新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、世界の株式、債券市場にも大きな影響を与えています。投資対象となる商品にも変化が訪れつつあり、その1つとして、新型コロナウイルス感染症対策にも資金使途を広げている「ESG債」への注目度が高まっています。

ESGへの機運が高まってきた背景

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス=企業統治)」の3つの頭文字をとった略語です。それぞれがもつ課題を解決することで、ブランド力の向上や事業や市場の持続成長を可能とするとされています。

ESGがターゲットにするのは現代的な課題です。「環境」では、二酸化炭素排出量の削減や再生エネルギーの利用、「社会」ではサプライチェーンにおける人権問題への配慮や個人情報の保護・管理、「ガバナンス」では納税の適正化や贈収賄といった汚職の防止など、現代社会ならではの課題であり、E、S、Gそれぞれに解決を強く求められています。こういった世界的な社会課題の取り組みへの意識が高まっていることで、ESGへの注目度が上がっているのです。

ときを同じくして、新型コロナウイルス感染症による世界規模のパンデミックが発生しました。環境汚染や労働問題など、山積する社会課題と真摯に向き合わなければ、企業の未来どころか、人類の未来も危ういという地球からの警鐘と考える人もいます。

注目が高まる「ESG債」とは

これまでの投資は、企業の「売上高」や「利益」などの実績が重視されていましたが、最近になり「環境・社会・企業統治」への取り組みが重視されています。

環境・社会・企業統治の分野において、ひと足早く動いたのは株式市場です。たとえば、スターバックスコーヒーやすかいらーくグループは、プラスチック製ストローを廃止すると発表したことで、ESGをテーマにした資金が流入し、株価が上昇しました。

続いて、債券市場にも資金が流入する流れが生まれています。ESG債とはグリーンボンドをはじめとした環境や社会、ガバナンスに関連する債券を指します。環境事業や社会貢献事業に資金使途を絞る債券「ESG債」の発行がいま急増しており、世界累計で1兆ドル(約100兆円)規模に迫っているといいます。実に債券市場全体の1%にあたるのです。

日本では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、それまで株式だけとしていたESG投資の対象を、債券を含めた運用資産全体に広げたことにより規模を拡大させました。