「真っ赤っかの大赤字で御座いまして…」ソフトバンクグループの孫正義会長は、2019年度第2四半期の決算説明会でこう切り出し、四半期ベースでの赤字額が7,000億円以上になったことを発表した。飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長していたソフトバンクグループに、今何が起きているのだろうか。

第2四半期単体で7,000億円以上の赤字

決算説明会では孫会長の口から2019年度の上期(2019年4~9月)の連結業績が発表され、売上高は前年同期比でほぼ横ばいの4兆6,517億2,400万円となったものの、営業利益は前年同期の1兆4,207億1,600万円から赤字に転落し、155億5,200万円のマイナスとなったことが明らかにされた。純利益も49.8%減の4,215億5,200万円に大幅下落した。

ソフトバンクグループは第1四半期で1兆1,217億円の純利益を計上しており、これが4,215億円まで圧縮された。ということは、第2四半期単体で7,000億円以上の赤字を計上したことになる。ソフトバンクグループが四半期ベースで赤字に転落するのは、実に14年ぶりのことだ。

孫会長は「四半期ベースでこれだけの赤字を出したのは創業以来のこと」「まさに大嵐というような状況」と述べた後、反省の弁を交えながら、ここまでの大きな赤字を計上した理由を語った。

WeWork問題やUberの株価不調が要因

簡単に言えば、WeWork(ウィワーク)問題やUber(ウーバー)の株価不調がソフトバンクグループの業績に響いた形だ。

2兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)が投資するライドシェア世界最大手のUberは今年5月に上場したが、その後株価は低迷している。また、起業家などにコワーキングスペースを提供するシェアオフィス大手の米新興企業ウィワークは、企業統治において重大な問題が生じた。

これらによって、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは巨額の評価損失を計上することになり、業績が大きく悪化した。ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業単体の営業利益は、2018年度上期は6,324億円だったが、2019年度上期は5,726億円のマイナスに転落した。

市場では、WeWorkの倒産、さらにソフトバンクグループの倒産もあり得るのではないか、という声が上がったほどだ。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは現在、AI(人工知能)関連ビジネスに軸足を置き、実に88社に投資を行っている。その中にはユニコーン(企業価値が10億ドル以上の非上場企業)も名を連ねるが、ユニコーンの中で評価が大きく下落する企業が複数出てくると、ソフトバンクグループの業績はさらに落ち込む可能性もある。

怖さも夢もある投資事業、孫会長の今後の舵取りは

売上高と営業利益、そして純利益を順調に伸ばし続けてきたソフトバンクグループ。2008年度実績と2018年度実績を比較すると、売上高は2兆6,730億円から9兆6,022億円と約3.6倍に、営業利益は3,591億円から2兆3,539億円と約6.5倍になった。純利益に関しては、431億円から1兆4,112億円と約33.5倍になっている。孫会長の投資戦略や経営手腕がソフトバンクグループを大きく成長させてきたことは、まぎれもない事実だ。

今回の決算説明で改めて感じたのが、投資の怖さだ。追い風が吹いている企業や有望市場とされているマーケットに注力しているベンチャー企業であっても、大幅な評価損や業績悪化がいつ起こるかはわからない。

とはいえ、投資事業には夢もある。特にAI領域は、市場規模が大幅に拡大していくことが確実視されている。ソフトバンクグループはビジョンファンドの2号・3号も立ち上げ、さらにこの領域への投資を拡大していくことになる。

反省しつつも萎縮はしない、という意気込みを決算説明会で語った孫会長。今後の舵取りから目が離せない状況が続きそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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