【木村ヒデノリのTech Magic #053】 良い音楽は仕事の効率を上げてくれる。その意味ではリモートワークのためにオーディオに投資するのも良いかも知れない。配信サービスの進化でCDを超える音質の利用が手軽になってきた。海外ではTIDAL(タイダル)が有力なサービスだが、国内に限ると2019年にスタートしたAmazon Music HDが今の所のベストソリューションだ。こうしたハイレゾ音源をPCで楽しむためにはいくつかポイントがあるので機材も含めて紹介したい。
そもそもハイレゾの定義は何か
動画の「4K」などと同様に、音源にも解像度に相当する概念がある。音とは空気の振動、つまり波なわけだが、これを数値に置き換えてデジタル機器上で再現できるようにしたものがデジタル音源だ。数値化する際横軸にHz、縦軸にbitを使うので、これらの数値が大きくなるほど原音の波形に近づき、音質も向上する。Hzは1秒あたりの測定回数を示しており、一般的には扱う音の最高周波数の2倍は必要とされている。CDなどに44.1kHzが採用されているのはこうした背景がある。(人間の可聴上限が20kHzのため、その2倍弱が採用されている)
電子情報技術産業協会(JEITA)の定義によると、ハイレゾと呼称する場合「CDスペックを超えるデジタルオーディオ」であることが必要とされている。つまり44.1kHz/16bitのフォーマットのうち、サンプリング周波数、量子化bit数のいずれかが上回っていればハイレゾと呼ぶことができる。
Amazon Music HDでは44.1kHz/16bitの音源を「HD」、それ以上を「ULTRA HD」と区分けしているが、ULTRA HDの中には44.1kHz/24bitも含まれている。日本オーディオ協会の定義では「96kHz/24bit」をハイレゾとしているので、Amazon Music HDは前者の定義に準じた形でハイレゾ配信を行っていると考えればよいだろう。
パソコン側でも設定が必要、機材も対応しているか注意
サービスを契約したら、次は機材の選定とセッティングだ。「リモートワーク中、手軽にハイレゾを楽しめて音も鮮明」という切り口で選ぶとすると、最小構成は入出力がハイレゾに対応したPCスピーカーとなる。例えば、Olasonicの「IA-E55BT」なら、USB接続だけで利用でき電源が不要、最大96kHz/24bitにも対応しているので狭いデスク上でも手軽にハイレゾ環境が実現できる。
筆者はコンパクトな上に低音まで豊かに表現してくれるAudioengine社のA2+を気に入って使っていたので、これを軸にハイレゾ対応させた。A2+はUSB接続には対応しているものの、入出力が最大48kHz/16bitなので、別途ハイレゾ対応のオーディオインターフェースを用意してアナログ入力する必要があった。
最近では良いオーディオインターフェースが安価に買えるので、1台用意しておくとオンラインミーティングでマイクをアップグレードしたくなった時などに便利だ。筆者が以前使っていたのはAudient社のevo4というオーディオインターフェース。96kHz/24bitまで対応しており、かなりコンパクト。これをPCに接続しRCAでA2+に接続することでハイレゾ再生が可能になった。
機材のセッティングができたらPCの設定も忘れずに行いたい。意外と知られていないがPCの出力はデフォルトで44.1kHzになっているので、それを96kHzなど各機器が対応している最大値に変更する必要がある。これでハイレゾ再生の準備は完了だ。