2019年、上場企業における早期・希望退職者の募集が1万人を超えた。2018年の約3倍、過去5年間で最多である。ここまで多くなると、早期・希望退職者の募集はもはや「対岸の火事」ではない。自分の勤務先で早期・希望退職者の募集が行われたら、どうするべきだろうか。
電気機器業界は要注意? 2019年の早期・希望退職者の募集は1万人以上
民間の企業信用調査会社である東京商工リサーチは1月、「2019年(1-12月) 上場企業『早期・希望退職』実施状況」を発表した。それによると、2019年に早期・希望退職者を募集した上場企業の数は、公表されているだけでのべ36社、募集人数は計1万1,351人だ。
2018年は、早期・希望退職者の募集を実施した社数・人数は12社、4,126人と過去20年で最少だったため、沈静化したと思われていた。しかし、2019年の結果を見ると状況が好転しているとは言い難い。
どのような業種で早期・希望退職者の募集が多かったのか。東京商工リサーチの発表内容を見てよう。企業別にみるとトップ3は以下のとおりだ。
1位、富士通(2,850人)
2位、ルネサスエレクトロニクス(約1,500人)
3位、東芝(1,410人)
電気機器業界の企業が36社中12社と、最も多い。
2020年以降に募集を実施する企業も、すでに9社に上っているようだ。リーマンショックの影響を受けた2009年ほどではないものの、早期・希望退職者の募集を行う企業がまた徐々に増え始めていることを感じさせる。
早期退職や希望退職にもメリットはあるのか?
早期退職や希望退職というと聞こえは良いが、実際にはリストラの前哨戦とも言える。もし自分の会社で募集が開始されたら、リストラほどの強制力はないものの、応募するかどうか、決断を迫られることになる。
早期退職や希望退職の募集を悲観的にとらえる人もいるかもしれない。しかし、早期退職や希望退職の募集に際して退職金が優遇されたり、失業保険をすぐに受け取れたり、その給付期間が長かったりするという「メリット」もある。前向きにとらえるのであれば、転職や起業のきっかけと考えることもできるだろう。
企業によっては、良い転職先を積極的に探してくれるところもある。現在勤めている企業の将来性や自分のキャリアプランなどを考慮し、どうするべきか慎重に考えたい。
募集に応募するにあたっては、納得感が必須
早期退職や希望退職の募集に手を挙げるなら、その後の計画や準備をしっかりとしてからが望ましい。場合によっては、社宅などから引っ越す必要があるだろう。その後の転職活動がうまくいかないケースも考えられる。
希望退職者の募集が行われている間に、転職エージェントなどに相談するのもいいだろう。転職先としてどのような会社が考えられるか、その会社に転職できる可能性はどれくらいなのかは知っておきたいところだ。場合によっては、転職先が決まった後で募集に手を挙げても良い。
早期退職や希望退職の募集は、自分のライフプランやキャリアプランを改めて見直す良い機会でもある。会社に残る場合に想定される将来と転職を選んだ場合に考えられる将来を比較し、納得できる決断をしたいところだ。自分が納得しているかどうかは、その後の仕事に対するモチベーションに大きく影響するからだ。
「チャンスになるかも」と一考も
早期・希望退職者を募集している企業が2019年は増えたものの、日本はいま深刻な人手不足であるのも事実だ。人材採用に積極的な企業も少なくない。そのためあなたの会社でいざ募集が開始されたときにはこうした状況をネガティブに考えるだけではなく、「チャンスになるかも」とも一考してみてはいかがだろうか。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
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