●本当にすごい点は新旧価値観の両立?
しかし、小沢が乗ってあらためて感心したのは、新世代のエンタテイメント導入と同時に、従来的なSクラスの価値観、走りの良さなどをしっかり進化させていること。
常連客はもちろん、新しいITコンシャスなリッチマンも取り込める味わいになっているのだ。
今回、試乗したのは標準サイズのS400d4MATICマティックで、全長×全幅×全高は5180×1920×1505mm。ホイールベースは3105mm、ついに標準ボディでも3.1m台を突破した。
ところが見た目は以前より美しく、エレガントになっている印象で、ヘッドライトはこれ見よがしに尖ってないし、グリルも控え目。サイドはキャットラインと呼ぶシンプルなプレスラインのみで、とくにリアの滑らかなラインはクーペライク。
同ブランドのCLSにも負けないエレガントさだ。
同時に、ここ最近復活させた3L直6エンジンがいい。ガソリンとディーゼルがあり、今回は後者に乗ったが、やはりイマドキの直4とは上質さが違う。
最高出力330ps、最大トルク700Nmと極太トルクを持つのはもちろん、低回転からキモチ良く高まる鼓動がうれしい。
最近は高級車でも4気筒が当たり前になりつつあるが、やはり6気筒は欲しい。
また9速ATがゆえ、ゆったり走れば、ほとんどのシーンでエンジンは3000回転を超えない。
そして乗り心地が圧倒的にいい。表面に柔らかいスポンジ層が付いた大型シートにすわり、アクセルを踏み込むと「ああ、帰ってきた」とすら感じるSクラス独特の滑らかさ、安心感。
これだけでもファンは欲しくなってしまうのだと思うが、今回は新たに小回り性能も盛り込まれ、後輪操舵機構のおかげで最小回転半径は5.4m。
これはEクラス同等なのでかなりの安心ポイントだ。
先進安全も当然アップデートされており、フロントマルチモードレーダー、フロントロングレンジレーダー、フロントステレオカメラ、後方マルチモードレーダー、360度カメラ、12個の超音波センサーを備え、将来的にはレベル3自動運転も視野に入れているという。
実はこの進化にはテスラを始め、ハイテクEV勢への危機感もひそかに隠し持っている。いまや高級車は電動化、デジタル化せざるを得ないのだ。
守りつつも攻める。それが今回のSクラスの本当のすごさなのである。
Writer:小沢コージ Photo:小沢コージ
提供元・CAR and DRIVER
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