自動車保険を選ぶ際に、「とりあえず一括見積もりをする」は正解だろうか。自動車保険の一括見積もりサービスは性質を理解したうえで上手く使うには便利である。しかし使い方を誤ると最適な自動車保険を見逃す恐れがある。デメリットを避ける方法とは。

自動車保険の一括見積もりサービスとは

自動車保険の一括見積もりサービスでは、インターネットでいくつか項目を入力するだけで複数の保険を比較できる。自動車保険は分かりにくく面倒なので、このような比較サービスがあるのは便利である。

2018年の自動車保険は自賠責保険と合わせると、損害保険業界の市場規模の5割強を占める。自動車保険の正味保険料収入は2018年でざっと4兆円、火災保険をはるかにしのぐ(日本損害保険協会「ファクトブック2019」による)。

損害保険会社の数は非常に多く、ほとんどの企業が自社商品に自動車保険を扱っている。金融庁には国内企業が32社、外国企業が21社の損害保険会社が登録されている(2019年7月時点)。そんな中から1社だけ選ぶのは予備知識なしでは至難の業だ。

インターネットが普及する前は、自動車保険の加入経路は自動車を購入した販売店や保険代理店経由が主流であった。最近ではパソコンからインターネット経由で契約した人が加入者の3割を占める(2019年9月マイボスコム株式会社「自動車保険に関するアンケート調査」による)。

いわゆる通販型と呼ばれるタイプの自動車保険は、公式ホームページから見積もりや申し込みができる。見積もりは複数あったほうが確実だが、似たような項目を何度も入力することがわずらわしい。一括見積もりサービスは1回だけの入力で複数の自動車保険の見積もりが取れるメリットから生まれたのだ。

そういった経緯から、インターネットの一括見積もりの対象は通販型自動車保険が主流だ。しかし最近は代理店型の自動車保険も見積もり対象に含まれてきている。

自動車保険の一括見積もりをする3つのメリット

自動車保険の一括見積もりをすることにより得られるメリットは次のようなものだ。

自動車保険一括見積もりのメリット1……複数の保険会社にまとめて見積もり依頼が出せる

何より手間を省けるのがうれしいといえる。個別に見積もりをしようとすると、車の型式や走行距離、年齢や免許の色など同じことを何度も入力する手間がかかるが、一括だとそれが1回で済む。

自動車保険一括見積もりのメリット2……保険料が安い自動車保険を見つけやすい

とにかく保険料の安さにこだわりたいのであれば、一括見積もりは非常に便利だ。同じ条件で保険料がそれぞれどのくらいになるのか一目瞭然だからだ。事実、自動車保険を選ぶ際に重視する点として、保険料の安さをあげる人は多い(2019年9月マイボスコム株式会社「自動車保険に関するアンケート調査」による)。

自動車保険一括見積もりのメリット3……キャンペーンや特典プレゼントがある

通常の手順で見積もりをしたのではもらえないキャンペーンや特典が付いてくることもある。たとえば「保険の窓口インズウェブ」では、ケンタッキーフライドチキンのオリジナルチキン3ピースセットやハーゲンダッツのミニカップ3個がもらえる。「価格.com」の自動車保険一括見積もりを利用すると、Apple iPad 10.2インチやドライブレコーダーが当たるキャンペーンに応募できる(いずれも2019年12月時点)。

自動車保険の一括見積もりをする3つのデメリット

自動車保険の一括見積もりは、便利でお得である反面、デメリットもある。特に以下の3つはしっかりおさえておきたい。

自動車保険一括見積もりのデリット1……大量の勧誘メールやハガキが来る

引っ越しや車査定などの一括見積もりの場合、しつこい電話勧誘が来ることは有名だ。自動車保険の場合は勧誘の電話が執拗にかかって来ることはないようが、メールやハガキによる通知が大量に送られて来ることがある。

特にメールマガジンには注意したい。多ければ毎日のようにメールマガジンが届くこともあり、保険の満期日が近くなると勢いが増す。配信を止めるには保険会社ごと、もしくは一括見積もりサイトから配信停止の操作をする必要がある。最初から見積もり専用のアドレスを作って備える人もいる。

