松井証券のIPOは抽選申込時に資金用意が不要、完全平等抽選の割合が多いなどの特徴がある。SBI証券や楽天証券などの大手ネット証券と比較したときどのようなメリットがあるのだろうか。松井証券のIPO取扱実績や同社のIPO申込方法なども含め詳しく紹介していこう。

松井証券のIPOの状況 取扱銘柄数は例年10社前後

松井証券は大手ネット証券の1社で、1918年創業と業界では老舗企業だ。業界初のインターネット取引や定額手数料体系「ボックスレート」を導入するなど、常にイノベーティブな施策を打つことを指針として掲げている。

松井証券のIPO取扱銘柄数 年間で10社前後

そんな松井証券だが、IPOの取扱銘柄数はどうだろうか。IPO取扱銘柄数は証券会社によって大きく異なり、同じ証券会社でも年によって差が出ることがある。以下の表に松井証券の過去10年分の取扱銘柄数をまとめた。

<松井証券IPO取扱銘柄数>

対象年 取扱銘柄数
2010年 7社
2011年 14社
2012年 11社
2013年 2社
2014年 5社
2015年 16社
2016年 11社
2017年 14社
2018年 9社
2019年 21社

※公式サイトを元に筆者作成

2009年から2018年まで数に多少の差があるものの、おおむね10社前後の年が多く、それほど多くの銘柄を取り扱っていないことが分かる。例えば、他の大手ネット証券のSBI証券では2018年の取扱銘柄数は88社だ。

ただ2019年は21社とこれまでの2倍程に銘柄数を増やしており、松井証券がIPOの取扱に力を入れ始めているとも取れる。

松井証券のIPO取扱銘柄 東証マザーズ上場企業が多い

続いて2018年、2019年のIPO取扱銘柄を見てみよう。基本的には東証マザーズに上場している銘柄が多い。

<松井証券の2018年IPO取扱銘柄>

銘柄名 公募価格 初値
ベルトラ <7048> 384円 514円
Amazia <4424> 1,320円 1,756円
ソフトバンク <9434> 1,500円 1,463円
アルー <7043> 1,370円 2,010円
霞ヶ関キャピタル <3498> 3,240円 6,240円
MTG <7806> 5,800円 7,050円
ライトアップ <6580> 2,820円 3,725円
ZUU <4387> 1,600円 5,550 円
ラクスル <4384> 1,500円 1,645円

※公式サイトを元に筆者作成

<松井証券の2019年IPO取扱銘柄>

銘柄名 公募価格 初値
スポーツフィールド<7080> 2,730円 8,500円
global bridge HOLDINGS<6557> 2,690円 4,020円
スペースマーケット<4487> 590円 1,306円
SREホールディングス<2980> 2,650円 2,475円
BuySell Technologies<7685> 1,930円 3,720円
ユナイトアンドグロウ<4486> 1,270円 3,205円
フリー<4478> 2,000円 2,500円
ウィルズ<4482> 960円 4,535円
ランサーズ<4484> 730円 842円
ベース<4481> 4,700円 9,050円
名南M&A<7076> 2,000円 2,900円
パワーソリューション<4450> 2,000円 5,110円
Chatwork <4448> 1,600円 1,480円
ギフティ <4449> 1,500円 1,880円
インフォネット <4444> 1,490円 3,430円
ユーピーアール <7065> 3,300円 4,000円
ハウテレビジョン <7064> 1,210円 3,745円
日本ホスピスホールディングス <7061> 1,000円 1,466円
ミンカブ・ジ・インフォノイド <4436> 1,050円 1,400円
リックソフト <4429> 4,000円 9,050円
識学 <7049> 1,800円 4,550円

※公式サイトを元に筆者作成

松井証券のIPO投資3つのメリット 平等抽選、申込時資金不要、プレミアム空売り

前述のとおり取扱銘柄数は他社と比較してそれほど多くはないが、松井証券のIPOには以下の3つのメリットがある。

松井証券IPO投資のメリット1,完全平等抽選が70%以上

松井証券では同社に配分されたIPO株の70%以上が完全平等抽選で配分される。完全平等抽選では1人1票しか配分されない抽選方式のため、投資額に関わらず誰でも平等に当選するチャンスが多いと言えるだろう。

例えば、大手ネット証券のSBI証券では取り扱うIPO株のうち4~5割が抽選に回る。そのうち7割が完全抽選、残りの3割がIPOチャレンジポイントというポイントによる抽選制だ。

完全抽選は1人1票という制限がないため、投入資金が多い人が有利となる。またIPOチャレンジポイントはSBI証券でIPOに参加している回数が多い人ほど多くもらえるため、SBI証券を長期的に使用してIPO投資をしている人に有利な方式となっている。

