世界各国の10カ所にホテルを構えるザ・ペニンシュラホテルズ。2007年にオープンしたのが、今回訪れたザ・ペニンシュラ東京です。皇居外苑、日比谷公園の緑を臨む好立地で、国内外から訪れる宿泊者をもてなしています。
2019年2月には、米国の「フォーブス・トラベルガイド2019」のホテル部門で4年連続、スパ部門では5年連続で5つ星評価を獲得しているザ・ペニンシュラ東京。高評価を得ている理由や隠されたこだわりについて、ブランドパートナーシップ&コミュニケーション部長の佐野知夏さんにお話しをうかがいました。
佐野さんが考える4年連続5つ星獲得の理由
──わあ、展望が最高ですね。
佐野:ありがとうございます。高層階のお部屋をご用意いたしました。
──ザ・ペニンシュラ東京の客室は何室あるのでしょうか。
佐野:全314室です。なお、そのうちスイートルームは47室ございます。
──皇居外苑や日比谷公園の緑が見え、東京スカイツリーも臨めます。
佐野:ザ・ペニンシュラホテルズのこだわりのひとつが、立地なんです。現在世界各国の10都市でホテルを運営していますが、どのホテルもその国の金融と観光の中心地で一番立地のいい場所を選んでいるんです。
適した土地がなければ、何年でも待つのがペニンシュラ流。実際に、ザ・ペニンシュラ東京も見合った土地がなかなか見つからず、計画からオープンまでに長い時間をかけました。オープンは2007年ですが、東京での開業計画を立て始めたのは20年前なんです。
──オープン時期を優先させ、土地を妥協しようといったことがないんですね。
佐野:はい。ロンドンではバッキンガム宮殿、パリでは凱旋門と、どこも「ここだ!」という土地が空くまで待って開業しています。一等地に建てることが、最終的にお客様の利便性に繋がると考えてのこだわりです。
──今年、ホテルとしては4年連続、スパでは5年連続の「フォーブス・トラベルガイド2019」の5つ星評価獲得となりました。また、世界のホテルグループで初めて、グループホテルのすべてが5つ星評価を受けたとうかがっています。なぜこうした快挙を成し遂げられたのだと考えられますか?
佐野:ザ・ペニンシュラホテルズは、どのホテルでも非常に細かいところまでこだわっておもてなしを行っています。10都市にあるどのホテルに泊まっても、変わらない質のおもてなしを受けていただけるよう、接客品質の均一化を重要視しているんです。その質が変わらないからこそ、10都市あるホテルすべてが5つ星評価をいただけたのではないでしょうか。一方で、グループ全体で10しかない規模だからこそ、全ホテルが5つ星評価を獲得できたといえるかもしれません。
──調査は覆面で行われるのでしょうか。
佐野:はい。予約のからチェックアウトに至るまで、通常のお客様のようにしてご宿泊されます。調査員に関しては、国籍すらホテル側には明かされていません。チェック項目は500以上あるのだそうですよ。
──500……! かなり細かいところまでチェックされているのですね。
佐野:だからこそ、5つ星評価をいただけたということは、細かい点にきちんと気を配ることができている表れなのだとありがたく思っています。
わずかな角度、高さまで吟味。客室に施されたこだわりの数々
──先ほどから細かい点にこだわりを持っているとおっしゃられていますが、具体的にどのような点に細かさが表れているのでしょうか。
佐野:まずは、室内ですね。
──インテリアということでしょうか。
佐野:インテリアも含まれます。ザ・ペニンシュラホテルズでは、新たにホテルを建てる際、客室を丸々、本社のある香港に作るんですよ。
──丸々ですか。モデルハウスのように?
佐野:はい。香港のとある場所に客室を丸ごと作ります。内装だけではなく、ガスや水道も引いて、本当に人が暮らせる状態のものを丸ごと作るんです。そこで、ソファに座ったときのテレビ画面の高さ、ベッドからの高さ、今目の前にあるテーブルの角の角度に至るまでを、入念にチェックします。図面上ではわからない違和感や不便さを、実際に体感することで見つけるためなんです。
──チェックの結果、「この高さはちょっと違うな」と感じたときは……?
