かつて主流だった、写真を写真屋さんで現像してもらう、というシステム。そんな写真文化、中でも富士フイルムが作った店舗什器や販促グッズをみんなで楽しもう!というイベントが都内のライブハウスで開かれ、その様子を見に行ってきました。
このイベントを主催したのは、富士フイルムが好きすぎて「富士フイルムになりたい!」という大の富士フイルムファン、tsubakiさん。富士フイルム愛が高じて、フジカラーのフィルムをモチーフにしたマフラーを作ってしまったという方です。ファンシー絵みやげ研究家の山下メロさんをゲストに迎え、イベントはスタート。
今回のイベントのきっかけとなったのは、富士フイルム製シネレンズ(ムービーカメラ用レンズ)を使った作例写真の同人誌を現在制作しているtsubakiさんが、完成した同人誌を即売会で頒布する際に「写真屋さんが使ってる富士フイルムの袋に入れたら面白いよね」と思いついたこと。早速フリマアプリやネットオークションで探して入手したのですが、その時とある出品者さんが「そんなに富士フイルムが好きなら、手元にある富士フイルムグッズを段ボール箱にまとめてお譲りしましょうか?」と提案してくれたんだそう。
渡りに船とばかりに「お願いします!」と購入したtsubakiさん。せっかくだから、どんなものが入っているか「開封の儀」を、富士フイルムが好きな人たちと一緒にワイワイできたら……ということで、1934年に大日本セルロイド(現:ダイセル。1919年創立)から富士フイルムが分離独立した創立記念日(1月20日)を翌日に控えた1月19日、tsubakiさん旧知のライブハウスである東京・高円寺の「高円寺Pundit’」で開催が決まったのでした。
送られてきた箱からして、富士フイルムが写真屋さんに納品する商品の段ボール箱が2つ。開いてみると……ぎっしりと詰め込まれた富士フイルムの販促(ノベルティ)グッズ。取り出してテーブルの上に並べていきます。
ざっと見たところ、1970年代から1980年代に作られたグッズが主力のようです。この当時は家族の記念写真や、子供の写真を撮って現像に出す人が多かったせいか、子供が喜びそうなキャラクターものが多いですね。
中でも東京ディズニーランドと東京ディズニーシーのオフィシャルスポンサーを務めている関係で、ディズニーのものが多く、ほかにサンリオとテレビアニメのものが目立ちます。ディズニーでは、手書き風書体で1940年~1986年の旧社名「Walt Disney Productions」が書かれているミッキーとドナルドの缶バッジもありました。
サンリオでは「けろけろけろっぴ」など、1980年代に人気だったキャラクターが主体。この当時、キティちゃんは人気が下火になっていたこともあり、見当たりませんでした。一見スポーツをしているキティちゃんに見えるキャラクターは、モスクワオリンピックに合わせてデビューした、江村信一さんデザインの「キャプテンジム」というもの。1988年ソウルオリンピックの頃まで、サンリオのオリンピック関連キャラクターとしてグッズが出ています。
1975年に作られた、プラスチック製の持ち手がつけられたボール紙のうちわは、かなりの数が入っていました。アニメでは「ゲッターロボG(放送:1975年5月~1976年3月)」、特撮では「仮面ライダーストロンガー(放送:1975年4月~12月)」。裏面には1974年発売の「フジカラーF-II」商品名が。
珍しいところでは、フジカラーF-IIのウエットスーツを着た山口百恵さんのミニうちわ。何故ウエットスーツ姿かというと、1975年4月に公開された主演映画「潮騒」で、百恵さんが海女の宮田初江を演じていたからです。
販促グッズの定番、ポケットティッシュもたくさん入っていました。「美しいひとはより美しく、そうでない方は……それなりに」の人気CMに写真店員役で出演していた、岸本加世子さんの姿も。樹木希林さんはお客さんの役だったので、グッズ化されていないのでしょうか。
富士フイルムは、かつてメジャーリーグ(MLB)の公式記録フィルムとなっていました。その関連でメジャーリーグのグッズも。1980年代(ティッシュに写っている飛行船スカイシップ500は1984年~1990年に飛行)ですから、野茂投手が2人目の選手としてメジャーデビューする前。小川邦和投手や江夏豊投手がメジャー昇格を目指して挑戦した頃です。
球団のマークをあしらったグッズの中には、今はなきモントリオール・エクスポス(現:ワシントン・ナショナルズ)のものも。
スポーツではほかに、1985年のユニバーシアード神戸大会(8月24日~9月4日)協賛のグッズも目立ちました。手塚治虫デザインの大会マスコット、タンチョウヅルの「ユニタン」が、様々な競技に挑戦しています。
フジカラーのフィルム箱形ティッシュや、フジカラーのラップなどといった実用品もあります。このあたりは主婦層への訴求力を意識したのでしょうか。
写真店などの顧客を招いた商談会では、様々なノベルティが配られました。メジャー(コンベックス)やドライバー、電話帳など実用品が入っていました。1970年代~1980年代初め頃のものでしょうか。
イベントを主催したtsubakiさんにお話をうかがうと、意外にも富士フイルムファン歴は1年ほどだといいます。しかし、ハマってからの勢いは凄まじく、グッズが雪だるま式に増えてしまったとか。事務所の部屋がどんどんグッズで占領されていっているそうです。さぞやフリマアプリやネットオークションでかかったお金も……と思いきや、キャラクターものでなければ、それほど競り合うこともなく、お手頃な価格で手に入るとか。特に遺品や廃品処分といった感じで出品されていることが多く、値つけもそれほど強気でないことが要因のようです。
このイベントに来場した方からも、新たに商談会で配られたノベルティの「写ルンです」や、現行品の富士フイルムエプロンがプレゼントされました。
フジカラーのマフラーがTwitterで評判を呼び、富士フイルム社員の忘年会にお呼ばれしてしまったというtsubakiさん。「2020年の夢として『富士フイルムの社員さんとお近づきになりたい』というのがあったんですけど、年も明けないうちに叶ってしまって、もうどうしたらいいやら」と苦笑していました。
マフラーも2作目として、黒白フィルム(富士フイルムでは白黒ではなく「黒白」と表現する)の「ネオパン100 ACROS II」をモデルにしたものが完成。さらに新作も編んでいる最中です。
会場には富士フイルムの社歌「富士フイルムの歌」や、1970年代に吉田拓郎さんが歌っていた「Have a Nice Day」のCMソングなどが流れ、富士フイルム一色の空間となったこのイベント。「もっと富士フイルムファンと繋がりたいし、富士フイルムを好きになって欲しい」というtsubakiさんは、反響次第では第2回の開催も考えていると語ってくれました。
取材協力:高円寺Pundit’/富士フイルムが好きすぎるtsubakiさん(@Fujifilmdaisuki)
(取材・撮影:咲村珠樹)
文・咲村珠樹/提供元・おたくま経済新聞
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