2019年12月、コンビニの店舗数が前年末比で初の減少に転じた。現在コンビニ業界は、人手不足による労働力不足や最低賃金引き上げによる人件費増加などに苦しんでいる。新規出店に成長を委ねていた従来の手法は、今後は通用しなくなるだろう。今後の成長戦略の鍵は、一体何だろうか?

計測開始以来初めての店舗数減少

都市部に住んでいる人は実感がないかもしれないが、日本全体で見るとコンビニは減り始めている。「日本フランチャイズチェーン協会」(JFA)が発表した、2019年12月度の「JFAコンビニエンスストア(CVS)統計調査月報」によると、2019年12月末のコンビニの店舗数は2018年12月末から123店舗(0.2%)減って、5万5,620店舗になった。

前年末比での減少は、2005年に現在の方法で統計調査を開始して以来、初めてだ。

この調査では、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、セイコーマート、ポプラ、デイリーヤマザキなど主要7社の店舗数を集計。なお、「前月比」での減少は4ヵ月連続だ。すでに減少に歯止めがかからない状況になっていることがわかる。

コンビニ業界を苦しめる労働力不足、人件費高騰、24時間営業に対する非難

コンビニ店舗数の減少は、コンビニ業界を取り巻く状況が厳しさを増していることを表している。

少子高齢化の進行によってすでに顕在化している労働力不足は、今後さらに深刻になるだろう。労働力が不足するということは、アルバイトスタッフを確保するために時給が引き上げられることで、人件費が増えることを意味している。昨年10月には最低賃金が引き上げられ、東京では985円から1,013円になった。

わずか28円の増加だが、24時間営業のコンビニを合計12人、朝昼晩の3シフト制で回すとすると、1日あたり2,688円、1年では100万円近いコスト増になる。

労働力不足や人件費高騰に加えて無視できないのが、フランチャイズオーナーの労働環境に対する批判の声が多いことだ。特に、24時間営業に対する風当たりは強い。すでに時短営業を開始している店舗を見かけたことがある人もいるだろう。この状況は、今後さらに広がっていくだろう。

人件費などのコストが上昇する一方で、時短営業によって売上は下がる。このような状況の中、コンビニ各社が拡大路線を続けていくことは難しいだろう。では、コンビニ各社はどのように経営戦略を転換すれば、今後も成長することができるのだろうか。

商品のパーソナライズとセルフレジで収益力アップ

考えられるのは、売上アップまたはコストカットによって、1店舗あたりの収益力を高めていくことだ。「1時間あたりの利益を高める」とも言える。

売上アップのための取り組みとしては、出店地域に寄り添った商品ラインナップなどが考えられるだろう。そのためには、地域ごとの顧客ニーズを分析する必要がある。

コストカットに関しては、商品配送の最適化・効率化などが求められるほか、「Amazon GO(アマゾン・ゴー)」のようなセルフレジ店舗を増やしていく必要もあるだろう。すでに国内でも一部コンビニではセルフレジが導入されており、このような取り組みによる人件費削減が急務となっている。

今後は新興国市場を重視する視点も必要

前年末比で初の減少に転じたコンビニ店舗数。成長を維持するためには、少子高齢化が進む日本に固執せず、成長著しい新興国での店舗展開に注力すべきかもしれない。日本では、労働力不足と最低賃金引き上げによって、拡大戦略を取ることが難しくなっている。この2点を回避できる地域であれば、従来の拡大戦略で売上を伸ばすことができるだろう。収益力の向上とともに、このようなことが検討されるようになるだろう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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