SBI証券と比較した場合、松井証券のIPO投資はIPO初参加の初心者にはより平等な方式となっている。

松井証券IPO投資のメリット2,抽選申込時に資金が不要

松井証券のIPOでは抽選申込時に資金を入金しておく必要がない。口座に資金が入っていない状態でも申し込めるので気軽に抽選に参加できる。

抽選申込時に資金不要な証券会社は他にライブスター証券や岡三オンライン証券があるが、まだまだ数は多くないと言えるだろう。申込時に資金が必要なのはSBI証券、楽天証券、マネックス証券など、IPO取扱銘柄数の多い大手ネット証券会社だ。

松井証券IPO投資のメリット3,プレミアム空売りで収益拡大を目指せる

空売りとは信用取引の一種で、株価が値下がりする場面でも利益が得られる投資手法だ。証券会社から株式を借りて売り、決済期日までに買い戻して株式を返却することで差額分を利益として得ることができる。

この松井証券のプレミアム空売りとは、通常空売りができない銘柄でもプレミアム空売り料を支払うことでそれが可能になるサービスだ。

一般的にIPO銘柄の初値は公募価格より高くなることが多いが、その後値が下がることもある。通常、IPO直後の銘柄は空売りが出来ないが、同サービスの対象株であればIPOでも空売りできるのが特徴だ。株価が高騰した後下落傾向であれば、そのタイミングを狙って収益の拡大を目指せる。

同様のサービスはSBI証券でも提供されており、「HYPER空売り」と呼ばれている。また楽天証券でも「特別空売り銘柄」に該当していればIPO直後でも空売りできる場合がある。これら以外の証券会社では同様のサービスは基本的に提供されていないため、完全平等抽選でIPO申込時の入金不要の証券会社でIPOの空売りができるのは松井証券のみとなる。

松井証券のIPO申込方法6ステップ 需要申告と購入申込は必須

ここまで松井証券のIPO投資のメリットを紹介してきたが、実際に松井証券でIPOに申し込む場合はどのような手順を踏む必要があるのだろうか。以下に同社でのIPO投資申込手順をまとめた。

ステップ1:銘柄情報の確認

まずは松井証券の公式サイトで「IPO(新規公開株)取扱銘柄」のページへアクセス。申込予定の銘柄情報や抽選の日程を確認する。

ステップ2:需要申告

需要申告期間中に需要申告(ブックビルディング)を行う。このときに資金を口座に用意しておくは必要ない。

ステップ3:抽選結果の確認

抽選後、会員画面に抽選結果が表示される。結果を確認し、当選していれば次のステップへ。

ステップ4:購入申込

購入申込期間中に会員画面から目論見書を確認し、株数を入力して購入申込を行なう。抽選していても購入申込をしなければ購入できないため、忘れないようにしよう。

ステップ5:購入代金の用意

購入申込期間の最終日15時30分までに口座へ購入資金を入金する。「公募・売出し価格×申込数」以上の資金が口座にないと購入できないため入金額には注意したい。

ステップ6:配分結果の確認

配分の結果は、会員サイト内で連絡されるためチェックしておこう。売却の注文は銘柄上場日の前営業日の17:00以降から可能となる。

松井証券でIPOを行う際の注意点 申込時の資金は不要だが購入前には準備を

松井証券では需要申告時の資金拘束は無いが、購入申込期間の最終日15時30分までには資金の準備が必要だ。期限に残高が足りないと購入できないので注意したい。

また複数の証券会社でIPOに申し込む場合は、抽選や資金拘束のタイミングによって同一資金での申し込みができないことがある。同一資金でIPOの申し込みを検討している場合は抽選や資金拘束、資金拘束解除のスケジュールをしっかりと把握し比較しよう。

松井証券のIPOは投資資金が限られ申込時に資金拘束されたくない人向き

松井証券のIPOは70%完全平等抽選、資金不要で申し込めることから、投資資金が限られている投資初心者や申込時に資金拘束されたくない人に向いていると言える。

また、IPOは購入時の手数料は無料だが、売買時に手数料が発生する。松井証券なら売買時の手数料は50万円まで無料のため、なるべくコストを抑えたい投資家にも適している。完全平等抽選を採用し、50万円まで手数料が無料なのは松井証券のみだ。

松井証券のIPOは取扱銘柄数こそ多くないが、申込資金不要で申し込める、プレミアム空売りができるなどのメリットが魅力的だ。IPOに少しでも興味があるなら、同社での口座開設も検討してみてはいかがだろうか。

文・右田創一朗(元証券マンのフリーライター)
 

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