三菱自動車工業の2019年度の上期決算では、純利益が前年同期の518億5,700万円から25億9,800万円まで、実に95.0%も減少した。先進国での需要の低迷などが響いたとはいえ、この減益幅は株主を驚かせた。三菱自動車に業績改善の策はあるのだろうか。最新決算を読み解く。

経常利益は98.2%減の12億4,600万円に

2019年度の上期(4~9月)の連結業績では、売上高が前年同期比3.5%減の1兆1,279億5,500万円、営業利益は同82.0%減の102億3,400万円、経常利益は同98.2%減の12億4,600万円だった。純利益の大幅下落には、海外子会社における税金の支払いなども影響した。

上期の業績悪化を受けて2019年度通期の業績予想を下方修正し、売上高は当初予想の5.0%減の2兆4,500億円、営業利益は66.7%減の300億円、経常利益は80.0%減の200億円とし、純利益は92.3%減の50億円とした。

2019年度上期の販売台数は、日本では前年同期比で8%増だったが、世界の合計では微減となった。日本以上の主力市場となっているASEAN(東南アジア諸国連合)地域では1%減の15万1,000台、7万8,000台(6%減)の北米、4万5,000台(8%減)のオーストラリア・ニュージーランドなどの業績が影響した。

大きな影響を与えたのが為替変動

営業利益の変動要因を読み解きながら、業績悪化の理由を詳しく見ていこう。

2019年度上期の営業利益は、2018年度の569億円から467億円減少し102億円。この大幅減益に最も影響を与えたのが、為替変動だ。主要通貨に対する円高基調や、主な支払通貨であるタイバーツの高騰などがマイナス要因となった。

研究開発費や間接員労務費なども例年に比べてかさみ、200億円分のマイナス要因となった。販売台数の減少などでも109億円のマイナスを計上。唯一収支改善に貢献したのは、工場コストの調整と抑制でプラス71億円だった。

純利益の振れ幅が大きい三菱自動車

三菱自動車工業の売上高は、近年は緩やかな上昇傾向にある。2011年には1兆8,000億円台だったが、2018年は2兆2000億円台に届くところまで伸びた。

ただし、純利益の振れ幅は大きい。2011年から2016年にかけては200億円から1,200億円のレンジで推移していたが、2017年には燃費不正問題の影響を受けて2,000億円近い損失を計上し、その後黒字に転換している。しかし、今期は赤字目前まで減少する見込みだ。

主力市場の強化やコスト改革で業績改善へ

この状況下で、三菱自動車はどのような業績改善策を打つのか。その一つが、主力市場のASEAN地域での販売強化だ。タイやベトナムなどでの業績は好調であり、今後は商品力の強化や販売網の拡充によって、まずは年間販売目標の達成を目指す。

また、全社をあげてコスト削減にも取り組む予定だ。決算会見で加藤隆雄CEO(最高経営責任者)はコスト削減に触れ、今より一歩踏み込んだコスト構造改革を断行することに意欲を見せた。

主力市場や日本市場での販売を伸ばし、コスト削減も急ピッチで進めることで、為替変動による損失を吸収できるほどの利益を上げられるかが今後の焦点になるだろう。

世界的に自動運転や電動化が進む中、今後研究開発費は増えることが予想される。加藤CEOが語る改革がどれくらいのスピードで実行されるかに注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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