新橋のサラリーマンやOLを日々ざわつかせている噂の居酒屋があるという情報をキャッチした、おたくま経済新聞編集部。そんなことを知ったら、居ても立っても居られず、さっそく行ってきましたが……想像のはるか斜め上をいく、とんでもない居酒屋さんでした。
その居酒屋の名前は「かがや」。新橋駅から1~2分の所にあります。好奇心を抑えきれず、開店時間の18時30分ちょうどに行ったので、お店にはまだお客さんはおらず、いきなり筆者と寡黙な店主のMARK(マーク)さん2人きりに……。
MARKさんからメニュー表をもらって見てみると、昔懐かしのジャポニカ学習帳。その中には手書きで書かれた個性豊かなメニューが並んでいました。基本的には4つのコース料理になっているのですが、その4つの名前が……。
1つ目は「ねーマスターけっこう今日はおなかはいっぱいなんだ。だから、なんていうのかな・・・軽めの気のきいたつまみ、ちょっとたのむよ。おいしいやつね。」(1080円)
2つ目は「あーやっと仕事終わった。おなかペコペコなんだ。マスターおいしいもんたくさんたべさせてよ、お願い。」(2160円)
3つ目は「マスター今日はいつもよりふんぱつしてさ、なんていうのかな、ごうかいなかんじで、『ダーン』みたいなさ。」(2700円)
4つ目は「マスター今日は、はっきりいってこわれたいんだよね。だからのみ放題でおいしいもん、たくさん食べさせてよ。」(4500円)
えぇ……なにこれ……。とりあえず、せっかくなので一番高い4つ目のメニューを注文すると、MARKさんから「ただ字面を追ってるだけじゃないですか。なんにも気持ちが伝わってこないんですよ。僕ちょっと調理場に戻りますので、もっと気持ちを込めてね。お願いします」と、手厳しいダメ出しが返ってきました。覚悟を決めた筆者、小学生の時、学芸会で褒められた演技を思い出し、もう一度チャレンジ!
筆者「マスター!今日は、はっきりいってこわれたいんだよね~」
MARKさん「いいっすねぇ!」
筆者「だからのみ放題でおいしいもん、たくさん食べさせてよ~!」
MARKさん「はい、任せといて~!」
注文成功!不思議なことに、なんだか、こっちも乗ってきた。そして、飲み物を注文するのですが、最初は特製ドリンクを注文できず、普通の(という言い方もアレだが)ドリンクメニューから選び、「持って来かた」をチョイス。ここではオーソドックス(と思われる)な「日本」を選び、コーラ(540円)を注文しました。
しばらくすると、とつぜん扇子を持ったMARKさんが登場。正座してうやうやしく頭を下げます。
なんだ!なんだ!?と思っていると、MARKさんによる軽やかな日本舞踊が始まります。なるほど、これが日本の持って来かたなんですね。ただ、実際に持って来る時は、普通におぼんに乗せて持って来ます。「踊りたかっただけかーい!」というツッコミを入れたくなりましたが、まだそんなに打ち解けていなかったのでやめておきました。
ちなみに、大概の人は一発で注文を成功させることはできません。筆者のようなダメ出しが入るバージョンと、MARKさんのさじ加減で、「YO!YO!このステージは、キミのためのステージ!お前のラップをキメてくれYO!」と、ラップでやり直しするように言われます。この場合はメニューのセリフをラップバージョンで言わなければいけなくなります。
そんな中、運ばれてきたコーラには、グラスの下に黒い装置が……。グラスを持ち上げると、グラスがブルブル震えます。「なんだこれ!」。こんな小ネタも挟んでくるのが、「かがや」の良いところです。
そして、やっと(?)料理が運ばれてきます。お店はMARKさんだけで切り盛りしているので、仕込みは開店前にやっているのだと思います。ただ、提供される料理は豊富で、浅漬けから始まり、高野豆腐やゴーヤチャンプルー、おから。さらに、手羽先と大根の煮物や切り干し大根、カボチャの煮物や肉じゃが、サバの煮込みなど、どれも家庭的で美味しい逸品が次々に運ばれてきて、本当に「おいしいもん、たくさん食べさせて」くれました。
その間にコーラを飲み終えた筆者は、いよいよ未知の領域である「特製ドリンク」の世界へ……。これを頼みたいがために飲み放題にしたのです!どれからいこうか迷いながらも、まずは「地底人」(時価)を注文。運ばれてきたのは、樽のグラスに入った謎の飲み物。意を決して飲もうとすると、樽のグラスから「グッといってみよう!」という声がして、飲み始めると「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」と煽られる。一人で来ていた筆者……、正直、恥ずかしい……。この辱めから一刻も早く逃れようと、ペースを上げて飲み続けました。味は、梅サワーのような感じで酸っぱかったです。飲み終わると、樽のグラスから「いい飲みっぷりだね~」という声がして、ようやくこの辱めから解放されます。やっぱり居酒屋は(というか「かがや」は)一人で来るもんじゃない。
続いて注文したのは「宇宙人」(1億円)。今度は小便小僧の容器に入れられて運ばれてきました。グラスは検尿カップ……。普通なら少し嫌な気持ちになるかもしれませんが、地底人1杯で、すでに酔っぱらっていた筆者(酒は弱い)は、そんな細かいことは気にしません。そして、小便小僧のあそこから、液体が検尿カップに注がれている間、MARKさんの「あぁ、あぁ、あぁ、あぁぁぁぁぁあああああ!!」という喘ぎ声が……。これには筆者含め店内のお客さんも爆笑。味は、なんだろう……、リアルゴールドみたいな感じでしょうか。見た目は、疲れが溜まっている“お〇っこ”のようですが普通に飲めます。なお、地底人と宇宙人については来店した人のための「お、た、の、し、み」というMARKさんの希望があり本稿には写真は掲載していません。気になる方は直接お店で注文してみてください。
最後は、54円ということで、気楽に飲めそうな「埼玉県人」。しかし、MARKさんからは「不味いけど、いい?」という飲食店にあるまじき言葉が……。どうやら最後にとんでもないものを残してしまったようです。MARKさんが持ってきた「埼玉県人」は、普通のグラスに茶色い液体が入っている飲み物。今まで小道具を多用していたのに、このシンプルさが逆に恐怖を覚えます。恐る恐る飲んでみると……「まっっっっっず!!」。どう表現したらいいんだろうか……。酸っぱい&苦い漢方薬を飲んでいるような感じで喉が焼けるような感覚がします。飲むのに本当に苦労したし、平成最後の後悔でした。(取材は4月24日に行っています)
ちなみに、「持って来かた」は日本の他に「中国」「ブラジル」「フランス」など全6種類あります。例えば「フランス」の時はMARKさんが似顔絵を描いてくれるのですが、これが短時間で描くわりに上手い!筆者も特別に描いてもらいました。
新橋で、もう30年くらいは営業しているという「かがや」。営業当初からこのような感じだったそうですが、一番驚かされたのはMARKさんの多才っぷり。まだまだ進化し続けるであろう、その演出に、期待せずにはいられず、胸を躍らせながらお店を後にしました。
<取材協力>
かがや(東京都港区新橋2-15-12花定ビルB1)
(取材・撮影:佐藤圭亮)
文・佐藤圭亮/提供元・おたくま経済新聞
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