佐野:調整し、再度チェックを行います。チェックでOKになり、初めて実際のホテルが作られるんです。
──1棟ホテルを建てるのに、かなりの予算と手間がかかりますね。
佐野:そうですね。丸ごと1室チェック用に作ってしまうのは、ザ・ペニンシュラホテルズだけではないかと思います。エリアや建築、接客に至るまで、とにかくこだわりが強いため、なかなかおいそれとホテル数を増やせないという側面もあるといえます。
──質を担保するために管理できるペースでしか増やせないということですね。
佐野:そうです。また、開業したあとは短期スパンで定期的にリフレッシュメントを行っているのも、ザ・ペニンシュラホテルズの特徴ですね。
──リフレッシュメントとは、何をするものでしょうか。
佐野:どうしても日々お客様が過ごされていると、経年劣化が見られてくるものです。その部分を、短期スパンで変えていくようにしているんです。この部屋では、カーペットが新しいものに変えられていますね。少しずつ新しいものに変えていくことで、常にお客様にきちんとした状態のお部屋を提供できることにつながります。また、一気に大きなリノベーションをせずに済むというメリットがあるんです。。
──なるほど……。
佐野:あとは、独自開発した製品が活躍していますよ。
──どのようなものですか?
佐野:たとえば、カーテンや照明、テレビのリモコン類もオリジナル製品です。ベッドにいながらにしてすべての操作をベッドサイド・コントロールパネルを通して行っていただけます。。カーテンは遮光性のものとそうではないものとの2種類を用意し、使い分けができるようになっているのもこだわりですね。また、ベッドサイドの照明は、消えるときに徐々に暗くなっていくように設定されています。これは、質の良い睡眠を誘うために採用されている機能です。
──本当に細かいですね。
佐野:また、実際に利用するシーンがなければ気づかないのが、テレビの音声自動オフ機能です。テレビを見ているときに電話を取ると、自動でテレビ音声がオフになるんです。仕事相手からの電話であっても、うっかり音声が入り込むことなく安心です。
──配慮がとにかく細かい点まで行き届いているんですね……!
佐野:独自開発品は、スタッフの連携にも役立っています。スタッフは全員専用アプリが入っているスマートフォンを持っていまして、ひとりのお客様に関わるスタッフ全員に、何かがあると通知が即届くようになっているんです。
例えば、お客様がレストランで食事を終えたタイミングで関係スタッフに知らせがいきます。また、プライバシーボタンが点灯しているときには、「今はお部屋にうかがわないように」といった指示が飛ぶのです。
昔ながらのホテルでは、ドアノブに「起こさないでください」「ゆっくりしています」といった札をかけてスタッフに知らせますが、それを自動で行えるということですね。
──すごい……宿泊者とスタッフが鉢合わせてしまったり、タイミングの悪いときに届け物をしに行ってしまったりといったことが防げるんですね。
佐野:一般宿泊者の方はもちろん、VIPの方になると、事前に共有しておくべき事項が増えます。スタッフ同士、対面でも毎日情報共有を行っているのですが、それ以外の時間にはアプリを活用してリアルタイムでの情報共有を徹底しているんです。ホテルには多くの部署があり、部署間での情報共有には難しさがあります。アプリ導入後は格段に楽に、また正確な情報のやり取りができるようになったと感じています。
──ホテルには多様な仕事があるかと思いますが、ザ・ペニンシュラ東京ならではの職種はありますか?
佐野:特徴的なのは、正面玄関にいる白い制服のスタッフでしょうか。ページガール、ページボーイと呼ばれるポジションで、お客様のお出迎え、お見送りという最初と最後に関わる仕事を担っています。アジアでページを取り入れたのがザ・ペニンシュラ香港なんですよ。
──今日、入口できょろきょろしていたときに声をかけていただきました。
佐野:お客様のご案内や荷物のアシストなど、幅広い仕事を担う立場なんです。あと、当ホテルならではの仕事には、車を管理するフリートマネージャーがありますね。
──ホテル所有の車の管理でしょうか。
佐野:はい。ザ・ペニンシュラホテルズの車は、すべてペニンシュラグリーンと呼ばれる緑色に塗装されたものを揃えています。車種はロールスロイスやミニクーパー、テスラなどですね。
東京には、世界に数台しかない1934年製ロールス・ロイス・ファントムⅡがあるんですよ。ウェディングの際、新郎新婦さんが皇居周辺をドライブしたり、写真撮影を行ったりしています。ヴィンテージ車の運転は技術や修理に関する知識も必要となるため、香港で研修を受けた人のみが担当している点もこだわりです。そして、これらの車のメンテナンスや空き状況をすべて管理しているのが、フリートマネージャーなんです。
客室でのリラックスタイムを支える設備・機能
──先ほどの例でお話いただいたテレビ音声の自動オフのように、宿泊者にとって便利な室内装備や機能は他にもありますか?