自動車保険一括見積もりのデリット2……掲載している保険会社しか選択肢がない

一括見積もりサイトは複数の保険会社に見積もりを依頼できるが、すべての保険会社を網羅しているわけではない。あくまでもそのサイトと提携している保険会社にとどまる。仮に自分の条件でもっと安くなる保険会社があったとしても、気付かないまま他の保険を選んでしまう可能性もある。

そうならないためにも、自動車保険の一括見積もりサイトはなるべく掲載数の多いところを選ぶのが良い。メジャーなところでは、保険の窓口が運営する「インズウェブ!」で23社、株式会社ウェブクルーが運営する「保険スクエアbang!」は20社、比較サイト価格コムの一括見積もりサービスでは15社に資料請求ができる(2019年12月現在)。それでも50を超える損害保険会社の一部しか提携していないことが分かるだろう。

掲載数が10社以下でも良質なサイトは存在するが、特に目当てが無い状態であればまずは量を確保したい。

自動車保険一括見積もりのデリット3……保険料の単純比較ができない

一括見積もりでは同じ条件で出したつもりでも、戻ってきた見積もり結果が全く同じ補償内容とは限らない。保険各社は保険料の安さを重視した「シンプルプラン」や、補償の手厚さを売りにした「充実プラン」などさまざまな種類を提供している。同じ年式・型式の車で見積もりをしても保険料に差が出る。保険料の安さだけで選んでしまうと、必要としていた補償内容が欠けている場合もあるが、一括見積もりサービスだとそれに気付きにくい。

基本的な補償を統一しても、細かい部分に隠れた違いが存在するケースもある。保険Aでは自損事故や他者運転特約があらかじめ補償の範囲内だとする。一方、保険Bでは初期状態では範囲外でその分保険料が低めにされているなど、単純に保険料を比較することは難しい。

特に「3分で簡単など」見積もりのための項目や手間が少ない一括見積もりでは、細かい補償内容の設定を省略するため、見積もりの正確性が低くなりがちだ。

自動車保険の一括見積もりを上手く使うための3つの方法

自動車保険の一括見積もりサービスは予備知識の不足した初心者には不向きに思われがちだが、上手く使えばひとつひとつの見積もりを取るよりも効率的だ。最適な自動車保険を探し出すために、どのように活用すればよいだろうか。

保険会社の大まかな特徴をつかむのに使う

一括見積もりサービスの結果だけを判断材料にするのは危険だ。どんな保険会社があるか、それぞれどんな特徴があるかを知るために使うくらいがちょうど良い。一括でたくさんの保険会社から見積もりを取り、その中で3~4社ほど目星をつけてみる。それから保険会社の公式サイトで正確な情報を得ると、より確実に最良の自動車保険に近づけるだろう。

最低限の各補償項目は理解したうえで比較する

一括見積もりサービスは自動車保険の補償内容を理解して比較できる人にとっては便利な機能だ。戻ってきた見積もりを見て保険料だけを単純比較するのではなく、「保険Aより保険Bが安いのは、この補償が入っていないからだ」と見分けられるなら活用しがいがある。

一見複雑なように見えて、自動車保険の補償内容は要点さえおさえれば、難しいものではない。対人対物無制限はもはや常識である。「人身傷害保険」と「搭乗者傷害保険」は別物であること、車両保険は免責金額によって保険料に違いがあることくらいは把握しておきたい。

条件をそろえてメモやエクセルで一覧化

複数の自動車保険を比較する場合は、とにかく同じ条件で見積もりを出すことが重要だ。そして出てきた情報は必ずメモをする。エクセルなどで縦軸を自動車保険の各プラン、横軸を補償内容(逆でも良い)にして、保険料を比較するのもおすすめである。エクセルで比較するなら「同じ条件で」、「一覧にする」ことがポイントだ。

また特色のある特約やキャンペーンに流されず、自動車保険の根幹である事故時の補償内容をしっかり吟味することも忘れないようにしたい。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)
 

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