アメリカの衣料品大手・GAP(ギャップ)が苦戦している。2019年11月に発表された同年8~10月期の純利益が前年同期の半分近くにまで下がったのだ。いまGAPで何が起きているのか。決算の数字からひも解いていく。

純利益が前年同期比47.4%減に

2019年8~10月期(2019年11月2日までの13週間)の業績で注目すべきは以下の項目である。

  • 純売上高:39億9,800万ドル(約4,400億円)前年同期比2.2%減
  • 営業利益:2億2,100万ドル(約240億円)前年同期比39.1%減
  • 純利益:1億4,000万ドル(約150億円)前年同期比47.4%減

    また既存店売上高は、前年同期は横ばいに留まっていたものの、2019年度第3四半期は前年同期比4%減と低調な結果となった。ブランド別に見ると主力事業である「Gap」が同7%減、低価格帯の「Old Navy(オールドネイビー)」は同4%減、高価格帯の「Banana Republic(バナナ・リパブリック)」は同3%減である。

    こうした結果を受け、前CEO(最高経営責任者)から経営を引き継ぐ形となったロバート・フィッシャー氏は「第3四半期の結果は満足できる内容ではなかった」と述べた上で、「各ブランド業績の妨げとなっている運営課題に積極的、かつ重点的に対応していく」としている。

    フィッシャー氏はGAP創業家の一員で、同社の業績回復に向けグループが本腰を上げたという見方も強い。

オールドネイビーの分社化計画は進むのか

今回のGAPの決算は、ある岐路となる決断を同社に迫ることになるだろう。収益の稼ぎ頭であるオールドネイビー分社化計画の是非だ。

オールドネイビーは2018年度決算まで3年間にわたり成長を続けてきたが、2019年度第1四半期で既存店売上高がマイナスに転じた。今回の四半期決算では3四半期連続マイナスを避けられるかが注目されていたが、結果は前述の通り。新CEOのフィッシャー氏はそれでも分社化計画を断行するのか、米メディアの関心も高まっていた。

そんな中フィッシャー氏は今回の決算発表に合わせて「分社化計画は順調に進んでおり、より焦点を明確にし、変革を加速させていく」と述べ、予定通りスピンオフさせる姿勢を鮮明にした。

しかし業績が好調であればスピンオフによる事業のスピードアップや利益の向上が期待できるが、3四半期連続で売上が下がっている現状ではどうだろう。実際に分社化に疑問を呈する著名なアナリストも少なくない。スピンオフにはコストも掛かる。新CEOが最終的にどのような決断を下すのか、今後も注目されるところだろう。

創業家の新CEOの手腕に注目

業績低迷によってGAPの株価も下落気味だ。筆頭株主である創業者一族の資産も大きく目減りしている。こうした事態による一族の危機感が、今回の経営者交代の一因となったことは言うまでもない。

GAPは近年、店舗の大量閉鎖計画を進めていることでも知られる。それは日本事業も例外ではなく、原宿店と渋谷店を閉鎖したことはメディアでも取り上げられた。市場競争が激しさを増していることや、インターネット通販の普及が売上にダメージを与えていることなどが主な要因だろう。

フィッシャー氏が言う「運営課題」は今後明確になるだろうが、度重なるテコ入れでも業績が上向かない現状はなかなか厳しい印象を受ける。創業家のプライドにかけ新CEOがどのような手腕を発揮するのか注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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