「上位蜃気楼」と「下位蜃気楼」はどうちがう?
蜃気楼は、大気中の光の屈折によって、地上や海上のモノが浮いたり、逆さまに反転して見える現象です。
光は普通、まっすぐに直進しますが、温度差により密度のちがう大気が接していると、光は冷たい(=密度の高い)大気の方へ曲がります。
大気の温度は上昇するにつれて下がりますが、地上付近の大気層の温度が高く、その上の層が低いときに生じるのが「下位蜃気楼」です。
これは最もよく見られる蜃気楼として知られます。
海を例にとると、海面付近の暖気の上に冷気が乗っかっている場合、その境目で光が冷気側に屈折します。
すると、海面上にあるモノの像が、反転した状態で実際のモノより下側に見えるのです。
浮島現象などがそれで、島の上の空ごと反転して下側に映るので、島が浮いているように見えます。
夏場のアスファルトや砂漠に見られる「逃げ水現象」も下位蜃気楼の一つです。
熱い地面とその上の空気の境で光が曲がり、上の景色が反転して地面に映り込みます。
そのため、実際にはない水たまりがあるように見え、近づいても近づいても水がないことから「逃げ水」と呼ばれます。
これに対し、寒気の上に暖気が乗っかるときに起こるのが「上位蜃気楼」です。
こちらはかなりレアな蜃気楼で、北極などで見られますが、その他ではめったに現れません。
仕組みは先ほどと反対で、上暖下寒の大気層のために、観察者とモノの間を結ぶ光が上向きに凸の弧を描きます。
その結果、モノが実際の位置より上方に見えてしまうのです。
上位蜃気楼がつくる像はさまざまで、モノがそのまま上に引き伸ばした状態で見えたり、反転した像が上方に現れたり、モノが空中に浮き上がって見えたりします。
空飛ぶ船は、空中に浮き上がって見える例です。
今回のケースは、寒い時期に太陽が海面上方の空気を暖めたことで発生したと考えられています。
それでもここまではっきりと浮いて見えるのは珍しいとのことです。
提供元・ナゾロジー
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