レベル2とレベル3

2020年5月にレベル3の自動運転に法的な基準が明確になったが、実はレベル2の高度運転支援システムに関しても国際基準がそれより少し前に決定している。

レベル2は、運転支援システムがドライバーの監視のもとで、走行状況に応じてハンドル操作や加減速操作を行なう一方で、システムがドライバーを支援できない場合はドライバーがすべての操縦を行なうという定義で、全てはドライバーの交通環境の認識、判断のもとで作動する文字通りの運転支援システムだ。

自動運転の時代幕開け クルマの歴史が変わった
(画像=レジェンドでのレベル3の自動運転、『AUTO PROVE』より引用)

制限付き自動運転のレベル3に比べ、レベル2のシステムは運転支援システム、または高度運転支援システムとされ、ある意味でレベル2と呼ばれるカテゴリーの範囲は広がっている。当初はアクティブクルーズコントロールは加減速のみを行なっていたが、現在では操舵支援も行なわれ、渋滞時のハンズオフの追従走行支援も行なわれるようになっている。

一方で、レベル3は一定の条件になるとドライバーは交通環境の注視義務から解放(交通環境の注視が不要となり、動画を見たり、ディスプレイ上でのメール送受信なども可能になる)され、文字通りの自動運転となり、この状況では運転の責任は自動運転システムが担うことになる。

しかし自動運転が可能な条件がなくなった状態ではシステムが切り替わり、レベル2の運転支援システムの状態に変更されるので、これがドライバーに正しく伝わるかどうかが大きな課題となる。

レベル3の自動運転が行なわれるのは、具体的には、高速道路本線上での渋滞時での自動運転が想定されており、そのため「トラフィック・ジャム・パイロット」という別称が採用されている。国際基準によれば60km/h以下の高速道路で作動可能になるのだ。(ただし、実際の作動は自動車メーカーごとの判断で決定され、レジェンドは作動開始が30km/h、作動終了が50km/hとしている)

また高速道路であっても中央分離帯のない区間、急カーブ区間、サービスエリア、パーキングエリア、料金所周辺では自動運転は作動しない。

さらに天候条件では、強い雨や降雪による悪天候、視界が著しく悪い濃霧、日差しの強い逆光の時などはシステムが停止される。

レベル3のシステムは、交通条件としては、自車が走行中の車線が渋滞、あるいは渋滞に近い混雑状況であるとともに、前走車や後続車が自車線中心付近を走行していることが求められる。逆に言えば、高速道路上でも天候条件の変化、トンネル、急カーブ区間などでは自動運転レベル3からレベル2に引き戻されることになる。

このため、レベル3の自動運転は限定的であり、自動運転システムの作動状態、レベル3からレベル2への切り替わりなどをドライバーに的確に伝えることができるインターフェース(伝達手段)が極めて重要であることがわかる。また、レベル3からレベル2に切り替わった状態でも走行状態に大きな変化が生じない点も重要だ。

そのため、自動車メーカーごとにレベル3の自動運転に対する取り組みや考え方は異なり、ボルボはいち早くレベル3は採用せず、自動運転技術としてはより高度なレベル4を目指すとしており、このほど発売されたレクサスLS、ミライの「アドバンスドドライブ」ではレベル3に近いセンサー類の装備としながらも、レベル2に留めている。

自動運転の時代幕開け クルマの歴史が変わった
(画像=レベル2の高度運転支援システムも大幅に進化、『AUTO PROVE』より引用)

レベル2の中でも最高水準の高度運転支援システムを追求する日産のプロパイロット2.0、スバルのアイサイトX、そしてトヨタのアドバンスドドライブやヨーロッパの多くのメーカーと、それに対し、レベル3を実現するホンダ、メルセデス・ベンツというのが現在の色分けとなっている。

自動運転の時代幕開け クルマの歴史が変わった
(画像=登場が近いレベル3に自動運転システムを搭載したメルセデス・ベンツ Sクラス、『AUTO PROVE』より引用)
自動運転の時代幕開け クルマの歴史が変わった
(画像=メルセデス・ベンツ Sクラスの自動運転デモ、『AUTO PROVE』より引用)

とはいえ、日産のプロパイロット2.0は高精度3DマップとGPS測位システムを搭載しており、LiDARなどの追加でレベル3は可能で、スバルのアイサイトXは現在のADAS3次元マップを高精度3Dマップにグレードアップさせ、LiDARを追加し、制御プログラムをアップグレードすることでレベル3は実現できる。ただ、それ以外にステアリング、ブレーキなどの電源喪失時のバックアップシステムを搭載しなければならないので、コストアップに直結することも大きなハードルだ。

トヨタの「アドバンスドドライブ」は、LiDRを1個装備しバックアップ・システムも搭載しているといわれているので、LiDARをより多数搭載し、GPS測位システムを搭載することでレベル3にアップグレードすることは可能だ。

一方で、レベル3の基準も将来的にはソフト、ハードの進化により変化することが想定され、交通事故を減らすという目的のためにレベル2、レベル3のそれぞれの技術開発はまだまだ継続されていくことは間違いないだろう。

社会の受容性が問われる

これに高度運転支援システムとレベル3の自動運転のもうひとつの課題は、現実の交通環境の中での位置づけである。

レベル2の高度運転支援システムであれ、レベル3の自動運転であれ、制限速度を厳密に遵守し、レーンチェンジでの振る舞いも安全を十分に確認した状況で行なわれるが、現実の交通環境では道路上での交通の流れる速度やレーンチェンジなどは、人間対人間のアイコンタクトや、2、3台前のクルマの先読み、さらにとっさの判断、またドライバー同士の暗黙の意思疎通が行なわれており、これら人間ならではの能力の中で、レベル2、レベル3のシステムは試されることになる。

例えば高速道路の分岐や合流部で、車両が渋滞に近い形で詰まっている時に、システムは割って入る時、どのような振る舞いになるのか、それを周囲のドライバーはどう見るのだろうか。

現在はまだ高度なレベル2の運転支援システム、レベル3の車両は極めて少数だが、今後これらの車両が増加するにつれて、改めてこの問題がクローズアップされることになるだろう。

提供・AUTO PROVE

【関連記事】
BMW M550i xDrive (V型8気筒ツインターボ+8速AT:AWD)試乗記
マツダ3e-スカイアクティブ X試乗記 トップグレードエンジンの進化
トヨタ ヤリスクロス試乗記 売れるクルマ(1.5Lハイブリッド4WD)
ホンダ N-ONE試乗記 走りが楽しいRS(FF 6速MT、CVT、ターボ&NA)
スズキ ソリオバンディット試乗記(1.2LMHEV CVT FF)