ヨーロッパの大学でサマースクールに参加した際に、驚いたことがありました。教室に入ると30代以上の人が半数程座っており、中には50代以上であろう人も数名参加していました。30代の男性は「言語力のアップのために仕事を休職して参加している」と話し、50代の女性は「まだまだ新しいことを覚えたい!」と一際輝いて見えたのを覚えています。
このように、一度社会に出た人が再度学校に通ったり何かを学び直す機会を得ることが海外では近年増えていますが、日本ではまだ少ないように感じます。

今回は、リカレント教育(生涯学習)とその必要性について、考えてみようと思います。

リカレント教育とは?

そもそもリカレント教育とは、経済協力開発機構(OECD)が1970年代に提唱した社会人の学びなおしに対する考え方のこと。時期や年齢にかかわらずいつでも本人が望めば学ぶことのできる教育システムの推奨を意味し、人生における教育期間を初期で終わらせるのではなく、生涯に通じての学習が求められています。

リカレント教育は、2017年12月に発表された「人づくり革命」の施策のひとつでもあります。詳しくはこちらをチェック!

日本の未来を救うのは“人材への投資”!?政府が掲げる「人づくり革命」とは?

高まる生涯学習のニーズ

終身雇用が前提とされてきた日本では、就職した会社の中で必要なスキルを身につけていくことが当たり前となっていました。私自身、会社員として働いていた頃は企業内教育の充実ぶりを実感していました。

しかし、女性の社会進出に伴い転職や休職が増加し、雇用の流動性が高まっている今、さらに個人のキャリアアップに応じた学習のニーズがあると言えます。企業内教育だけでは、幅広い専門的な知識や技術を身につけるのはむずかしく、本当に自分のやりたいことを学べる環境まで整っている場合は少ないのが現状です。

また、目まぐるしく発展する社会や技術の進歩に対して遅れをとらずに順応していくためにも、働きながら学ぶことは必要不可欠です。

制度導入への課題

以前よりも必要性が高まっていることにより、日本でもリカレント教育に対する理解は広まってきています。放送大学では、社会人が時間や場所にとらわれずにいつでも好きな時間に学べるサテライト講義が充実しており、10代~90代までが学習しています。

また、筑波大学では平日の夜間と土曜の昼間に受講できる、社会人のための大学院が設立されています。しかし、有休教育制度が法制化されているスウェーデンやフランスに比べると、企業に対してのリカレント教育の実現化はまだこれからと言えます。

リカレント教育の普及には、生涯学習のできる教育機関の充実だけではなく、資金の援助や時間の捻出など様々な課題が出てきます。これらの問題を解決するには企業側への制度の導入が必要であり、今後の動きに注目が集まっています。

リカレント(循環)する生き方の推奨

リカレント教育の必要性がわかったところで、日々の業務に忙殺されていては学習したい意欲はあっても新聞を読むのがやっと、という方も多いのではないでしょうか。

欧米でのリカレント教育の理解は、単に生涯学習という漠然とした概念よりも一歩進み、一度就職し仕事をして会社を辞めてもう一度学びなおし、これを繰り返すというまさに循環(リカレント)する生き方というものでもあります。日本の社会のように、一度社会を離れると復帰するのがむずかしいという考え方ではなく、一度会社を離れて、技術や知識、心の豊かさをつけて再び社会に貢献することが広く認められています。

仕事をしながら学習するという時間の捻出がむずかしいのであれば、休職して学習に集中する期間を持つのもひとつの手段です。

求められる雇用の柔軟性

海外でリカレント教育が普及しているひとつの要因として、日本よりも流動性のある労働市場がベースにあります。

日本では、長期雇用が前提とされてきたことで長い間、転職や休職をすることはネガティブに捉えられてきました。過剰なまでに社員を囲い込み簡単に退職をさせないという会社も多く存在します。人材を育てるのはひとつの会社ではなくて社会全体であるということを意識し、個人を尊重した社会が成立すれば、もっと自由に学びの道を選択することができるような気がします。

いつでも学び直すことはできる

終身雇用制度の衰退とともに、ただ生産性だけを追い求める時代は終わりました。このことは、人々にとっての学びの重要さに繋がっています。

私たちひとりひとりが個性と活気を失わずに仕事の質を向上させるには、個人を磨く時間が必要です。「何かしたい!」と思ったとき、遅いなんてことはありません。自分の力をさらに広げる世界が、仕事の外側にあることもあります。リカレント教育(生涯学習)という考え方は私たちにそんな可能性を教えてくれています。

文・川西里奈/提供元・Fledge

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