寒さが一段と厳しくなる時期は植物に触れる機会が減ってしまい花や緑が恋しくなります。時期や天候に関係なく1年中、色彩豊かな植物が楽しめるのが温室植物園です。日本国内には大小さまざまな植物園が400余りあるといわれています。(2013年時点)その中でも今回は国内のおすすめ温室植物園とシンガポールの巨大温室を持つ「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」を紹介します。

京都府立植物園、観覧温室

京都府立植物園は1924年に日本で最初に開園した最高峰と呼ばれる公立植物園です。その園内にある観覧温室の外観は、池に浮かんだ金閣寺をイメージし北山連峰のシルエットを取り入れた京都ならではのデザインとなっています。内部は8つの部屋で構成されており熱帯のあらゆる植物に加え、2013年に新設された高山植物の部屋や夜の植物の生態を鑑賞できるナイトフラワーガーデンも人気です。

展示植栽植物は約1万2,000種類におよび国内初展示や初開花の植物も多く日本最大級の温室といわれています。また洋ラン展や食虫植物展などの展示会を頻繁に行いバックヤードに保有している植物も公開。この観覧温室は植物園全体の南側に位置しています。周りには四季の草花が鑑賞できる正門花壇とばらを中心とした造形花壇や洋風庭園など人工的な造形美を楽しむことができるでしょう。

一方、園の北側は自然林である「なからぎの森」や日本各地の山野の植物を自然に近い状態で植栽した「日本の森 植物生態園」など、より自然な景観で構成しています。北と南でまったく雰囲気の違う景観を楽しめることが特徴の一つです。京都府立植物園の魅力は、見ごろの植物やおすすめイベント情報などを園長や副園長が自ら館内ガイドを行ってくれること。

さらに読み物である「週刊植物園」や外部サイトの「植物日記」などを通じて頻繁に発信しています。そのため植物にあまり詳しくない人でも園長や副園長の親しみやすく植物愛あふれる語り口と豊富な知識に引き込まれ植物園に足を運びたくなるでしょう。

広島市植物公園の大温室

広島市植物公園の看板施設である大温室は、1975年に完成し1976年11月にオープンしました。1975年に植えられたココヤシ類は高さ21メートルの温室の天井近くまで届いています。2018年にリニューアルし大温室のシンボルツリーとしてバオバブの木をオーストラリアから運んできました。このバオバブは樹齢400年で日本国内では最大のものです。

樹木の中では世界一の大きさに育つことで有名なバオバブは、樹齢数千年に達することも。この大温室のバオバブもすでにシンボルツリーとして十分な存在感ですが、これから長い年月をかけてさらに大きく成長していくことでしょう。2020年の植物公園オリジナルカレンダーの表紙を飾るのもこのバオバブです。

新設した高さ3メートルに達するスロープデッキからの眺めが良く熱帯の樹木に咲く色とりどりの花や珍しい果実をさまざまな角度から間近で鑑賞できるのが魅力です。30分に一度大温室内にミストが出て霧に包まれる景色はジャングルさながらの雰囲気を楽しむことができます。園内には、大温室の他にも以下のような温室が盛りだくさんです。

・サボテン温室
・展示温室
・熱帯スイレン温室
・ベゴニア温室
・フクシア温室
・栽培温室など

それぞれに徹底した温度管理により1年中美しい植物を観覧できます。

シンガポール「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」

2012年にシンガポールでオープンした巨大温室を持つ植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」は、そのスケールの大きさに世界の植物関係者を驚かせました。園内にある巨大なガラスドームの温室「クラウドフォレスト」は、天井高が最高で54メートルでその中に高さ35メートルの人工の山がすっぽりと入っています。

その山の頂上はロストワールドと呼ばれ、標高2,000メートルの設定で高山のランやシダがびっしり。そしてガラスドーム越しには、シンガポールのシンボル「マリーナ・ベイ・サンズ」を望むことができ、何とも不思議な眺めを体感できます。山の斜面には標高1,000~2,000メートルに生息する熱帯高地植物が再現。

山の周りをぐるりと囲むように空中散策路を設置し雲を模した霧の演出や山から流れ出る滝つぼの裏側を眺められる演出など温室であることを忘れてしまいそうになるほどの見事な空間です。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの敷地の中心には、印象的な形をした巨大な人口の木「スーパーツリー」が12本並んでいます。

そのうち2本のツリーの間には散策路が通っていて地上から22メートル、全長128メートルの散策路を歩いて渡れるのが特徴です。そこからガーデン全体を見下ろすと先ほど紹介したガラスドームのクラウドフォレストが、いかに大きいかがよく分かるでしょう。新しい試みを取り入れ、来場者数を増やす日本の植物園や、海外のスケールの大きな植物園を紹介しました。

文・J PRIME編集部/提供元・J PRIME

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