韓国の5大企業の1社、サムスン電子。就職すれば韓国では羨望の眼差しを向けられるというサムスン電子は今、業績低迷に苦しんでいる。2019年7~9月期の連結決算(速報値)では、営業利益が前年同期比で56%減となった。同社の屋台骨である半導体事業の不振や、スマートフォンの売上が伸び悩んだことが影響した。

2019年7~9月期、営業利益は7,200億円規模に減少

2019年7~9月期の連結決算では、売上高が前年同期の65兆4,600億ウォン(約6兆700億円)から62兆ウォン(約5兆7,500億円)へ5.3%減少した。営業利益は前年同期の17兆5,700億ウォン(約1兆6,300億円)から7兆7,800億ウォン(約7,200億円)へ、実に56%も減少した。

セグメント別の売上高では、医療・健康関連を除く消費者向け家電製品は前年同期比7%増の10兆9,300億ウォン(約1兆100億円)、IT関連やスマホを含む携帯端末部門も17%増の29兆2,500億ウォン(約2兆7,100億円)と伸びている。

しかし、前年同期には最も売上規模が大きかった半導体事業を含むデバイスソリューション部門が23%減の26兆6,400億ウォン(約2兆4,700億円)に留まり、半導体事業単体では前年同期比29%減と減収は深刻だ。

この結果、純利益は前年同期の13兆1,500億ウォン(1兆2,200億円)が6兆2,900億ウォン(約5,800億円)と、半分以下になっている。

半導体事業の不振が業績に暗い影を落とす

最新決算の数字を見ると、半導体事業の不振がサムスン電子の業績に暗い影を落としていることがわかる。

半導体事業不振の主な理由は、半導体メモリーのDRAM価格の下落が続いていることだ。特にスマートフォン向けアプリプロセッサの価格が下がりつつあることは、サムスン電子にとって今後の大きな懸念材料だろう。このような市況が、同社の半導体部門の売上に大きな影響を与えているのだ。

スマートフォン部門は伸びているが、先行きは決して明るくはない。アップルの「iPhone」が新興国マーケットで存在感を増す一方で、サムスン電子の主力スマホ「ギャラクシー」はしかるべき結果を残せていない。

稼ぎ頭だった中国市場でもファーウェイやOPPOなどが台頭し、サムスン電子の競争力は低下している。スマートフォン部門の伸び悩み、半導体部門とともに売上高が減少することになれば、サムスンの業績悪化はさらに深刻になるだろう。

半導体事業の復調はあるか

近年サムスン電子は、売上と純利益を伸ばし続けている。2013年に228兆7,000億ウォン(約21兆2,300億円)だった売上高は2018年に243兆8,000億ウォン(約22兆6,300億円)まで伸び、純利益も30兆5,000億ウォン(約2兆8,300億円)から44兆3,000億ウォン(約4兆1,100億円)まで伸びている。

業績拡大を維持するためには、半導体事業とスマートフォン事業のテコ入れが急務だ。サムスン電子にとっては、追い風となり得る材料もある。5Gスマホの販売が本格化することで半導体需要の伸びが見込めるほか、ストレージ容量が大きいメモリー製品の需要をうまく取り込めば、半導体事業の復調が期待できる。

サムスン電子は、半導体の搭載先として将来拡大が見込まれる自動運転市場にも着目している。この領域で成功すれば、売上を大きく伸ばすことができるだろう。

日本政府による輸出規制がネック

日本政府による輸出規制策は、サムスンの決算にはまだ大きな影響を与えていないが、今後は半導体生産に必要な高純度品の供給が滞る可能性もある。巨大企業サムスン電子には、予断を許さない状況が続く。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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