吉祥寺駅から徒歩5分ほど歩いた裏路地に佇む居酒屋『もも吉』。丸ごと一本をかぶりつく「骨付き鶏もも焼き」と、新鮮な生野菜を使った「野菜刺し盛り」が看板で、連日大賑わいの繁盛店だ。
運営会社である有限会社グッドファットの代表・岡村良太氏は、人気居酒屋を複数展開している株式会社ベイシックスで修業し、2004年に居酒屋『ガチャガチ屋』で独立。現在は『もも吉』のほか、『ワラガモ』『ひな酉 ふじ乃』『ユーカリ食堂』と、様々な業態を展開している。競合ひしめく吉祥寺・三鷹界隈で着実に繁盛店を生み出す岡村氏。その店づくりの極意を聞いた。
『てやん亭"』が生み出すエネルギーに魅了された学生時代
取材時は営業時間前だったが、仕込みをしているスタッフは皆、生き生きとしていて明るい雰囲気。営業が始まれば、さらに活気に満ちた店内になることが目に浮かぶ。ズバリ、繁盛店の秘訣を岡村氏に尋ねてみると、「繁盛店の空気を作ることで、繁盛店は作られていく」という答えが返ってきた。その真意は、岡村氏が飲食の道を志したきっかけに由来する。
大学時代、ベイシックスの『てやん亭" 西荻窪店』に通い詰めていた岡村氏。飲みに行けば、いつも満席で賑わっていたという。
「店員さんは生き生きと接客してくれるし、そのおかげで自分も楽しい。さらに、その店員さんに接客されたほかのお客さんも楽しくなる。それらが連鎖して、店全体が繁盛店独特のエネルギーを発していたんです」
スタッフの店づくりに対するモチベーションと姿勢に感銘を受けた岡村氏は、その後、本格的に飲食の道に進むことを決意。『旬鮮酒場天狗』など、複数業態を展開するテンアライド株式会社に就職して1年半働いたのち、憧れのベイシックスで修行を積むことになる。毎晩、営業後に同僚と飲み屋で反省会を開いたり、時には意見をぶつけ合ったりしながら「本当に客が喜ぶ店とは何なのか」を模索し、工夫を重ねた5年間だった。
修業の成果を結果で示した独立一店舗目
「一店舗目の『ガチャガチ屋』を開く時は、ベイシックスで学んだことを活かし、お客さんが喜ぶ瞬間を重ねていけば絶対に繁盛するという自信がありました」と岡村氏は語る。当時は珍しかったお通しのカット、締めの一品で出していた自家製の手打ちうどん、そして会計時に行っていたガチャガチャを客に引いてもらうサービスなど、斬新なアプローチで客数を増やし、オープンから半年足らずで坪月商30万円の繁盛店に。その後も勢いは衰えることがなく、まさに「繁盛店の空気を作ることで、繁盛店が作られていく」ことを体現した形となった。
想定外が重なった『もも吉』開店直後の苦難
『ガチャガチ屋』が軌道に乗り、別業態の出店を考え始めた岡村氏は、出張で訪れた香川で出合った骨付き鶏を東京で展開しようと決めた。「女性が立ち飲みで骨付き鶏にかぶりつくような店を作りたかったんです」と岡村氏。当時は骨付き鶏を出す店が東京にはなく、また、本場の香川でも居酒屋スタイルで出している店はなかったため、勝算を感じていた。
店内は入口を入ってすぐにオープンキッチン仕様の立ち飲みカウンター、奥には掘りごたつの座敷を設えた独特な間取り。立ち飲みと着席、両方の客層を取り込む狙いとともに、立ち飲みで賑わっている様子を外に見せることで、繁盛店の空気を発信。さらに、そこに女性がいれば、男性客の呼び水にもなるだろうと考えたが、開店してみると思惑通りに事は運ばなかった。
岡村氏は「立ってくれない、かぶりついてくれない。この二つが大きな問題でした」と、当時を振り返る。当初、立ち飲みカウンターを座敷が埋まっている時のウェイティングにする算段もあったのだが、座敷が埋まっている状況でカウンターを勧めても退店されることが多かった。また、看板の骨付き鶏もも焼きは、ひとり一本の注文を想定していたものの、ふたりで一本をシェアする客がほとんどで、さらにカットした状態での提供を求められた。「出来立てのアツアツにかぶりつくことでビールが進むはずだったのですが、カットするとただの冷めた鶏肉になってしまって、酒も箸も進まないんです」と、岡村氏は語る。
出鼻をくじかれた形になったが、そこで岡村氏は、時間をかけて空気づくりをすることに力を注いだ。
「まずは、スタッフ全員がお客さんが喜ぶことを考えながら楽しく働く。加えて、ほかの繁盛店をスタッフとともに巡り、感じたことを自店舗で取り入れ、試行錯誤を繰り返しました。骨付き鶏もも焼きに関しては、ひたすらお客さんに本当の味わい方を伝え続けていきました。これは、時間がかかって、3年目ぐらいになってようやくひとり一本ずつ注文をしてくれるようになりましたね」
開店当時は来客数の2~3割ほどしか注文がなかった骨付き鶏もも焼きは、現在では来客数の7~8割ほど、本数にすると70~80本ほど出る日もある。「今は、常連さんが初見のお客さんに食べ方を伝えてくれるようになりました」と、岡村氏は笑う。
繁盛への近道は、試行錯誤を積み重ねること
そんな岡村氏は「繁盛店の空気を作るのに、方程式は無い」と語る。
「“お客さんが喜んでくれるにはどうすればいい?”と投げかけて、そして働いているスタッフが考える。それを繰り返し、ブラッシュアップしたものがその店の空気になるのだと思います。“これをやったから正解”という答えはない。時間をかけて、お客さんが喜んでくれる瞬間を積み重ねていけば、繁盛店の空気は作られていくはずです」
『ワラガモ』『ひな酉 ふじ乃』などの姉妹店に関しても、繁盛するまではとことん試行錯誤を繰り返してきた岡村氏。今後は海外への出店も考えており、さらに活躍の場を広げそうだ。
岡村良太(おかむら・りょうた)
1974年生まれ、東京都出身。有限会社グッドファット代表取締役。2004年1月に独立第一号店『ガチャガチ屋』を開店。その後、2007年4月に『もも吉』、2010年11月に『うどん食堂 とらたま』(2018年1月に『ひな酉 ふじ乃』に業態変更)、2015年10月に『ワラガモ』、2019年10月に『ユーカリ食堂』を開店・運営をしている。
『もも吉』
住所/東京都武蔵野市吉祥寺本町1-34-3
電話番号/0422-20-0345
営業時間/17:00~L.O.23:30
定休日/無休
席数/約50
http://www.goodfat.jp/momo/
文・高橋健太/提供元・Foodist Media
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