時点で世界中のファミリーオフィスの50分の1に値する200社に達しているそうだ。
インドのビリオネアがGDPの約半分を所有
中国の大富豪ランキング「Hurun Report(胡潤百富)」の2018年版では、インドのビリオネアが31人増えて合計131人 に。インド生まれのビリオネアを含むと、合計170人に達する。医薬品分野の事業主(19人)や、自動車および構成部品(14人)が多い。
首位の中国(819人)、2位の米国(571人)と比較すると小規模ではあるものの、過去1年間の増加数では210人増えた中国に次ぐ急成長を遂げている。
これらのビリオネアの平均年齢は64歳。インドのGDPのおよそ半分(49%)に値する、4540億USドルを所有している。ビリオネアに人気の都市はムンバイ(55人)、ニューデリー(29人)だが、31人がアラブ首長国連邦や英国、米国などに移住している。
過去10年間の資産成長率160%
インドで成長中なのはビリオネアだけではない。2018年1月にNew World Wealthが発表したランキングでは、政府資金を除く2017年のインドの総資産は8.2兆USドル(前年比25%増)。世界で6番目に経済的に豊かな国に選ばれている(The Economic Times2018年1月30日付記事)。
資産の成長率は先進国・新興国中最も高く、2007~2017年の10年間では160%増という驚異的な成長率を記録。こうした急成長は富裕層の増加に起因するもので、ミリオネア(資産100万USドル以上)は33万人を上回っている。
インドにおける富裕層増加の要因のひとつとして、資産市場バブルが挙げられている。不動産や株価の上昇が、これらの資産を既に所有していた富裕層の資産を押しあげると同時に、新たな富裕層を生み出した。
モディ政権による貧富格差緩和策が富裕層の圧力に?
富裕層の増加が、時として貧富格差を拡大するのは周知の事実だ。インドも例外ではない。
英国の非営利団体Oxfamは所得格差に関する最新の報告書の中で、「2017年にインドで創出された資産の73%をトップの1%が所有している」と指摘。世界的に同様の傾向がみられるものの、「インドの国民のうち、資産額が低い側から67%の人数の人々が持つ資産はわずか1%しか増えていない」という。つまり、所得格差がさらに拡大しているということになる(The Economic Times2018年1月23日付記事)。
富裕層が資産を増やす一方で、ナレンドラ・モディ首相による富裕層の締め付けが強まっていると報じられている。ビリオネアのビジェイ・マリヤやニラブ・モディが融資詐欺で次々と逮捕されるなど、これまで絶大な権力を握っていた富裕層に逆風が吹き始めているのは明らかだ(BBC2018年2月20日付記事)。
現金5割、株と投資信託が各1割—が投資のトレンド?
そんな中、インドの消費者の資産配分や投資法 に変化がみられる。
クレディスイスがインドの消費者2814人を対象に実施した最新調査によると、これまで主要だった銀行口座(被調査者の7割が保有)・保険(5割)・不動産(1割)・ゴールドおよび宝石(2割)が2016年から2017年にかけて減少傾向にあるのに対し、株(1割)・投資信託(1割)・現金(5割)・短期証券(0.5割)で資産を保有する消費者が目立って増えている。
所得に関する楽観的な展望は月収5万ルピー(約8.1万円)以上の高所得層に強くみられ、24%が「今後半年以内に所得が10%以上増える」と期待している。5万ルピー以下の層で同じ回答をしたのは10%だ。
資産配分の変化と、インドの貧富格差や富裕層を取り巻く環境の関連性は確認されていないが、「全く何の影響もない」とは言い切れないのではないか。
世界の「ファミリーオフィス」の50分の1はインド人富裕層が設立
資産を維持・増やす目的で、「ファミリーオフィス」を設立するインドの富裕層が増えている。
ファミリーオフィスとは、家族あるいは一族の保有資産を安全かつ確実に運用するという概念の元、主に米国の富裕層を中心に広まった資産運用法である。第三者を介入させることなく、あくまで組織内で資産運用を行う点が、既存の資産管理企業と異なる(Investopediaより )。銀行が投資に関するアドバイスを提供するのに対し、ファミリーオフィスでは税金から継承、慈善団体への寄付、投資まで、資産に関するあらゆる問題に対応する。
CNBC2017年6月27日付記事によると、近年インドでも、事業経営者から起業家、セレブ、シニアエクゼクティブまで多数の富裕層が、資産運用に民間の銀行を利用する代わりにファミリーオフィスを設立している。
世界中に1万社あるというシングル(一家族が運営する)・ファミリーオフィスの50分の1は、インドの富裕層が設立したものだ。クレディスイスの調査からは、インドの総資産の2割をファミリーオフィスを通して運用されていることも分かっている。
文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
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