「伊藤忠商事」「三菱商事」「三井物産」「住友商事」は日本を代表する4大商社だ。長年にわたり堅調な業績を残してきたが、現在のコロナ禍においてはどうだろうか。各社が発表した最新の決算資料から、4大商社の業績を探っていこう。

4大商社とは?特徴を紹介

伊藤忠商事と三菱商事、三井物産、住友商事の4社は「総合商社」で、ある領域に特化して事業を行う「専門商社」ではなく、社内にさまざまな事業部門を有している。

だからといって、特徴が同じというわけではない。成り立ちも違えば、得意部門も異なる。伊藤忠商事以外の3社は「財閥系商社」と呼ばれており、戦前の財閥にルーツがあることでも知られる。4社それぞれの特徴を整理しておこう。

伊藤忠商事:1858年創業、繊維商社から総合商社へ

伊藤忠商事は、江戸時代末期の1858年に麻布(あさぬの)卸売業として創業。繊維商社として事業を拡大してきたが、日本の高度経済成長期において重化学製品分野にも参入し、総合商社としての道を歩み始めた。

食料品や金融、情報などの分野にも事業の幅を拡げ、ファミリーマートを1998年に傘下に収めたことでも知られる。

三菱商事:海外での事業活動で大きく成長

1954年設立の三菱商事は、海外での事業活動で大きな成長を遂げた。三菱系企業が貿易系のビジネスを展開していたことが、その理由の一つ。商品取引だけでなく、「開発投資型ビジネス」に注力してきたことも三菱商事の特徴といえるだろう。

事業分野は多岐にわたり、エネルギーや金属、インフラ、金融、化学品、生活産業などがある。

三井物産:日本で初めて海外荷為替業務をスタート

三井物産の創業は1876年。石炭の販売事業に始まり、創業の翌年には海外荷為替業務を開始する。これは日本では初めてのことで、日本企業の海外進出が盛んになる中で、三井物産も業績を大きく伸ばしていった。

都市開発や海外資源開発などに積極的であることでも知られる。

住友商事:土地開発や不動産経営が事業のルーツ

住友商事の創業は1919年。当初は主に土地開発や不動産経営などを手掛け、戦後は貿易関連事業も手掛けるようになった。現在は、金属や化学品、機械などの事業部門が主力となっている。

海外事業では、中南米や中東、アフリカなどの地域で大きな成果を上げている。

4大商社の業績を比較

4大商社の特徴を確認したところで、4社の業績を見てみよう。最新決算として2021年3月期の通期決算(2020年4月〜2021年3月)が出揃っているので、そちらの数字を比較する。

企業名 売上高 営業利益 最終損益
伊藤忠商事 10兆3,626億円 4,034億円 4,014億円
三菱商事 12兆8,845億円 849億円 1,725億円
三井物産 8兆102億円 1,507億円 3,354億円
住友商事 4兆6,450億円 ▲588億円 ▲1,530億円
※各社決算資料より筆者制作

<売上高ランキング>
1位:三菱商事
2位:伊藤忠商事
3位:三井物産
4位:住友商事

<営業利益ランキング>
1位:伊藤忠商事
2位:三井物産
3位:三菱商事
4位:住友商事

<最終損益ランキング>
1位:伊藤忠商事
2位:三井物産
3位:三菱商事
4位:住友商事

伊藤忠商事が、「営業利益」と「最終損益」で2冠を達成した。一方、「売上高」のトップは三菱商事。最も業績が振るわなかったのが住友商事で、営業利益と最終損益ともに赤字に転落している。コロナ禍による海外鉱山の操業停止などが主な要因だ。

ただし黒字を確保した3社も、厳しい状況であることには変わりがない。売上高を前期と比較すると、伊藤忠商事は5.6%減、三菱商事は12.8%減、三井物産は5.6%減と軒並み減少していることがわかる。

赤字に転落した住友商事は12.4%減で、売上の落ち込みだけを見ると黒字を維持している三菱商事のほうが下げ幅は大きい。

アフターコロナの勝者になるためには?

新型コロナウイルスの感染拡大の状況は、国によって大きく異なる。インドでは感染者が大幅に増えており、日本では3回目の緊急事態宣言が発令された。一方、アメリカやヨーロッパではワクチン接種が進み、景気が回復する段階に差しかかっている。

新型コロナウイルスが終息すれば世界経済は回復し、総合商社各社の業績もビフォーコロナの水準に戻っていくだろう。

ただし総合商社は、今後の事業展開にあたって注意すべき点がある。それは、コロナ禍を経験した人々が生活様式を変える中で、人々のニーズもダイナミックに変化する可能性が高いことだ。

さまざまな商品・サービスを取り扱う商社は、このようなニーズの変化に機敏かつ柔軟に対応する必要がある。それができた商社が、アフターコロナの勝者となるはずだ。

執筆・
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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