佐野:スーツケースを開いたまま置いておける専用スペースは、細かいポイントですが非常に便利だと思います。腰あたりの高さなので、荷物の出し入れもしやすくなっています。また、脇にはクリーニングや靴磨きをお部屋にいながら受け渡しを行えるバレットボックスもあります。ボタンひとつで頼めて、ランプひとつで完了がわかる仕組みです。
あとは、姿見の三面鏡ですね。開いて角度をつけることで、正面の鏡と合わせて三面鏡として使えるものです。こちらも、開いてみて初めて気づいていただけるものかなと思います。
──何も知らないとただの姿見かなと思ってしまいますね。まさか開いて三面鏡になるとは思いませんでした。
佐野:お風呂では、ライトアップやBGMが流れる機能のほか、ネイルドライヤーが女性に人気です。これは、あるペニンシュラのエレベーターにテクノロジーの開発担当者が乗りこんだとき、同乗していた着飾ったご夫婦を見ていて得た気づきが開発のきっかけなんです。奥様が両手をひらひらとされていた姿を見て、「これは」と思ったことから、アイディアが生まれました。
──もしかして、ネイルを乾かされていた……?
佐野:その通りです。せっかくドレスアップしているお客様に、エレガントでないしぐさをさせたくはない。その想いから、せめて速く乾かす助けになるようにと開発され、ザ・ペニンシュラ東京開業から備え付けられました。東京は設置型ですが、その後さらに便利になり、その後付けられたホテルでは持ち運べるタイプにバージョンアップしているんですよ。
──これらの便利な機能や設備のなかには、スイートルームだけのものもあるのでしょうか。
佐野:いえ、全室共通です。スイートルームと一般客室との違いは、ベッドルームとリビングルームのスペースが分かれているかどうかだけで、設備面に違いはないんです。
──ホテルといえば、ルームサービスなどお部屋で楽しむ飲食も楽しみのひとつかと思います。ザ・ペニンシュラ東京のルームサービスについてお聞かせください。
佐野:1番オーダーされるのは、やはり朝食ですね。朝食以外のアラカルトメニューで、現在断トツで人気を誇るのは、一風堂さんとコラボして2019年7月から提供を始めたザ・ペニンシュラ東京 “マイラーメン” by一風堂です。
──一流高級ホテルでラーメンですか。
佐野:ザ・ペニンシュラ東京には海外からの宿泊客の方が多くいらっしゃることもあり、コンシェルジュへのご要望やお問い合わせで多いのが寿司とラーメンなんですよ。そこで、ラーメンの提供ができれば喜んでいただけるのではないかと思ったんです。
せっかく提供するのであれば、一流のラーメン店とコラボレーションしたい。そこで名前が挙がったのが、海外展開も行っているトップブランド、一風堂さんでした。特徴は、スープをお客様の目の前で器に入れて熱々の状態でお出しすることと、12種類のオリジナルトッピングです。こちらがイメージイラストですね。
──イメージしていたラーメンではないですね。ホテルに似合う品の良さが感じられます。
佐野:トッピングはそのままでも食べていただけるので、お客様のなかにはお酒のつまみとして召し上がり、締めにラーメンを食べられる方もいらっしゃるようです。チャーシューの代わりに当ホテル2階にある中国料理レストラン「ヘイフンテラス」特製のBBQポークを使用している点も、当ホテルのラーメンならではですね。提供開始後、1ヵ月に1度は一風堂さんによるチェックも受けています。
ザ・ペニンシュラ東京住所:東京都千代田区有楽町1-8-1
電話番号:03-6270-2888
HP:https://www.peninsula.com/ja/tokyo/5-star-luxury-hotel-ginza
文・J PRIME編集部/提供元・J PRIME
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