自ら何十億、何百億ドルもの富を築き上げたセルフメイド大富豪が経験した、人生で最もかしこい投資対象とは何だろう--。ウォーレン・バフェット氏、マーク・キューバン氏、リチャード・ブロンソン氏など著名投資家・起業家5人の経験談から、少し意外な「お金持ちになるための投資」を探ってみよう。

ウォーレン・バフェット――自分のよく知っている企業株?

バフェット氏は投資1本で資産を850億ドル(約9.3兆円、*2018年5月15日為替レート、1ドル=110.261円で換算、フォーブス2018年5月15日データ)に増やした偉大な投資家だ。11歳で初めて証券を買い、15歳になる頃には6000ドル(約66万円)の貯蓄があったという。

成功する投資の秘訣は「自分がどんなものに投資しているのか把握しておくこと」と断言する同氏にとって、最高の投資対象は「自分のよく知っている企業株」だろう。「損失のリスクは、自分の行動を把握していない時に生じる」ため、「株の購入を検討している企業についての情報を、事前にしっかりと頭に叩きこんでから購入を決めるべき」とアドバイスしている(CNBC2017年5月1日付記事)。 

同氏率いるバークシャー・ハサウェイは、ウェルズ・ファーゴ、コカ・コーラ、クラフト・ハインツ、アメリカン・エクスプレス、バンカメなど、世界的に有名な企業株しか保有していない。バフェット氏が苦手とするIT株は、Appleだけだ。 

「投資する資本があまりない」という人には、低コストなS&P500連動型インデックスファンドを勧めている。

マーク・キューバン――負債返済・S&P500種

コンピューター・コンサルティング会社 MicroSolutions、インターネットラジオ会社 Audionet、エンターテイメント会社2929 Entertainment 社など、多数のビジネスで大成功を収めたキューバン氏はマーケット・ウォッチの取材で「最高の投資対象は負債の返済」と語った。20代でクレジットカード負債に苦しんだ自らの経験から、「負債がない=金利を払わない分で貯蓄したお金はどんな投資のリターンにも勝る」と学んだという(マーケット・ウォッチ2018年4月9日付記事)。

一般的にクレジットカードの金利は割高だ。個人金融情報サイト「NerdWallet」の2017年の調査によると、米世帯は年間平均1000ドル(約11万円)をクレジットカードの金利に支払っているという。クレジットカードに限らず、個人ローンや学資ローンなどでも、完済後は金利を利益に変えることができる。例えば20%の金利を支払っている場合、完済後はその20%が利益となる。

キューバン氏はできるだけ早く負債を返済し、金利に払っていた分のお金を低コストなS&P500連動型インデックスファンドに投資することを勧めている。この点はバフェット氏のアドバイスと共通する。

リチャード・ブロンソン――ビジネスレベルで通用する対人スキル

「ビジネスで成功する秘訣は、人、人、人」と自らのブログ  で公言するブロンソン氏は、高校中退からヴァージン・グループの創業者にのし上がった、真のセルフメイド・ビリオネアだ。ヴァージン・グループは現在世界50カ国・地域以上で、100社を超える事業を展開している。

ヴァージン・モバイル、ヴァージン・ボヤージュ、ヴァージン・パルスなど傘下への投資だけではなく、ビットペイ、トランスファー・ワイズ、ブロックチェーン、ワン・ウェブといったスタートアップへの投資にも積極的  だ。個人的には医師検索エンジン「ドクター・オン・デマンド」や、クラウドファンディング「インディ・ゴーゴー」などに投資している。

ブランソン氏は、自分が学んだ成功するための最も重要なスキルは人間関係だと、CNBCの 取材でも語っている(CNBC 2017年10月19日付記事)。人の話に注意深く耳を傾け、ビジネスレベルで通用する対人スキルが、50億ドルもの富を築き上げる最高の投資となった。

バーバラ・コーコラン――360ドルのコート

米国で「ニューヨーク不動産の女王」の異名 をとる女性ビリオネア実業家コーラン氏。両親と10人の兄弟姉妹と2LDKのアパートで育つという貧しい境遇から、ニューヨーク5番街の高層マンション暮らし へと自分の力で人生を一転させたバイタリティーの持ち主だ。

22回も転職した後、ウェイトレスとして勤務していたレストランで、客のひとりに(後の恋人)不動産に向いていると指摘されたのを機に、不動産業に転身。恋人が出資した1000ドル(11万円) を元手に不動産会社を立ち上げ、2年もたたないうちに50万ドル(約5517万円)を売り上げた。

1973年、最初の賃貸契約を成立させた報酬360ドル(約3.9万円)でコーラン氏が買ったものは、仕立てのよいコート。コーラン氏が「あの時のお金の使い道としては最もかしこい投資だった」と満足している理由は、「(良質なコートのお陰で)自分に力があると感じられた」からだ。

身なりをきれいに整えることが従業員のパフォーマンス向上に役立つことは、イェール大学が2014年に行った調査で も立証されている。高級ブランドの品を身に付けることで自分のステータスが向上したと感じる、また実際に周囲からも羨望の目でみられるという心理効果と共通する。

コーラン氏は新しいコートによる心理効果で自分に自信をつけ、4000万ドル(約44億円)の資産を築き上げた(The Richestデータ)。 

デヴィッド・バッチ――3軒の住宅

ウェルス・マネージャー、金融ライター、起業家など様々な顔を持つミリオネア、バッチ氏 はCNBCの取材で「お金持ちになるための手段は住宅購入」「家を買わないミレニアル世代がこの国でお金持ちになる確率は低い」と発言している。

バッチ氏の最もかしこい投資は、3軒の住宅購入だった。最初に購入したサンフランシスコの家の価格が高騰した後、同氏はニューヨークに移住してもう1軒の家を買った。この家も価格が高騰し、資産が何百万ドルにも膨れ上がったそうだ。

米若者の間ではマイホームへの憧れが薄れつつあるが、住宅所有者は賃貸者よりも平均38倍裕福だという(CNBC2017年1月2日付記事)。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online
 

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