投資の王道として知られている「ドルコスト平均法」ですが、メリットだけでなく、デメリットもあると言われます。背景を知っておくことで、投資の実力を一歩引き上げることにつながります。今回はドルコスト平均法のメリットとデメリットを踏み込んで紹介します。

「安い時に買って高い時に売る」のが、なかなか難しい金融投資

投資を始めるとき、株式、債券、為替など価格が変動する金融商品を選択します。金融商品は単純に言えば「安い時に買って高い時に売る」のが最も望ましいわけですが、将来の投資環境を完全に当てることはできないため、なかなかに難しいところです。

逆に、価格が高い時に「もっと上がるかも」と株式や外貨商品をたくさん購入してしまい、価格が下落した時には怖くなって売ってしまうことで、大きな損失を被るといったケースも考えられます。

こういった価格変動型の金融商品の持つリスクの軽減を期待して、投資の際に使われるのがドルコスト平均法です。

ドルコスト平均法とは何か

ドルコスト平均法とは、株式や外貨建て商品など価格が変動する金融商品を1つのタイミングで購入するのではなく、一定額に分け時間を分散して購入していく方法です。具体的には、積立型の投資信託を購入して、毎月一定額を購入する方法などがあります。

毎月一定額の積立型投資信託を購入するため、投資信託の価格が高い月は、価格が安い月に比べて少ない口数の投資信託しか買えませんが、安い時はたくさんの口数を買えることになります。自分の意思で判断するのではなく、自動で購入口数が調節されるわけです。ドルコスト平均法を採用することで、長期間で見れば、買付単価は平準化していくことになります。

そのため、ドルコスト平均法は、積立投資に向いている方法と言えます。投資家が自身の投資に用いるほか、社員持株会、確定拠出年金などさまざまな場面で、ドルコスト平均法が用いられています。

分散投資と時間を使うことによる投資メリット

価格が変動する金融商品にはリスクがつきものであるため、いかにリスクを軽減するかがポイントになってきます。リスク軽減の解決策として採用されることが多いドルコスト平均法のメリットは大きく分けて、投資タイミングの分散と長期投資による資産形成の2つです。

・投資タイミングの分散

ドルコスト平均法は、時間を分散して一定額に分けて購入していく方法ですので、投資のタイミングを分散できます。長期投資の手法として考えた場合、対象となる金融商品の価格が短期的に上昇局面であるか、下降局面であるかという点を深刻に悩まずにスタートできるため、心理的にも安心できることもメリットです。

・長期投資による資産形成

ドルコスト平均法は長期投資に向いています。投資の目的が、長期投資による資産形成の場合は大きなメリットが期待できます。高値つかみのリスクを相対的に抑えられるため、毎日の価格変動に振り回され、泣き笑いしなくて済むのです。

ドルコスト平均法を使うべきでないといわれるデメリット

価格変動型の金融商品のもつリスクを軽減することを期待して、投資の際に使われるのがドルコスト平均法ですが、注意したいデメリットもいくつかあります。どんな投資方法にもいえることですが、損失を防止できる投資方法はないことを認識しておかなければなりません。

・投資の機会を逃す可能性

投資資金が十分にあるのにドルコスト平均法を採用してしまうと、投資本来の目的であるリターンを得る機会を逃してしまう可能性があります。

・コストがかかる

価格変動型の金融商品の売買に手数料がかかるケースでは、ドルコスト平均法を採用することで、売買の回数が増え、売買手数料が多くかかることになります。

・投資対象が集中するリスク

リスクの軽減策は投資のタイミングの分散だけではありません。ドルコスト平均法では同一金融商品を長期間にわたり購入することを前提にしているため、商品の分散という意味でのリスクをはらんでいると言えるでしょう。

リスク分散の方法には、投資対象となる国や地域、株式、債券などの金融商品の種類、円やドルなどの為替など、複数の方法があります。時間の分散という方法のみを採用するのでは、リスクを分散しきれないのは理屈上も明らかです。

・サンクコストにより判断を間違う可能性

投資額に対する効果を考えて投資するわけですが、思うような効果を生み出さないこともあります。投資効果が上がっている投資は継続し、そうでない投資は止めることも検討する必要があります。このときに、正しい判断を鈍らせてしまう要因にサンクコストがあります。

サンクコストとは、すでに起こってしまった、取り返すことが不可能な損失のことを指します。簡単に言えば「いままで投資してきたのだからもったいない」という思いです。

投資では常に、その時点での価格がすべてです。ずっと以前から持っていたとしても、株価が100円なら100円の価値しかありません。

つまり、10年後に70円に値下がりした場合にも70円の価値であることは変わりません。それであれば、70円で損切り(売却)して、そこから値上がりしそうな商品に乗り換えた方が合理的であるケースがあります。しかし、「10年も持っていたのだからもったいない」という心理が働き、なかなかそれができなくなるのです。その10年の保有を指してサンクコストというわけです。

ドルコスト平均法においても、すでに起こってしまった損失と、現時点で考えるこれからの投資判断は切り離して考えるべきなのです。