2019年11月26日、『ミシュランガイド東京2020』が発表され、発表記者会見と出版記念パーティが行われた。今年も多くの飲食店が掲載されたが、三つ星の常連店が掲載対象外になるなど、波乱の展開も見られた。今回の掲載店とその傾向を詳しく見てみよう。
今年は464軒が掲載。新規掲載は55軒!
2020年、ミシュランガイドは120周年を迎える記念すべき年だ。『ミシュランガイド東京』は2008年にアジア初として発表され、13回目を迎える。今年は464軒の飲食店を掲載。昨年の484軒に比べると減少したものの、新規掲載は55軒と、入れ替わりの激しさも注目すべきところだろう。この掲載数について、ミシュランガイド事業部・事業開発担当部長の伊藤孝康氏は「流行の変化が速く競争の激しい東京の特性を反映しております」と語る。
それでは、今年の掲載店舗を見ていこう。
三つ星常連店が掲載対象外に!?
三つ星掲載店は11軒。発表当初からの常連である『カンテサンス』『ジョエル・ロブション』『かんだ』などが並ぶ中、今年二つ星から評価を上げた『かどわき』が初の三つ星掲載店となった。
13年連続で掲載となった『カンテサンス』岸田周三シェフは、今話題のドラマ「グランメゾン東京」で料理監修をするなど、まさに注目のシェフだ。今回の三つ星掲載については、以下のようにコメントしていた。
「今年も評価していただき、ほっとしています。13年、方針は全く変わってないですが、料理についてはどんどん進化させていっているつもりです。そういうところが、お客様に評価されていると嬉しいですね。もし機会があれば、ぜひお越しください」
三つ星は常連店が並ぶものの、驚くべき展開も見られた。これまで同じく三つ星掲載店の常連であった『すきやばし次郎 本店』と『鮨 さいとう』が掲載対象外となったのだ。この2軒は一般予約が不可となったため、ミシュランの掲載基準に満たなくなったとのこと。特に『すきやばし次郎 本店』は『ミシュランガイド東京』発表時から常に掲載されてきた名店であったため、この結果に驚く報道陣も多かった。
■三つ星を獲得した11軒
『麻布 幸村』(日本料理)
『神楽坂 石かわ』(日本料理)
『かどわき』(日本料理)
『かんだ』(日本料理)
『カンテサンス』(フランス料理)
『虎白』(日本料理)
『ジョエル・ロブション』(フランス料理)
『鮨 よしたけ』(寿司)
『まき村』(日本料理)
『龍吟』(日本料理)
『ロオジエ』(フランス料理)
二つ星は唯一のイタリアン『プリズマ』が話題に
二つ星掲載店は48軒。新規掲載店として、先述のドラマ「グランメゾン東京」でライバル店の料理を監修している『INUA』や、一つ星から評価を上げた『銀座 しのはら』などが発表された。なかでも注目を集めたのは、2018年から一つ星として掲載され、2020年に二つ星へと評価を上げたイタリアンの名店『プリズマ』だ。
伊東氏は、「日本で唯一の二つ星イタリアンで、東京でイタリア料理が二つ星の評価を得たのは2011年以来の快挙です」とほめたたえた。
世界中から注目される東京グルメシーン
今年も多くの話題を集めた『ミシュランガイド東京』。昨年に引き続き、星つきレストランの掲載数は世界一を誇っている。伊東氏は、東京のグルメシーンについて以下のように語る。
「東京は飲食店の母数が圧倒的に多くジャンルも幅広い。人口も多く、世界でも有数の経済都市です。近年は外国人観光客も増え、人も飲食店もますます多くなってきており、腕のいいシェフや素晴らしい食材が集まってきやすい場所といえます」
さらに日本ミシュランタイヤ株式会社・代表取締役社長であるポール・ペリニオ氏は「2020年は東京にとっても記念すべき年になるでしょう」とコメント。続けて以下のように話した。
「現在、日本に来る外国人観光客は3000万人以上に増えています。来年は世界中からより多くの観光客が訪れることになるでしょう。その方々の多くは東京での食事を楽しみにしていることと思います。我々としても積極的に東京の飲食店を案内していきたいと考えています」
『ミシュランガイド東京』はWebで英語版を公開中。外国人観光客からもたくさんの需要があるため、無料で見られるようにしているのだという。さらに、今年はライブ放送を始めるなど新たな試みにも積極的。東京のグルメシーンを世界に広めていこうという動きがみられる。
あなたもミシュランガイドの調査員になれる!?
余談にはなるが、発表記者会見では「ミシュランガイドの調査員にはどうやったらなれるのか?」という面白い質問も飛び出した。これに関して伊東氏は以下のようにコメント。
「“調査員にどうやったらなれるのか”という質問はよくされます。これはまず、ミシュラングループのいずれかの会社に、自ら“調査員になりたい”という希望の手紙を書いてもらうところから始まります。特に募集はしていませんが、門を開いていないわけではございません。調査員に必要なスキルは、料理の味を平等に評価する力やミシュランガイドに掲載する文章の表現力などが挙げられますが、最も必要なことは“食に関する情熱”かもしれません」
ベールに包まれたミシュランガイドの調査員だが、意外にも「手紙」という古典的なツールで採用を行っていることは少々驚きだ。
今年も盛り上がりを見せた『ミシュランガイド東京』。来年には東京オリンピックの開催も控えており、東京のグルメシーンはますます世界中から注目を集めるはずだ。今回掲載された464軒がシーンを牽引し、世界一のグルメ都市をさらに盛り上げてくれることを期待したい。
文・竹野愛理/提供元・Foodist Media
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