(本記事は、麻野 進氏の著書『イマドキ部下のトリセツ』=ぱる出版、2019年12月13日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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出世できるかできないかのターニングポイントは45歳

企業規模や業種によって違いはありますが、一般的にサラリーマンとしての出世の決着は40歳前後でつくようです。

将来は役員クラスを目指せる成功組と、課長止まり、部長止まり、管理職まで届かず、というのが、そのころになると何となくわかるものです。

制度として決まっているわけではありませんが、会社の中で「この人はここ止まりだな」とか、「彼は順調に出世街道に乗るだろう」とか、「あの人は潜在能力が高いからいずれ化けるだろう」などの社内コンセンサスが出来上がっていくのがこのあたりの年齢だということです。

日本企業は完全な能力制度ではなく、ある程度の年功序列制度は残っているので、仮に40歳を過ぎて、45歳くらいで課長になれるかもしれません。

しかし、55歳の役職定年まで最大で10年しかありません。

いわば賞味期限切れが迫っているため、それ以上は望めないのが実情です。彼らを抜擢する会社としてのモチベーションは乏しいのです。

つまり、逆算して40歳前後で先行きが見えてくるわけです。

周りは冷静に見えますが、45歳で初めて役職に登用された本人にとっては、さらに上に行くために残された時間が少ないことに気付くのは50歳になってからです。
 
55歳になって降格して一般社員に戻る将来しか見えないわけです。

稼ぐ人あればサボる人あり!?――どんな組織にも当てはまる「2:6:2」の法則

組織には「2:6:2」の法則が働くと言われています。

全体の上位2割が、リーダー的立場だったり(優秀層)、高い成果を上げたりするハイパフォーマー。次の6割が普通。ことさら成果は出せないがきちんと仕事はこなす、という層です(標準層)。

問題なのは下位の2割の貢献度の低い層。能力不足だったり、モチベーションの低下だったり、理由はさまざまですが、なかなか成果を上げられない残念層です。

この比率は環境が変化しても変わらないのだそうです。下位のローパフォーマーがいなければ全体の効率は上がるだろうと、下位の2割を削ると、こんどは中間の6割の層が降りてきて、働かない下位の2割になってしまう。

逆もまたありで、上位のハイパフォーマーがごっそり別のプロジェクトで抜けると、6割の中から優秀者が現れ、上位のハイパフォーマーになっていくそうです。その結果、「2:6:2」の法則は維持されるというのです。

ハイパフォーマーだけでも、ローパフォーマーだけでも組織は成り立たないのです。これの原型は働きアリの法則ですが、上の2割はせっせと働き、中の6割はそこそこ働く、下の2割はまったく働かず、ぐうたらしている。

ただ、アリの場合は、下の働かない2割は、ずっとその状態ではなく、一時的に休んでいる状態なのだそうです。他の8割が疲れたら、休んでいた2割ががんばって働き始めます。疲れたアリは下の2割の位置に降りてきて、次に備えて休むのです。

人間の組織はそうはならないので、人間よりアリのほうが組織としては優れていると言えるかもしれません。

自分の立ち位置を自覚させることが大切!

こういうローパフォーマーへの対策は、まず自分の立ち位置を認識させることから始めます。

営業三課の松本さん。50才前後で、出世ルートから早く外れていて、モチベーションは維持できないでいます。でも、このままでは本来の定年である60歳まで残れない可能性があります。次のリストラがあれば、真っ先に首を切られる、と危機感を抱かせれば、このままではまずいと発奮するかもしれません。

ローパフォーマーを復活させる業務改善プログラムとは

ローパフォーマーに対しては態度の悪さと能力の劣化に気付かせること。そして、業務に対して役割を明確化して作業に当たらせること。そうすることで自分の思い込みや経験で走りがちな姿勢を改めさせるのです。

あなたの経験はもう通じないと知らしめることが大事なのです。それでもだめな場合に業務改善プログラムを導入します。

業績改善プログラム(PIP : Performance Improvement Program)とは、ローパフォーマーに対して、期間を区切って具体的な業績目標を掲げ、その期間内に定期的な評価や指導面談を繰り返して、業績改善を促すことです。

それはまず、対象者にある課題を出します、

一見、難しいけれども、全力で取り組めば何とかクリアできるレベルのもの。最初から実現不可能な高い目標でもなく、簡単に達成できるものでは意味がない、という設定のレベルのものです。そして期限を設定して、課題に取り組ませます。

目的とするところは、「業務改善」であり、「能力の開発向上」にあります。

期限内に課題をクリアできなければ、降格や減給などのペナルティを課すことになります。この点において、課や部のセクションの長が勝手に着手するのではなく、人事、労務の担当者と緊密に連携する必要があります。

何が何でも辞めさせる、解雇、自主退職に追い込むために、最初から実現不可能な高い目標を設定するなど、このプログラムを利用するケースもありますが、目的はあくまで等級、役職、報酬などに見合った貢献を果たしてもらうことにあります。決して辞めさせることが目的ではありませんから、一定の猶予期間を与えることが望ましいのです。

「これができなければクビだから」

と発破をかけるパターンもあるかもしれませんが、大事なのは課題が達成できなくてもその過程で努力の跡が見えるか、先に行こうという意識がうかがえるか、という点です。
 

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麻野 進
組織・人事戦略コンサルタント。1963年大阪府生まれ。株式会社パルトネール代表取締役。あさの社会保険労務士事務所代表。大企業から中小・零細企業など企業規模、業種を問わず、組織・人材マネジメントに関するコンサルティングに従事。人事制度構築の実績は100社を超え、年間1,000人を超える管理職に対し、組織マネジメント、セルフマネジメントの方法論を指導。入社6年でスピード出世を果たし、取締役に就任するも、ほどなく退職に追い込まれた経験などから「出世」「リストラ」「管理職」「中高年」「労働時間マネジメント」「働き方改革」を主なテーマとした執筆・講演活動を行っている。

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