●デザインはほぼ不変だが、クオリティは抜群に上がった

 肝心の上海版にやっと日本で乗ることができた。グレードは一番手頃な429万円の白ボディ。モデル3は塗装色でも価格が変わるが、白は最も安いベーシックなカラーだ。

 外寸は4694×1849×1443mmで基本全く変わらない。デザインも変わらずで窓枠の色がブラックになりホイールデザインが変わったくらい。

 だが分かりにくいところでさま変わりしている。

 ボディ外板パネルのスキマや段差(チリ段差)の精度、塗装の質が確実に上がっているのだ。かつて北米産テスラは塗装の中に埃が混じっていたことなどがあったが上海産モデル3にそれはない。

「中国工場の精度が高いのはもちろん、上海ギガファクトリーはモデル3、今後来るモデルYに生産が特化されています。結果、クオリティは大幅に上がりました」」(テスラ)

テスラ上海版モデル3は、156万円も安くなったうえ、なぜクオリティも上げられたのか
(画像=小沢コージ、『CAR and DRIVER』より引用)

 乗りこんでも同様だ。ドアを閉める時のバスッという音の質感が上がったし、樹脂パネルの精度、質感も高い。標準で人工皮革を張ったシートの座り心地も良い。いまでも日本には中国産車に対する偏見があるが、このモデルから潮目が少し変わってくるかもしれない。

 走りに関しても剛性が上がったという声があるが、小沢としては微妙に感じた。

 元々モデル3は剛性感が高く、ある種ポルシェ的な高質感すらある。足回りは固めで多少コツコツ感も入るが快適かつ上質でそこは変わらない。これが400万円台で買えることを考えると驚異的だ。

テスラ上海版モデル3は、156万円も安くなったうえ、なぜクオリティも上げられたのか
(画像=小沢コージ、『CAR and DRIVER』より引用)
テスラ上海版モデル3は、156万円も安くなったうえ、なぜクオリティも上げられたのか
(画像=小沢コージ、『CAR and DRIVER』より引用)

 加速感も同様。シングルモーターのスタンダードは最大出力306psで最大トルク420Nmと十分で、上級版テスラのモデルSほど爆裂加速感はないが、上までスムーズに静かに伸びる。

 回生ブレーキの質感も高く、新型モデル3はアクセルオフ時の減速力が大きいのでかなりのシーンでワンペダル運転が可能。これも慣れたら便利だ。

 さらにモデル3はフロントにトリプルカメラ、サイドに4カメラ、リアに1カメラを使うオートパイロットを標準装備し、かなり積極的な運転支援が可能。画像的には信号、人、パイロンまで認識する。

 しかも、これはそのうち広告機構に引っかかる可能性もあるが、87万円強のオプションで「完全自動運転 対応機能」が付けられる。

 現状スマホを使ってのオートパーキングが可能な上、今後徐々にアップデートしていく。一体どこまで使えるかわからないが、これは相当面白い。テスラならではのスマホ的デジタル体験ともいえる。

テスラ上海版モデル3は、156万円も安くなったうえ、なぜクオリティも上げられたのか
(画像=小沢コージ、『CAR and DRIVER』より引用)

 さらに429万円のモデル3は、4月から始まったEV補助金も一部で受けられ、国と都の分を合わせると最大100万円を越える可能性がある。これが300万円前半で買えるというのは衝撃的だ。

 見た目は変わらないが、質感と航続距離をアップさせ、同時に価格を極端に引き下げてきたモデル3。マジメな話、日産リーフよりお買い得な部分があり、地味だが恐ろしい改良といわざるを得ない。

テスラ上海版モデル3は、156万円も安くなったうえ、なぜクオリティも上げられたのか
(画像=小沢コージ、『CAR and DRIVER』より引用)
テスラ上海版モデル3は、156万円も安くなったうえ、なぜクオリティも上げられたのか
(画像=小沢コージ、『CAR and DRIVER』より引用)


文・小沢コージ/提供元・CAR and DRIVER

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